神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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ウソの形

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「カチュア、見て! あの聖獣! あんなに大きい!」

「あらホント。サイ、かしら?」

「キュ! キュッキュキュー!」

「よし、見に行こう!」

 転移魔法陣の前で大勢に囲まれた聖獣を見つけたライゼル達は、新しい聖獣を見ようと走り寄る。
 その巨体に見とれながら近くへ寄ると、

「うっ…」
「…あ!」

 サイを従えているのはダァンだ。
 お互いに相手に気付き、気まずく目をそらす。

「キュ?」

「ライゼル?」

「ね、もっと近くで見ようよ」

「もう見たからいい。訓練してくる。2人はゆっくり見てくれば? 行くぞ、チビ助」

「キュ、キュウ~?」

 早足にその場を離れるライゼル。

「まったくもう!」

 カチュアが腰に手を当てて大袈裟なため息をつく。
 集まった学生達は列を作って順番にダァンのサイを見物していた。
 ニーナとカチュアもその列に並ぶ。
 順番が来た。
 サイは通常よりも一回り大きく、背中の皮膚の一部が角質化してよろいのようになっている。

「ホント大きいわね。それにとても大人しいわ」

 サイをでながらカチュアが感心する。

「カチュアのクロコダイルは暴れたって?」

「ちょっと興奮しただけよ。あの子、人と遊ぶのが好きなの」

 ちょっとどころではなく、実際は大暴れだった。
 クロコダイルにしてみたら、うれしくて「ちょっと」はしゃいだ程度だったのだが。

「ライゼルも来れば良かったのにね」

「俺が立派な聖獣と契約したからくやしいんだろ」

「ダァン!」

「もう…仲直りしなよ。あんなに仲が良かったのに」

「あんなヤツだとは思わなかった。あんなウソ言ってさ」

 不機嫌な顔で吐き捨てる。

「ゴールドドラゴンのこと? ワザとじゃないって言ってたじゃない。ライゼルは聖獣を攻撃したりしないよ」

「あたしも、思いっきり手を広げたら弟にぶつかっちゃって、『殴られた~』って泣かれたことあるわ~。だから他人事じゃないんだよねぇ」

「………お前ら、あの話は聞いてねーの?」

「「あの話って?」」

 ニーナとカチュアは怪訝けげんそうな顔をする。思い当たる節がないらしい。

(ジークに殺されかけたって……俺にしか話してないのか?)

 あんなバカバカしい話。
 同情狙いの、その場しのぎのいい加減なウソさ。
 そう、きっとそうに違いない。けど…

「ニーナは自分の伝説種レジェンドが襲われるかも知れないとは思わないの?」

「ライゼルに?」

「だってアイツ、伝説種レジェンド持ちを逆恨みしてるかも知れないだろ?」

 ジークがそれとなく注意喚起したため、一部ではもうそれが常識のように語られている。

「全然、思わないわ」

 笑顔で答えるニーナ。

「…ライゼルの事、信じてるんだな」

「ううん。私が信じてるのは、私のペガサスなの」

「え?」

「もしも危険な人ならペガサスには分かるでしょ? 聖獣は人の心の動きを感じるらしいから。でもね、ペガサスはライゼルの事、少しも怖がらないの。だから私も怖くない」

「で、あたしはと言うと、ニーナを信じてるってわけ!」

 ニヒヒ…と笑いながら、カチュアがニーナの肩を抱く。

「聖獣を見せてくれてありがとう。後ろと代わるね。じゃ!」

 そう言ってニーナとカチュアは見物の列を離れていった。


   ◇ ◇ ◇


「たぶん、希少種レアだな」

 ダァンが連れて来たサイを診察した聖獣医が告げる。
 野生の聖獣が病気にかかっていることはほとんどないが、契約直後には念のために診察する。そして身体の特徴などを記録して登録するのだ。
 聖獣舎に専用のスペースを与えられたサイは相変わらず大人しくしている。

「健康に問題はない。ただし、かなりの年齢としかも知れん」

「え?」

 思ってもみなかった情報に戸惑う。

「じーさん聖獣って事ですか?」

「そう。普通、人間に興味を示して契約に応じるのは若い個体が多いのだが…、これはそこそこ歳を取ってるんじゃないかと思う」

 聖獣の歯を調べながら先生が言う。

「肉体は青年期と比べるとやや弱ってるかもしれん。しかしその分、知恵が付いているだろう。もしかしたら複数の魔法が使えるかもしれん」

「へ、へえー」

「歳を取ってると言っても人間の寿命より長く生きる可能性もある。それにこの巨体だ。そんじょそこらの聖獣には負けんだろうよ。充分に見事な成果だ。やったな、ダァン!」

「はい!」

 良かった。
 これでみんなに笑われることはないだろう。
 先生が帰って行くと、代わりにクラスメイト達が押し寄せた。

「すごいよ、ダァン!」
「こんなに大きな聖獣を…」
「大変だったろう?」

「ま、まあね」

 みんな興味津々だ。

「どうやって見つけたの?」
「何か秘策はあるの?」
「エサは何?」

 なんて答えよう。
 きっとみんな、面白い話を期待してる。
 そうでなければ役に立つ話だ。
 ありのままの、つまらない話をしたらガッカリされるかも知れない。
 何の努力もしないで聖獣と契約したズルい奴だと陰口を叩かれないだろうか?
 せめて何か……ちょっと気の利いた……英雄譚のような、ワクワクドキドキするような演出の………

《 それは、ウソではないのかね? 》

「!?」

 かすかな声。

 ドキリとしたが、それきりだ。
 他に聞こえた人は居ないらしい。
 空耳か…?
 それでも少し後ろめたくなり、見栄を張って作り話をする気はどこかに消えてしまった。

「いやあ、それがさぁ。エサをカバンから出して確認してたら、コイツが来て食い始めてさぁ」

「あはは……なんだそれ」

「よほど気に入られたんだな、ダァン」

「聖獣に好かれるヤツっていいよな~。うらやまし~」

「え?」

 俺のこと?

 それは俺がライゼルに対して感じていた事じゃないか。
 他人からは俺もそう見えるのかな?
 あの白いオオジカにやろうとしたエサを食われちまって、聖獣に嫌われてる?とすら思ったのに。

「ぐ、偶然だよ」

 複雑な気分のまま返事をする。

 ふと、視線を感じた。
 隣にいる老サイがダァンを見つめていた。
 澄んだ瞳で、………ただ静かに。
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