神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

文字の大きさ
22 / 40

楽しい訓練

しおりを挟む

「17」

 ライゼルはすばやくボードに書かれた数字を読み上げる。

「5」

 1ケタなら簡単だ。

「24……じゃない、243…いや、8?」

 確信が持てないまま、俺は地面に戻った。
 高い木の上に置かれた小さなボード。ジャンプしてそれを読み取る訓練中だ。

「残念! 正解は『249』でしたあー!」

「くそっ!」

 かなり本気でくやしい。

 ウサギは視力が弱く、人間で言えば0.05~0.1程度の視力しかない。それをカバーするのが俺の視力。【同化】した状態で、ウサギの能力を活かしてジャンプしつつ俺の能力を活かして数字を読み取る。
 これはお互いの力を上手く使いこなせるようにとクオが考えた訓練だ。

「葉っぱが邪魔でボードがよく見えなかったんだ。風で揺れて…。いや、あそこで体をひねって角度を変えていれば……それに最初の踏み切りも甘かったし……」

 ブツブツと反省を口にする俺を尻目に、クオは次のボードを小鳥に渡す。
 小鳥は厚紙のボードについたヒモをくわえて飛んで行き、高い枝の先に引っ掛ける。

「ピーユ、ピーユ、ピー」

 今度はここだよ、と言いたげにさえずる。
 また面倒くさい場所に……。
 ボードを目掛けてジャンプするとその上にある太い枝に頭をぶつけそうだ。その枝を避けようとすれば手前の枝が邪魔だし足場も悪い。
 そうだ、まず隣の木へ飛んで幹を蹴り、横から飛び込むように斜めに向かおう。数字を見たらその向こうにある細めの枝をつかんで鉄棒の要領で一回転して……

「4115」

 1と1の間が狭くて1本の線がブレてる様にも見えたが、あれは2本だ。
 引っかけだろう。「415」じゃなくて「4115」!

「正解!!」

 クオが盛大な拍手を送ってくれる。
 俺は今、動体視力と空中での姿勢制御の訓練をしている。
 ただ高く飛べるだけじゃ実戦では役に立たない。
 空中でも臨機応変に動けなければ、ただの的だ。
 まずは肉体能力を鍛え、そこそこ上手く飛べる様になったら次に進む。魔法を併用してさらなる移動や方向変換、攻撃や防御など。自由自在に動き回れる様になれば勝機は見えてくる。

「おー、やってるやってる~」

 声に振り向くと森の小径こみちをカチュアがやって来る。
 後ろからはノシノシと歩くクロコダイルのプルア。

「ガアア!」

 プルアも元気良くご挨拶……じゃなくて飛びかかってきた!

「うわ!」

「ガアッ!」

「ちょ、ちょっと! おい! こら!」

「ガアガア! グガア!」

 大口を開け、ゴツい爪の付いた手を振り回して俺を追いかける。
 ただし殺気はない。俺がジャンプしてるのを見て気分が高揚したみたいだ。
 よく弾むボールで遊ぶような感じ?

「おい、カチュア! 笑ってないで助けろ!」

 俺を捕まえようと飛びかかってくるプルアを避けるのはイイ訓練になるけど見た目が怖い。
 くねる尻尾は意外な方向から攻撃がくるし、ビンタだってすごい勢いだ。
 背後でバクン!と牙を打ち鳴らしてアゴが閉じると食われた気分になる。

「でも全部避けてるじゃん! スゴイ!」

「い・い・か・ら、捕まえて!!」

(キュッキュウゥ~~)

 涙目になる。オレチビも。

「はい、終わり~!」

「グア?」

 明るく声をかけるカチュア。ここで怒鳴ると一層興奮してしまうそうだ。
 だから落ち着いた声で指示を出す。

「おいで! ココ!」

「グアア」

 カチュアに呼ばれ、お利口な子犬のように戻っていくプルア。
 指差した場所にちょこんとお座り。干した大根チップか何かをもらって満足そうだ。

「ぜーーーはーーーーーっ」

 俺はうようにその場を離れる。冷や汗が一気に吹き出す。
 ポロン、とこぼれるようにチビ助が落ちた。

「キュウ~~~」

 グッタリしている。
 抱き上げてチェックしたが怪我はない。良かった。
 クロコダイルに驚いて目を回しただけだろう。そっと背中をさすってやる。チビ助は自分で体を動かし、撫でて欲しいところを俺の手の下に持ってくる。

「ウルルルル……」

 のんびりと手足を伸ばしたプルアがノドを鳴らしている。

「楽しかった? またライゼルに遊んでもらおうね?、プルア!」

「うおい!」

 やめて。本当にやめて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...