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決戦の朝は、雲一つない快晴だった。
鏡の中に立つ私は、ローゼンバーグ家の誇りである深い青色のドレスを纏っている。
首元には、兄から託された『ローゼンバーグの涙』を隠したペンダント。
「お嬢様、本当に行かれるのですか……」
侍女のアンナが、震える手で私の髪を整えながら問いかける。
彼女の瞳には不安が滲んでいるが、私は鏡越しに微笑んで見せた。
「ええ。今日、私は私の誇りを取り戻しに行くのですわ」
「ですが、式典会場はリリア様の息がかかった騎士たちで固められています。エリアナ様は公式には招待されていない身……」
「案じなさいな。招かれざる客こそ、最高のサプライズを届けられるものですわよ」
私は最後の手袋をはめ、立ち上がった。
部屋を出ると、廊下にはカイン兄様が待っていた。
完全武装の騎士服に身を包んだ兄は、私の姿を見て短く息を吐く。
「準備はいいか、エリアナ。会場周辺の配置は終わった。リリアが連れてきた隣国の魔導師たちも、すでに僕の部下が監視している」
「流石はお兄様。手際がよろしいですわね」
「……死ぬなよ。殿下を取り戻しても、お前がいなくなっては意味がない」
「ふふ、私はしぶといのが長所ですの。忘れたのですか?」
兄と別れ、私は裏通路を通って聖堂へと向かった。
正面玄関からは、着飾った貴族たちが次々と中へと吸い込まれていく。
その中には、以前私が声をかけたセシル様たちの姿もあった。
彼女たちは、私の姿を認めると、小さく頷いて会場入りした。
聖堂の扉が重厚な音を立てて閉まる。
中からは、荘厳なパイプオルガンの音色が漏れ聞こえてきた。
ついに、即位式が始まったのだ。
私はバルコニー席へ繋がる隠し階段を登り、会場全体を見渡せる位置に身を潜めた。
眼下には、王冠を授かろうとしているセドリック様の姿がある。
その隣には、純白の聖女装束に身を包んだリリアが、勝ち誇った笑みを浮かべて立っていた。
「……ひどい顔ですわね、セドリック様」
遠目からでもわかるほど、セドリック様の顔色は土色に沈んでいる。
まるで魂を抜かれた抜け殻のように、司祭の言葉に機械的に頷いている。
リリアが彼の手を握るたび、彼の身体がビクンと強張るのが見えた。
「さあ、皆様! 新しい王の誕生ですわ! そして、私こそが彼を支える唯一の聖女!」
リリアの声が聖堂内に響き渡る。
魅了の魔力が霧のように広がり、列席者たちの判断力を奪おうとしている。
拍手がまばらに起こり、やがてそれは狂信的な歓声へと変わっていった。
「殿下、私に誓ってください。永遠の愛を、そして私にこの国のすべてを委ねると!」
リリアがセドリック様の耳元で囁く。
セドリック様が、ゆっくりと口を開こうとしたその時。
「その誓い、異議を唱えさせていただきますわ!」
私はバルコニーの手すりに手をかけ、会場全体に響き渡る声で叫んだ。
一斉に数千の視線が、私へと注がれる。
「な、エリアナ……!? なぜここに!」
リリアの絶叫が響く中、私は優雅に、そして鮮やかにその場から飛び降りた。
魔法で落下の衝撃を殺し、大理石の床に静かに着地する。
「ご機嫌よう、皆様。そして、さようなら。泥棒猫の偽聖女さん」
私は胸元のペンダントを引きちぎり、青く輝く宝珠を高く掲げた。
真実の愛を奪還するための、最後の一撃が今、放たれようとしていた。
鏡の中に立つ私は、ローゼンバーグ家の誇りである深い青色のドレスを纏っている。
首元には、兄から託された『ローゼンバーグの涙』を隠したペンダント。
「お嬢様、本当に行かれるのですか……」
侍女のアンナが、震える手で私の髪を整えながら問いかける。
彼女の瞳には不安が滲んでいるが、私は鏡越しに微笑んで見せた。
「ええ。今日、私は私の誇りを取り戻しに行くのですわ」
「ですが、式典会場はリリア様の息がかかった騎士たちで固められています。エリアナ様は公式には招待されていない身……」
「案じなさいな。招かれざる客こそ、最高のサプライズを届けられるものですわよ」
私は最後の手袋をはめ、立ち上がった。
部屋を出ると、廊下にはカイン兄様が待っていた。
完全武装の騎士服に身を包んだ兄は、私の姿を見て短く息を吐く。
「準備はいいか、エリアナ。会場周辺の配置は終わった。リリアが連れてきた隣国の魔導師たちも、すでに僕の部下が監視している」
「流石はお兄様。手際がよろしいですわね」
「……死ぬなよ。殿下を取り戻しても、お前がいなくなっては意味がない」
「ふふ、私はしぶといのが長所ですの。忘れたのですか?」
兄と別れ、私は裏通路を通って聖堂へと向かった。
正面玄関からは、着飾った貴族たちが次々と中へと吸い込まれていく。
その中には、以前私が声をかけたセシル様たちの姿もあった。
彼女たちは、私の姿を認めると、小さく頷いて会場入りした。
聖堂の扉が重厚な音を立てて閉まる。
中からは、荘厳なパイプオルガンの音色が漏れ聞こえてきた。
ついに、即位式が始まったのだ。
私はバルコニー席へ繋がる隠し階段を登り、会場全体を見渡せる位置に身を潜めた。
眼下には、王冠を授かろうとしているセドリック様の姿がある。
その隣には、純白の聖女装束に身を包んだリリアが、勝ち誇った笑みを浮かべて立っていた。
「……ひどい顔ですわね、セドリック様」
遠目からでもわかるほど、セドリック様の顔色は土色に沈んでいる。
まるで魂を抜かれた抜け殻のように、司祭の言葉に機械的に頷いている。
リリアが彼の手を握るたび、彼の身体がビクンと強張るのが見えた。
「さあ、皆様! 新しい王の誕生ですわ! そして、私こそが彼を支える唯一の聖女!」
リリアの声が聖堂内に響き渡る。
魅了の魔力が霧のように広がり、列席者たちの判断力を奪おうとしている。
拍手がまばらに起こり、やがてそれは狂信的な歓声へと変わっていった。
「殿下、私に誓ってください。永遠の愛を、そして私にこの国のすべてを委ねると!」
リリアがセドリック様の耳元で囁く。
セドリック様が、ゆっくりと口を開こうとしたその時。
「その誓い、異議を唱えさせていただきますわ!」
私はバルコニーの手すりに手をかけ、会場全体に響き渡る声で叫んだ。
一斉に数千の視線が、私へと注がれる。
「な、エリアナ……!? なぜここに!」
リリアの絶叫が響く中、私は優雅に、そして鮮やかにその場から飛び降りた。
魔法で落下の衝撃を殺し、大理石の床に静かに着地する。
「ご機嫌よう、皆様。そして、さようなら。泥棒猫の偽聖女さん」
私は胸元のペンダントを引きちぎり、青く輝く宝珠を高く掲げた。
真実の愛を奪還するための、最後の一撃が今、放たれようとしていた。
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