祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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決戦を翌日に控えた夜。

私は自室の窓辺に座り、ぼんやりと月を眺めていた。

手元には、淡く青い光を放つ『ローゼンバーグの涙』。

この宝珠が、明日の即位式ですべてを終わらせるための鍵となる。


「……エリアナ、まだ起きていたのか」


扉を叩く音と共に、カイン兄様が入ってきた。

その表情には、隠しきれない疲労と、妹を案じる色が混ざっている。


「お兄様。ええ、少し考え事をしていましたの」


「明日の作戦、もう一度確認しておこう。即位式の最中、聖女の祈りの儀が始まった瞬間に、お前があの宝珠を掲げる。僕が魔法でその光を増幅させるが……」


お兄様はそこで言葉を切り、私の手元にある宝珠を見つめた。


「やはり、お前がその役割を担うのは危険すぎる。宝珠の拒絶反応が起きたら、お前の精神がどうなるか……」


「お兄様。私なら大丈夫ですわ」


私は微笑んで、兄の手をそっと握った。


「セドリック様との思い出がありますもの。彼と過ごした日々、交わした言葉……それらが私を守ってくれます」


「……愛、か。僕にはまだ、その理屈は理解できそうにないな」


「ふふ、お兄様もいつか、素敵な女性に出会えばわかりますわ。自分の命よりも、守りたいと思う存在に」


お兄様は困ったように笑い、私の頭を優しく撫でた。

そのまま、彼は真剣な眼差しで私を見据える。


「リリアの背後にいる勢力も動き出している。どうやら、隣国と通じている節があるんだ。明日の騒動に乗じて、殿下を拉致する計画もあるらしい」


「隣国……。そこまで話が大きくなっていますのね。ますます、明日で片を付けなければなりませんわ」


「ああ。僕が騎士団を率いて、外周を固める。お前は中に入って、殿下を頼むぞ」


「お任せくださいませ」


兄が部屋を去った後、私は再び一人になった。

鏡の前に立ち、自分の姿を映してみる。

かつてセドリック様が「一番似合う」と言ってくれた、深い青色のドレス。

明日はこれを着ていこう。


「セドリック様……」


最後に彼と笑い合ったのは、いつだったかしら。

彼がくれた婚約指輪は、今も私の指で静かに輝いている。

リリアに無理やり外されそうになった時、どうしても抜けなかった不思議な指輪。


「待っていてくださいね。あなたを、あの真っ暗な呪縛から引きずり出して差し上げますわ」


私は宝珠を胸に抱き寄せ、静かに目を閉じた。

明日、世界が変わる。

私が愛した、あの誇り高い王太子を取り戻すために。


嵐の前の静けさが、王宮を包み込んでいた。
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