神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

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前夜祭

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「この一年の君達の努力が今ここに実り……」

 院長の挨拶が長い。早く終われ。
 広い食堂の中央には、いつもより手の込んだ料理が所狭しと並んでいる。
 大規模なバイキング形式だ。
 今年の授業は今日まで。明日は卒業試験。丸一日間かけて行われる。
 今日は前夜祭だ。

 院長の挨拶が終わり、みんなすぐに皿を手にして料理の列に並ぶ。
 いつもの学食とは違い、ローストビーフの切り分けなどに給仕の姿がある。
 卒業試験の後に行われる祝賀パーティの練習を兼ねているのだろう。祝賀パーティは各国からの招待客も参加するため、大騒ぎできる卒業パーティよりも格式高い対応が求められる。

「あーあ。馬じゃなくて、もっとイイのがよかったー」

「まだいい方じゃん。俺は犬だよ? 猟犬タイプじゃないフツーの野良犬」

 狙っていた聖獣を諦めてテイムしやすい聖獣に対象を変えた学生なんだろう。今日までに聖獣と契約できないと卒業できないので、そういう駆け込み契約は多い。
 でも自分の聖獣に対してそんな言い方しなくても…。

 聖獣に対する態度は人それぞれだ。
 ペットのように可愛がる者、将来の仕事のパートナーとして友情を育む者、資産として管理する者、……不満をぶつける対象とする者。
 しかし、聖獣と聖獣士は精神的につながっている。会話や思考はほとんど聞かれていると思っていい。
 だから離れた場所にいる聖獣を呼び寄せたり、無言で打ち合わせできたりして実戦で役に立つのだ。
 あんな風に馬鹿にしたら、後で困るんじゃないかな。

 とはいえ、仲が良すぎても大変なのだ。
 チビ助からは「一緒においしいご飯食べたい!」って意識がガンガン飛んでくる。
 このままでも「おいしい満足感」は伝わるらしいが、【同化】すればもっと味わえるから呼べとうるさい。
 残念ながら、今夜は全ての聖獣が聖獣舎に収容されている。明日からの卒業試験のためだ。
 最後の健康診断を受けた後、試験のスタートまで厳重な警備下に置かれる。

「聖獣ってさあ、思ったより頭悪くない? あんまり命令聞かないっていうか…」

「そう? うちは特に問題ないけど」

「まあ、何でもいいから捕まえてこいって親に言われてるし?」

「そうそ。ウサギよりマシだよ」

「ウサギじゃなぁ」

 そう言って弾けるように笑う。
 くそっ! 結局、オチはそこかよ!
 自分だって最初はそう思ったのに、人に言われると腹が立つ。

「ライゼル、はい!」

 カチュアがやって来て、目の前にグラスを差し出す。グラスはオレンジ色の何かで満たされていて、上に生クリームとピスタチオナッツのトッピング。

「ニンジンのムースだって。チビちゃんが喜びそうでしょ?」

「おう。ありがと。わざわざデザートコーナーまで行って探してくれたの?」

「え? ビュッフェスタイルバイキングはまずスイーツをキープ! 常識でしょ?」

 女子の常識かよ! 知らんよ!

「まずキープすんのは肉だろ肉!! ローストビーフもいいけど、あっちの煮込みがうまそうなんだよ!」

「行く行く! プルアと契約して以来、あたしも肉が食べたくてしょうがないんだよねえ!」

 スイーツを席に置いてから二人して肉に突進。

「ニーナは? 一緒じゃないの?」

「公務」

「公務ぅ~?」

ペガサスレジェンド付きで招待客の出迎え」

「ああ」

 今年は卒業試験の見学者が多い。今夜のうちに到着する客もいるようだ。港にはいくつも船が到着してた。
 伝説種レジェンド持ちのジークとニーナが学生を代表して出迎えに出ているらしい。
 牛スネ肉の煮込みの列に並んでいると、

「じゃあ、本当に魔族が?」

 気になる会話が聞こえてきた。魔族?

「出たんですって!」

「マジかよ」

「ジーク様が勇者なのですから当然よ。魔王が誕生したんですわ、きっと!」

「俺は勇者と一緒に戦うぜ。悪い魔族をやっつける」

「当たり前じゃない!」

 詳細が気になったが、会話はそこで終わってしまった。
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