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湖のヌシ
しおりを挟むもう一度、全力で空高くジャンプする。そのまま風を受けて滑空。
ムササビの聖獣なら自前の皮膜で風を切れるが、その部分の抵抗を風魔法で代用する。
俺の風魔法能力では自由自在に空を飛ぶ【飛翔】は使えないが、これ位なら問題ない。
自分が起こす風を支えられるのだから、同程度の強さの自然の風を受け止めることもできるって訳だ。
板状の障壁を生み出し、その角度によって滑るように移動する。向かい風になったので凧揚げの要領で風に乗ることまでできるようになった。さらに飛距離が稼げる。
それを繰り返し、あっという間に湖を半周して第二チェックポイントに到着する。途中、何人もゴボウ抜き!
第二チェックポイントは湖を見渡せる場所にあった。
すぐに水晶玉に触れてチェックを済ませる。
「独創的ね」
「あざーす!」
ニヤリと笑いながら地図を渡してくれた女性は、俺のジャンプの一部始終を見ていたらしい。
ただし隣の男性係員は気に入らなかったらしく顔をしかめている。男の方は見たことがある人物だ。学院の職員だろう。
次のチェックポイントを確認しようとした時、突然、
ザッパァァアアアアァ……ン!!!!
背後で盛大な水しぶきが上がり、巨大な影が湖から飛び出した!!
もしや伝説の湖の主か!?
この湖には首長竜の伝説種が棲んでいるとのウワサがある。
「グガアァッ!!」
現れたのは………巨大クロコダイルのプルア。それにカチュアだ。
一緒に水から上がってくる。
「肉食系女子チームか!」
「ちょっと! 言い方!」
カチュアはそのまま水晶玉に直進。タッチして水晶玉が光るのを確認し、地図をもらっている。
「グアア、グアア」
「おう、プルア。よしよし」
よたよたとすり寄ってくるプルアをなでてやると目を細めて喜んでいる。
カチュアが戻って来た。
次のチェックポイントはヴォスラ火山を越えた先だ。峠を越えるか、山肌を回るか。別のルートもあるかも知れない。
とりあえず湖岸を並走しながら会話する。
「早いじゃない?」
「まあな。でもカチュア達はもっと先に行ってるのかと……。川も湖も泳いで渡ったんだろ?」
「そう。プルアが大喜びで湖を3周して…」
遠い目で語る。
それは大変デシタネ…
「よーし次の山越えはダッシュで……キャッ!」
ドッボーン!!
突然の水音に振り返ると、カチュアが水の中に引き込まれている。
犯人は首長竜の伝説種………ではなくプルアだ!
「プルア?! 湖はもういいの! 次はあっちへ……」
カチュアの指示を無視し、服をくわえてどんどん岸から離れて行く。
どうやら4週目に突入したらしい。
「先……行くぞ?」
カチュアはプルアと行動するために水魔法の【水中呼吸】を覚えている。溺れることはないだろう。
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