神々の島の聖獣士〜勇者に聖獣を奪われて殺されかけた俺を助けてくれたのは小さな黒ウサギでした〜

浅間遊歩

文字の大きさ
29 / 40

聖獣召喚

しおりを挟む

「整列!」

 先生の号令が校庭に響く。

「これより、アトラ聖獣学院卒業試験を始める!」

 観客席より盛大な拍手。
 去年までは体力測定のような味気ない試験だったそうだが、今年は華やかだ。
 一部の裕福な学生の保護者や卒業生の実力を調査に来た団体職員、聖獣を研究している学者や報道関係の記者もいる。
 貴賓席には世界各国からの要人を始め、アトラ聖獣学院の名誉顧問であるストラツファ国王の姿まで。
 卒業試験というより世界規模の競技大会のようだ。

 楽隊が奏でる音楽に合わせて学生達が列を組んで移動する。
 聖獣はまだここには居ない。昨日から聖獣舎の中だ。
 学生達が所定の位置につくのを見届けると、司会進行役の先生が指示を出す。

「それでは、それぞれ自分が契約した聖獣を呼び寄せてください」

 遠く離れた場所から心の声で聖獣に指示を出す【念話】。聖獣士の基本中の基本の能力だが、これを使いこなせるかテストする。
 校庭から聖獣舎まではかなり離れている。大声を出しても届かない。
 そこで【念話】で語りかけ、聖獣と感覚を共有し、今いる場所まで誘導して呼び寄せる。
 最低限それができなければ、卒業は許可されない。

 やがて、空に二つの星が現れた。
 輝く星は見る間に近づいて来る。
 先を飛ぶ金の星はゴールドドラゴン、後ろの白く輝く星はペガサス。
 2体の伝説種レジェンドが校庭に舞い降りる。

 これは恐らく演出だろう。
 この最初の試験は到着までの時間を競うものではない。制限時間内に聖獣士の元まで聖獣がやってくれば合格になる。
 だから招待客へのサービスとして、伝説種レジェンドをゆっくり観られる時間を作ったに違いない。
 だってチビ助が『まだ聖獣舎の扉が開いてない』って言ってるし。

 飛んできたゴールドドラゴンは着陸する前にジークに抱きとめられた。
 地面に降り立ったペガサスは、翼をたたみながらうやうやしくニーナに首を寄せる。
 校庭が歓声と拍手に包まれる。招待客だけでなく先生や学生達も大喝采だ。
 司会進行の先生が2体の伝説種レジェンドの解説を始める。

 ゴールドドラゴンを見たのは久しぶりだ。まだあの複雑な模様のついた兜をかぶっている。
 半年近く前に洞窟で会った時とはだいぶ印象が違うな。
 司会進行は『鋭い視線と引き締まった体』なんて表現してたけど、なんだかやつれたような……。
 大丈夫かな?
 あの時みたいにイジメられてないよな?

 伝説種レジェンドの紹介が終わると、今度こそ本当に聖獣を呼び寄せる試験が始まった。
 聖獣舎の扉が開けられ、聖獣達が一斉に走り出す。必死になるチビ助のあせりが伝わってくる。
 俺の畑なら場所をよく知ってるから転移移動できるけど、知らない場所には転移できないそうだ。

(無理すんな。他のやつに踏まれんなよ? ゆっくりでいいって。大丈夫)

 チビ助の奴、疾走する馬の集団と張り合ってやがる。

(キュウ! キュウキュ!)

 やだ走る!、かよ。他の聖獣に負けたくないらしい。
 俺もチビ助だけなら何を言ってるか理解できる。

(しょうがねえな。じゃあ……)

 ちょっとしたアイデアを試してみるようアドバイスする。

 やがて校庭からも馬の集団が見え始めた。やはり馬は早い。
 校庭には何本もの白線が引かれ、マス目に区切られている。
 学生は割り当てられた区画から出てはいけない。【念話】と契約の絆で聖獣を呼び寄せるのだ。

「どうどう。マックス、こっちだ!」

「アルミエル! 来てくれてありがとう!」

 次々と馬の聖獣が主人を見つけて駆け寄っていく。その中の一匹が俺の近くを走り抜けた時、小さな黒い塊が飛び出した。

「キュッ!!」

 ポーンと弧を描いて俺の頭の上に飛び移る。チビ助だ。

「へへ……うまくいったな。先頭集団だぞ」

「キュキュ!」

 うれしそうだ。
 馬の足元を走り続けていては危ないから、どうせなら飛び乗ってしまえとアドバイスしたのだ。
 ただのウサギには無理だが、契約済の今のチビ助なら可能だろう。
 俺と能力を共有してるから視力は充分、身体強化魔法でジャンプ力もアップ。枝から枝へ連続で飛び移る訓練もやったから、きっとできると思った。
 チビ助は俺の頭にしがみつき、ほっぺをスリスリしてくる。
 昨日から会えなくて寂しかった、だって。
 くそ。可愛いこと言いやがって。

「キュウ~」

 ホッとしたら腹が減ってきたらしい。
 でも髪の毛は食うなよ?
 まだハゲたくない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...