祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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聖堂を満たしていた極光が、ゆっくりと収束していく。


視界が戻った人々の目に飛び込んできたのは、床に這いつくばり、激しく咳き込むリリアの姿だった。


「はぁ、はぁ……っ! な、何をしたの……。私の、私の魔力が……!」


リリアが顔を上げた瞬間、周囲の貴族たちから悲鳴に似た声が上がった。


先ほどまで可憐で清らかに見えていた彼女の顔は、どす黒い隈に覆われ、瞳は血走り、その美貌は見る影もなく枯れ果てている。


「……リリア、様? そのお姿は、一体……」


「気持ち悪い……。あんなに輝いて見えたのに、まるで魔物のようだわ」


魅了の術が解け始めた貴族たちが、次々と正気に戻っていく。


彼らの瞳から濁りが消え、自分たちが何を口走っていたのかを理解し、顔を青ざめさせて後ずさりした。


「うるさいわね! 黙りなさい! 私は聖女よ! あなたたちの主なのよ!」


リリアが叫ぶたびに、彼女の口から黒い煤のような魔力が漏れ出す。


それはもはや、人を惹きつける「魅了」ではなく、生理的な不快感を与える「毒」そのものだった。


「聖女ですって? 片腹痛いわ。その澱んだ魔力が、何よりの証拠ですわ」


私は悠然と歩み寄り、リリアを見下ろした。


「あなたの使っていた術は、人の心を縛り、魂を削り取る禁忌の魔法。聖女の奇跡とは、真逆の呪いですわよ」


「違う! 私は殿下に愛されているの! 殿下が私を選んだのよ!」


「いいえ。彼はあなたを選んだのではない。あなたの呪毒に、抗えなかっただけですわ」


私は視線を、いまだに床で呻いているセドリック様へと向けた。


彼の瞳からは毒々しい紫色の光が消え、深い碧色が戻ろうとしている。


けれど、長期間にわたる精神汚染の反動か、その表情は苦悶に満ちていた。


「セドリック……様……」


リリアが震える手で、セドリック様の裾を掴もうとする。


しかし、その手は空を切った。


「……触れるな」


低く、掠れた声がセドリック様の口から漏れた。


彼は震える腕で自身の身体を支え、ゆっくりと、けれど確かな意志を持ってリリアの手を拒絶したのだ。


「殿下……? リリアですよ? あなたの愛する、リリアですわ!」


「……黙れと言っている。私の名を、その汚らわしい口で呼ぶな」


セドリック様が顔を上げた。


その瞳には、かつての凛々しさと、そして己の過ちに対する凄まじいまでの自責の念が宿っていた。


「エリアナ……。私は、私はなんてことを……」


「セドリック様、今は無理をなさらないで。すべては、後でゆっくり伺いますわ」


私は彼に歩み寄ろうとしたが、その前にリリアが発狂したように笑い出した。


「あはは! 拒絶? この私が拒絶されるなんて! いいわ、だったら全員、この場で壊してあげる!」


リリアが懐から小さな瓶を取り出し、中にある禍々しい液体を自らの口に流し込んだ。


同時に、聖堂の地下から不気味な地鳴りが響き始める。


「逃がしませんわよ、リリア。あなたの『綻び』は、もう修復不可能なほどに広がっているのですから」


私は再び宝珠を構え、兄カインへと合図を送った。
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