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静かな拒絶
しおりを挟む馬に続いてワシやタカなど空を飛ぶ猛禽類がやって来る。ライオンや狼、トナカイやヌーなども続く。
聖獣達が一気に押し寄せたため、校庭へ向かう道は大渋滞。
と、突如、
「グオオオオオオオオオオォ………ッ!」
恐ろしい咆哮。
だいぶ離れているのに皮膚がピリピリする。
(あれ…? あの声は…)
ギャッ
ギミッ
キュー…
何匹かの聖獣が弾き飛ばされる。
やがて我先にと押し寄せていた聖獣の群れが二つに割れた。
道を譲る聖獣達を跳ね飛ばしながら赤い巨体が突進してくる。
もしやと思ったけど、やっぱり灰色熊の希少種、赤熊の大将だ。
だいぶ機嫌が悪いらしい。目つきがワイルド。
「ウオッウオッ…」
「バカやろー!!!」
不満を訴えながら先輩に飛び付こうとして鉄拳制裁をくらっている。
見事なカウンターだ。
うーん。渋滞ってイライラするから大将の気持ちも分からなくはない。けど、この状況でスキルの【咆哮】をぶっ放すのはやり過ぎ。他の聖獣のトラウマになってなきゃいいけど。大将としては『怪我させてないんだからいいじゃん!』らしいけど、ちょっと怒られときなさい。
この「やれやれ感」を共有しようとカチュアの方を見ると、…あれ?
係員にどこかへ誘導されて行く。プルアも一緒だ。
ああ、聖獣の到着を確認したら次の試験のスタート地点に移動するんだっけ。
係員はそれほど多くないので順番待ちのようだ。
途中の移動や到着確認手続きで時間のロスが出るので第一試験では早さを競わないんだな。どうせ次の試験で競走するから。
(…………………それにしても遅いな……)
周りの学生は手続きを済ませて次々と移動してゆく。
校庭の人影はだいぶまばらになった。
ようやく係員が俺達に気づき、近づいて来る。
「君。聖獣はまだ来ないのかね?」
「はい?」
違った。チビ助に気づいてなかったらしい。
「俺の聖獣はコイツです。だいぶ前から来てますけど?」
「キュッキュウ!」
頭上を指差すとチビ助も抗議の声を上げる。
「ええっ?……君があの!?……し、失礼した。じゃ、手続きを…………ぷ」
笑った。
笑っただろ今。聞こえたからな。
「名前は…ライゼル・ユークリッド。聖獣は……ウサ…ゴホン、ウサギ……で」
係員のおじさんは笑いをこらえて確認しながら、手に持った書類に必要事項を書き込む。
が、途中で手を止め、真面目な顔で俺を見る。
「いいのかい? 本当にウサギで。今ならやり直せるかもしれないぞ?」
「勝手に契約破棄はできないんでしょう? 聖獣全体に嫌われるって聞きましたけど?」
「勝手に破棄したら、な。君とそのウサギの関係はとても良好に見える。ここだけの話、今なら……双方合意の元でなら契約破棄も可能だ。ケンカ別れでないなら、他の聖獣と再契約することもできる」
初めて聞く話だ。
「例えば、何の不満もないけど島の外へ出るのはどうしても嫌だと言う聖獣の場合、今このタイミングでならペナルティなしに契約破棄が可能だ。相手を思いやった上での契約解消なら、やり直しが認められるんだよ。別の聖獣と契約するなら、もう一年、学院に通う必要があるがね。どうする?」
どうするって……
「………キュ…ウ……?」
弱々しく鳴きながら、チビ助が俺の頭の上から降りようとする。
俺はそれを両手でグッと押さえ、胸を張った。
「おれの聖獣はコイツです! コイツで登録をお願いします!!」
「キュ!?」
「ばーか。変な気を使うなって。島の外にも美味いモンはいっぱいあるぞ。一緒に食おう?」
「キュッ、キュウ~!」
耳をパタパタさせて大喜びのチビ助。離すものか!と俺にしがみつく。
「ははは。君達は本当に仲が良いんだな。変な事を言って悪かった。忘れてくれ」
あまり広まって欲しくない方法なので、と口止めされる。
この最初の試験は学生の基本能力だけでなく、聖獣側の最終意思をも確認する場なのだそうだ。
契約を解消したい聖獣は、このタイミングでなら自然に帰れるらしい。
「チビ助、俺と一緒に島を出るぞ?」
「キュ!」
答えはもちろん yes!
必要な確認を終え、次のスタート地点に移動しようとした時、
「なんで来ねぇんだよォ!」
一人の学生が騒ぎ始めた。
「俺が契約してやったのに! あの野良犬め! さっさと来い! 来いよ!!」
昨日、聖獣を馬鹿にしていた学生だ。
他にも何人か聖獣が来ていない。
「あの調子じゃ、制限時間が過ぎても聖獣は来ないだろう」
係員のおじさんが静かに言った。
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