27 / 40
前夜祭
しおりを挟む「この一年の君達の努力が今ここに実り……」
院長の挨拶が長い。早く終われ。
広い食堂の中央には、いつもより手の込んだ料理が所狭しと並んでいる。
大規模なバイキング形式だ。
今年の授業は今日まで。明日は卒業試験。丸一日間かけて行われる。
今日は前夜祭だ。
院長の挨拶が終わり、みんなすぐに皿を手にして料理の列に並ぶ。
いつもの学食とは違い、ローストビーフの切り分けなどに給仕の姿がある。
卒業試験の後に行われる祝賀パーティの練習を兼ねているのだろう。祝賀パーティは各国からの招待客も参加するため、大騒ぎできる卒業パーティよりも格式高い対応が求められる。
「あーあ。馬じゃなくて、もっとイイのがよかったー」
「まだいい方じゃん。俺は犬だよ? 猟犬タイプじゃないフツーの野良犬」
狙っていた聖獣を諦めてテイムしやすい聖獣に対象を変えた学生なんだろう。今日までに聖獣と契約できないと卒業できないので、そういう駆け込み契約は多い。
でも自分の聖獣に対してそんな言い方しなくても…。
聖獣に対する態度は人それぞれだ。
ペットのように可愛がる者、将来の仕事のパートナーとして友情を育む者、資産として管理する者、……不満をぶつける対象とする者。
しかし、聖獣と聖獣士は精神的につながっている。会話や思考はほとんど聞かれていると思っていい。
だから離れた場所にいる聖獣を呼び寄せたり、無言で打ち合わせできたりして実戦で役に立つのだ。
あんな風に馬鹿にしたら、後で困るんじゃないかな。
とはいえ、仲が良すぎても大変なのだ。
チビ助からは「一緒においしいご飯食べたい!」って意識がガンガン飛んでくる。
このままでも「おいしい満足感」は伝わるらしいが、【同化】すればもっと味わえるから呼べとうるさい。
残念ながら、今夜は全ての聖獣が聖獣舎に収容されている。明日からの卒業試験のためだ。
最後の健康診断を受けた後、試験のスタートまで厳重な警備下に置かれる。
「聖獣ってさあ、思ったより頭悪くない? あんまり命令聞かないっていうか…」
「そう? うちは特に問題ないけど」
「まあ、何でもいいから捕まえてこいって親に言われてるし?」
「そうそ。ウサギよりマシだよ」
「ウサギじゃなぁ」
そう言って弾けるように笑う。
くそっ! 結局、オチはそこかよ!
自分だって最初はそう思ったのに、人に言われると腹が立つ。
「ライゼル、はい!」
カチュアがやって来て、目の前にグラスを差し出す。グラスはオレンジ色の何かで満たされていて、上に生クリームとピスタチオナッツのトッピング。
「ニンジンのムースだって。チビちゃんが喜びそうでしょ?」
「おう。ありがと。わざわざデザートコーナーまで行って探してくれたの?」
「え? ビュッフェスタイルはまずスイーツをキープ! 常識でしょ?」
女子の常識かよ! 知らんよ!
「まずキープすんのは肉だろ肉!! ローストビーフもいいけど、あっちの煮込みがうまそうなんだよ!」
「行く行く! プルアと契約して以来、あたしも肉が食べたくてしょうがないんだよねえ!」
スイーツを席に置いてから二人して肉に突進。
「ニーナは? 一緒じゃないの?」
「公務」
「公務ぅ~?」
「ペガサス付きで招待客の出迎え」
「ああ」
今年は卒業試験の見学者が多い。今夜のうちに到着する客もいるようだ。港にはいくつも船が到着してた。
伝説種持ちのジークとニーナが学生を代表して出迎えに出ているらしい。
牛スネ肉の煮込みの列に並んでいると、
「じゃあ、本当に魔族が?」
気になる会話が聞こえてきた。魔族?
「出たんですって!」
「マジかよ」
「ジーク様が勇者なのですから当然よ。魔王が誕生したんですわ、きっと!」
「俺は勇者と一緒に戦うぜ。悪い魔族をやっつける」
「当たり前じゃない!」
詳細が気になったが、会話はそこで終わってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる