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楽しい訓練
しおりを挟む「17」
ライゼルはすばやくボードに書かれた数字を読み上げる。
「5」
1ケタなら簡単だ。
「24……じゃない、243…いや、8?」
確信が持てないまま、俺は地面に戻った。
高い木の上に置かれた小さなボード。ジャンプしてそれを読み取る訓練中だ。
「残念! 正解は『249』でしたあー!」
「くそっ!」
かなり本気でくやしい。
ウサギは視力が弱く、人間で言えば0.05~0.1程度の視力しかない。それをカバーするのが俺の視力。【同化】した状態で、ウサギの能力を活かしてジャンプしつつ俺の能力を活かして数字を読み取る。
これはお互いの力を上手く使いこなせるようにとクオが考えた訓練だ。
「葉っぱが邪魔でボードがよく見えなかったんだ。風で揺れて…。いや、あそこで体をひねって角度を変えていれば……それに最初の踏み切りも甘かったし……」
ブツブツと反省を口にする俺を尻目に、クオは次のボードを小鳥に渡す。
小鳥は厚紙のボードについたヒモをくわえて飛んで行き、高い枝の先に引っ掛ける。
「ピーユ、ピーユ、ピー」
今度はここだよ、と言いたげにさえずる。
また面倒くさい場所に……。
ボードを目掛けてジャンプするとその上にある太い枝に頭をぶつけそうだ。その枝を避けようとすれば手前の枝が邪魔だし足場も悪い。
そうだ、まず隣の木へ飛んで幹を蹴り、横から飛び込むように斜めに向かおう。数字を見たらその向こうにある細めの枝をつかんで鉄棒の要領で一回転して……
「4115」
1と1の間が狭くて1本の線がブレてる様にも見えたが、あれは2本だ。
引っかけだろう。「415」じゃなくて「4115」!
「正解!!」
クオが盛大な拍手を送ってくれる。
俺は今、動体視力と空中での姿勢制御の訓練をしている。
ただ高く飛べるだけじゃ実戦では役に立たない。
空中でも臨機応変に動けなければ、ただの的だ。
まずは肉体能力を鍛え、そこそこ上手く飛べる様になったら次に進む。魔法を併用してさらなる移動や方向変換、攻撃や防御など。自由自在に動き回れる様になれば勝機は見えてくる。
「おー、やってるやってる~」
声に振り向くと森の小径をカチュアがやって来る。
後ろからはノシノシと歩くクロコダイルのプルア。
「ガアア!」
プルアも元気良くご挨拶……じゃなくて飛びかかってきた!
「うわ!」
「ガアッ!」
「ちょ、ちょっと! おい! こら!」
「ガアガア! グガア!」
大口を開け、ゴツい爪の付いた手を振り回して俺を追いかける。
ただし殺気はない。俺がジャンプしてるのを見て気分が高揚したみたいだ。
よく弾むボールで遊ぶような感じ?
「おい、カチュア! 笑ってないで助けろ!」
俺を捕まえようと飛びかかってくるプルアを避けるのはイイ訓練になるけど見た目が怖い。
くねる尻尾は意外な方向から攻撃がくるし、ビンタだってすごい勢いだ。
背後でバクン!と牙を打ち鳴らしてアゴが閉じると食われた気分になる。
「でも全部避けてるじゃん! スゴイ!」
「い・い・か・ら、捕まえて!!」
(キュッキュウゥ~~)
涙目になる。外も中も。
「はい、終わり~!」
「グア?」
明るく声をかけるカチュア。ここで怒鳴ると一層興奮してしまうそうだ。
だから落ち着いた声で指示を出す。
「おいで! ココ!」
「グアア」
カチュアに呼ばれ、お利口な子犬のように戻っていくプルア。
指差した場所にちょこんとお座り。干した大根チップか何かをもらって満足そうだ。
「ぜーーーはーーーーーっ」
俺は這うようにその場を離れる。冷や汗が一気に吹き出す。
ポロン、とこぼれるようにチビ助が落ちた。
「キュウ~~~」
グッタリしている。
抱き上げてチェックしたが怪我はない。良かった。
クロコダイルに驚いて目を回しただけだろう。そっと背中をさすってやる。チビ助は自分で体を動かし、撫でて欲しいところを俺の手の下に持ってくる。
「ウルルルル……」
のんびりと手足を伸ばしたプルアがノドを鳴らしている。
「楽しかった? またライゼルに遊んでもらおうね?、プルア!」
「うおい!」
やめて。本当にやめて。
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