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不正行為
しおりを挟む「不正行為だと?」
スタッフから連絡を受けた卒業試験本部は色めき立つ。
「何ということだ。証拠は押さえたか!?」
「コレを……」
第一チェックポイントから送られてきたのは、一人の学生の到達記録。
順位は28位。
飛び抜けて早いという程でもない。川越えに成功したのだろう。
「しかし彼は最後列スタートでした。呼び寄せにすら手こずって、聖獣の能力を使いこなしてるとは思えません。それに足の速い希少種ならともかく、契約してるのはウサギだそうで」
「ウサギ……ライゼル・ユークリッドか」
ウサギなんか連れている学生は一人しか居ない。全世界でもおそらく一人だろう。普通はもっと役に立つ聖獣を選ぶ。
「いくら弱い聖獣しか手に入らなかったといえ、不正に手を染めるとは……」
「本当に。困ったものですわ!」
学院の職員達はライゼルの悪いウワサに慣れていたため、彼がまたやらかしたのだと信じて疑わなかった。だが、
「この記録だけで不正とは言い切れないんじゃないかなぁ?」
のんびりとした声が割って入る。
「だって不可能な記録じゃないでしょ?」
本部長は眉をひそめて声の主をにらむ。
先程までつまらなそうにソファに埋もれていた若い男。三色の髪を持つ聖獣士。
冒険者組合本部から手伝いとして派遣された……名前は何だっけか?
「でも……ただのウサギですよ!?」
「通常種だってペース配分を考えずに飛ばせばこれ位できるっしょ。そのうち失速するかもよ?」
三色の髪の聖獣士ミケーネ・ヘルファッサは、別にライゼルを信じてかばったわけではない。
ただ単純に事実を認識しようとしただけだ。可能か不可能かで言えば可能である。それを表明したに過ぎない。
そこへ第二チェックポイントの報告が届く。
「25位……」
順位が上がっている。
それを見て本部長は眉をしかめる。
「何だコレは。どうなってる?」
「そう言われましても…」
「【異界通路】が使える魔動機でも隠し持ってるんじゃないか?」
「それは不正行為にあたりますよ! 失格になります!」
「いえ、第二チェックポイントに再度確認しましたが、怪しい行動はなかったそうです」
「うまく隠してるんだな?」
決めつけている。
アトラ聖獣学院職員達のライゼルに対する態度に違和感を感じながら、ミケーネは念を押す。
「じゃあ証拠をつかまないとね。いい? 証拠だよ。全世界が納得できるような、客観的な動かぬ証拠をね」
忌々しそうにミケーネをにらむ本部長。
この男は余所者のくせに何故余計な口出しをするのか?
だが考えてみれば、ライゼルがうまく言い逃れをした場合、責任を取らされるのは自分だ。ここは慎重にせねば。
「由緒あるアトラ聖獣学院の卒業試験を汚すとは……許さん。何としても不正の証拠をつかめ!」
その指令は、素早く全スタッフに伝えられた。
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