祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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聖堂の床が、生き物のように脈打ち始めた。


リリアが飲み干した液体の正体は、魔力を暴走させ、周囲の生命力を強制的に吸い上げる暗黒の秘薬だった。


「あはは、あはははは! 見て、見てよエリアナ! 私の力が、こんなに溢れてくる!」


彼女の背後から、影のような触手が幾本も伸び、聖堂の壁を次々と破壊していく。


悲鳴を上げて逃げ惑う貴族たちを、私は一瞥もせずにセドリック様の前に立った。


「セドリック様、私の背中に隠れていなさい。今のあなたは、まだ魔導抵抗力が戻っていませんわ」


「エリアナ……すまない、私は……君をあんな目に遭わせた私に、守られる資格など……」


セドリック様が、苦渋に満ちた表情で私のドレスの裾を掴む。


その手はまだ震えていたが、先ほどまでの虚ろな力強さではなく、生身の人間としての温もりが宿っていた。


「資格など、後でいくらでも作ればよろしいのです。今はただ、生きて私の隣にいることだけを考えなさいな」


私は扇子を掲げ、飛んできた瓦礫を魔力の障壁で弾き飛ばした。


「お兄様! 準備はよろしくて?」


「いつでもいけるぞ、エリアナ!」


聖堂の天井を突き破り、カイン兄様率いる魔導騎士団が突入してきた。


彼らは空中から一斉に拘束魔法を放ち、リリアの影を地面に縫い付けていく。


「なっ……何よこれ! 離しなさい! 私は聖女よ、王妃になる女よ!」


「王妃ではなく、ただの罪人だ、リリア・ノエル。隣国の禁術を用い、王族を害した罪、その身で購うがいい」


カイン兄様の剣が、鋭い閃光を放ちながらリリアの喉元に突きつけられる。


しかし、リリアの瞳から正気の色が完全に消え、真っ赤な狂気だけが残った。


「罪人? 違うわ……私を認めないこの世界が間違っているのよ……全部、全部壊しちゃえばいいんだわ!」


リリアの絶叫と共に、彼女の身体から凄まじい衝撃波が放たれた。


騎士たちが次々と吹き飛ばされ、聖堂の柱が派手な音を立てて崩れ落ちる。


「エリアナ、危ない!」


セドリック様が、咄嗟に私の身体を抱き寄せ、自らの背中で瓦礫を庇おうとした。


「……っ、セドリック様!」


「大丈夫だ……これくらい。やっと……君に触れられたんだ……」


背中に衝撃を受けながらも、彼は私を離さなかった。


呪縛が解け、剥き出しになった彼の本心が、その腕の強さから伝わってくる。


「……本当に、馬鹿な人。でも、そんなあなただからこそ、私は愛したのですわ」


私は彼の腕の中で、再び『ローゼンバーグの涙』に意識を集中させた。


リリアの暴走は、彼女自身の命を燃料にしている。


このままでは、彼女ごと聖堂が吹き飛んでしまう。


「泥棒猫さん。あなたの欲しがった『真実の愛』は、そんなに薄汚れたものだったのかしら?」


私はセドリック様の腕をそっと解き、狂乱の渦の中心へと歩み出た。
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