神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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赤熊先輩

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「おい、聞いた? 卒業試験の話!」
「聞いた聞いた!」
「てゆーか掲示板にお知らせが貼ってあるよ」
「ホント!? 見てこなくちゃ!」

 卒業試験の概要が発表された。
 大枠は今までと同じだが、『神々の島』のフィールドを活かした競技風になるらしい。

 まずはスタート地点のアトラ聖獣学院校庭からセザンテ高原に設置された特設会場まで移動速度を競う。
 競技場での競争とは違い、フィールドは山あり谷あり森もあり。道なき道を進む。
 その後、到着順の上位32名で戦闘能力を競うトーナメント戦が行われる。
 参加資格は前日までに聖獣を従えた学生。それまでに聖獣と契約できなかった者は留年、もしくは自主退学となる。

「ライゼル君! 頼む! この通りだ!」

「はあっ!?」

 俺に向かって深々と頭を下げる大柄な男性。
 誰あろう、有名な「赤熊先輩」だ。
 体が熊のように大きくて赤い頭髪をしているから赤熊……ではない。
 彼が狙っているのは真っ赤な大熊。おそらく灰色熊グリズリー希少種レアだろう。
 去年、その聖獣と契約できなかった彼は、一年分の学費を払い直して留年した。

 目当ての聖獣と契約出来なくても、卒業が近くなれば妥協して別の聖獣と契約するのが普通である。通常種コモンでも聖獣持ちなら充分にやっていけるからだ。
 けれども先輩は妥協しなかった。
 どうしてもあの赤熊を、と。
 だから「赤熊先輩」。
 その先輩が俺の畑までやって来て、いきなりガバ!と頭を下げたのだ。

「な、何ですか、先輩。やめて下さい」

 周りの畑で作業中の奴らがガン見してる……うう、これ以上、悪目立ちしたくねえ。

「もう後がない。ぜひともご指導を!」

 ちょっと待って! 何? ナンナノ?
 周りがヒソヒソし始めたんですけど!

「カチュア君によれば、キミと一緒にクロコダイルの要求を解読して契約に漕ぎ着けたそうじゃないか」

「あ、それは俺じゃなくてコイツです」

 鈴なりの黄色いミニトマトを熱心に観察しているクオを指差す。

「キミが!?」

 ずい!と顔を寄せた先輩の勢いに押され、思わず後ずさるクオ。

「あれは…解読ではないですよ。ワニさんのお話を聞いてあげただけなんです」

 似たようなものだと思うが、クオにとっては違うらしい。

「でも先輩。もともとカチュアとプルア……あのクロコダイルは、両思いだったのに行き違いで上手くいってなかったんですよ。その誤解が解けただけで、何かすごい技を使ってテイムしたとかでは……」

「それでいい! も別に仲が悪いわけじゃないんだ。そのハズだ。ただ、アイツの要求が分からん。もう時間がない!!」

 先輩があせる理由は、卒業試験が1週間後に迫っているからに違いない。
 試験の前日までに契約出来なければ、退学か留年かを選ばなければならない。
 アトラ聖獣学院の学費は安くはない。
 この島での生活費や島での聖獣保護活動に対する寄付も含まれるからだ。
 さすがにもう一度留年するのは厳しいのだろう。

「ぼく……役に立つかなぁ?」

「聖獣の反応を見てやれよ、クオ。何か分かるかも……」

「よし! 一緒に来てくれ!」

 そう言うと赤熊先輩は俺とクオをわっし!と両手で捕まえる。
 二人を持ち上げ両肩に担ぐ。チビ助があわてて俺の頭にしがみつく。

「行くぞ!」
「はうあ!?」
「うえええええええ~~~~?」
「キュキュッ!?」

 そのまま赤熊先輩は走り出す。想定外の移動方法だ。
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