祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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卒業パーティーの会場は、色とりどりのドレスと煌びやかな装飾に包まれていた。

今夜、この場所で「祝福の儀」が行われる。

王太子セドリック様と、その婚約者である私、エリアナ・フォン・ローゼンバーグ。

私たちの絆を国中に示すための、神聖な儀式のはずだった。

しかし、壇上に立った婚約者の瞳には、いつもの慈しみなど欠片も残っていない。

冷え切った沈黙が広間を支配する中、セドリック様がゆっくりと口を開いた。

「エリアナ・フォン・ローゼンバーグ。私は今、この場でお前との婚約を破棄する」

会場にいた貴族たちが、一斉に息を呑む音が聞こえた。

私の隣で誇らしげに立っていたはずの婚約者は、あろうことか一人の少女を抱き寄せる。

男爵令嬢、リリア・ノエル。

彼女は怯えたような表情を作りながら、セドリック様の胸に顔を埋めていた。

「……セドリック様、それは冗談でおっしゃっているのですか?」

私は背筋を伸ばしたまま、静かに問い返した。

動揺を見せれば、相手の思う壺だ。

公爵令嬢として、そして彼を愛する一人の女性として、無様な姿を晒すわけにはいかない。

「冗談なものか。お前の悪辣な本性は、すでに調べがついている」

セドリック様の声は、凍てつく冬の風のように鋭かった。

「お前は聖女たるリリアを妬み、階段から突き落とし、教科書を破り捨て、毒まで盛ろうとした」

「覚えがございません。私はそのような卑劣な真似、一度として……」

「黙れ! リリアの涙が、何よりの証拠だ!」

セドリック様が吠えるように叫ぶ。

彼の瞳はどこか虚ろで、まるで何かに取り憑かれているかのようだった。

その腕の中で、リリアが「怖い……」と小さく震えて見せる。

計算された完璧な弱者の演技。

周囲の学生たちの視線が、一転して私への蔑みへと変わっていくのがわかった。

「エリアナ様、どうしてあんな酷いことを……」

「やはり高慢な公爵令嬢だ。裏では何をしているかわからない」

「リリア様が可哀想だ。あんなに清らかな方なのに」

無責任な囁きが、刃となって私に突き刺さる。

リリアの唇が、一瞬だけ歪んだ。

セドリック様からは見えない角度で、彼女は私を嘲笑っていた。

その瞳には、勝利の確信と、底知れない愉悦が宿っている。

「エリアナ。お前のような毒婦は、我が国の王妃には相応しくない」

セドリック様は冷酷に告げた。

「今すぐ騎士団の手によって牢へと連行せよ。沙汰を待つがいい」

周囲から歓声が上がる。

まるで悪役が成敗されたかのような、残酷な祝福。

私の視界が、怒りと悲しみで白く染まっていく。

それでも、私は視線を逸らさなかった。

愛した人が、これほどまでに無惨に操られている。

その事実が、私の魂を底から震わせた。

「……いいでしょう。今は従いますわ」

私は優雅に、一寸の乱れもなくカーテシーを捧げた。

「ですが、セドリック様。覚悟しておいてくださいませ」

顔を上げたとき、私の瞳には不屈の灯火が宿っていた。

「私の愛は、このような泥棒猫の小細工ごときで諦められるほど、安くはありません」

「何を……!」

セドリック様の顔が驚愕に染まる。

私は騎士たちに囲まれながらも、毅然とした足取りで会場を後にした。

背後で鳴り響く祝福の鐘の音は、私にとって反撃の合図に他ならなかった。
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