祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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眩い光が収束し、聖堂に静寂が戻った。


視界を覆っていた白光が消え、最初に目に入ったのは、床に崩れ落ちたリリア・ノエルの姿だった。


かつての可憐な面影はどこにもない。


髪は白く枯れ、肌は生気を失い、ただの「欲に溺れた少女」がそこにいた。


「……あ、あ、ああ……」


彼女の口から漏れるのは、言葉にならない掠れた呻き声だけだ。


魅了の魔法を無理やり引き剥がされた反動で、彼女の魔力回路は完全に焼き切れていた。


「終わりましたわね、リリア・ノエル。あなたが夢見た偽りの王道は、今ここで閉ざされました」


私は一歩前に出ると、冷たく言い放った。


すると、聖堂の奥から重厚な靴音が近づいてきた。


現れたのは、これまで事態を静観せざるを得なかった陛下――セドリック様のお父様だった。


「……近衛騎士団。その女を捕らえよ。罪状は、第一王子に対する禁術の使用、および国家転覆の謀議だ」


陛下の威厳ある声に、正気に戻った騎士たちが一斉に動き出す。


リリアは力なく腕を掴まれ、引きずられるようにして立ち上がらされた。


「いや……いやぁ! 私は、私は選ばれたの! 私は聖女なのよ! 離して、離しなさい!」


「聖女だと? 聖なる力を、他者を操るために使う者がどこにいる。お前はただの、心卑しき魔女だ」


陛下の一喝に、リリアは絶望に顔を歪め、そのままズルズルと引きずられていった。


彼女が聖堂から連れ出されると、残されたのは深い沈黙と、己の過ちに震える人々だけだった。


「……エリアナ」


掠れた声で私の名を呼んだのは、セドリック様だった。


彼は今にも倒れそうな足取りで、私の前に跪いた。


「私は……何ということを。君を断罪し、あのような女の言いなりになり……」


セドリック様の大きな目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。


王太子として、公衆の面前で跪くなど、本来あってはならないこと。


けれど彼は、プライドなど欠片も持たぬように、私のドレスの裾を強く握りしめた。


「謝って済むことではないのはわかっている。君が私を、一生許さないと言っても……それでも、私は……」


「セドリック様」


私は彼の言葉を遮り、その冷たい頬を両手で包み込んだ。


そして、あえて「凛とした公爵令嬢」として、彼を見据えた。


「私は、許さないとは言いませんわ」


セドリック様が、弾かれたように顔を上げる。


「ですが、今のあなたは本当に無様ですこと。私の愛した人は、もっと背筋が伸びて、国を背負う覚悟を持った方でしたわよ?」


「エリアナ……」


「取り戻してくださいませ。私が惚れ直すような、立派な王太子の姿を。そのための償いなら、一生かけてお受けしますわ」


私は微笑んだ。


それは慈悲ではなく、これから彼を逃がさないという「宣告」でもあった。


「……ああ。誓う。命に代えても、君の誇りを取り戻してみせる」


セドリック様が私の手を取り、その手の甲に深く、熱い口づけを落とした。


私たちの間にあった歪な呪縛は消え、今、新しく、けれど懐かしい絆が結ばれようとしていた。


しかし、物語はここで終わりではない。


リリアが残した「隣国の影」は、まだ王宮の暗がりに潜んでいた。
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