祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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翌朝、王宮の会議室には重苦しい沈黙が流れていた。


リリアが残した「魔力汚染の爆弾」という難題を前に、百戦錬磨の重臣たちも頭を抱えている。


「……エリアナ、帝国に乗り込むと言ったが、正気か? 宣戦布告と取られかねないぞ」


セドリック様が、心配そうに私を見つめる。


彼の顔色は昨日より幾分良くなっているが、その瞳には焦燥の色が隠せていない。


「あら、セドリック様。公爵令嬢が隣国へお茶会のお誘いに行くのが、どうして宣戦布告になりますの?」


私は扇子で口元を隠し、くすりと笑った。


「お茶会だと? この状況でか?」


「ええ。名目は『王太子殿下の即位を祝う、戦勝記念式典への招待』ですわ。リリア・ノエルという帝国の駒を完全に潰したという報告を、あえて華やかな招待状に添えて送るのです」


カイン兄様が、膝を打って身を乗り出した。


「なるほど。帝国側はリリアが失敗したことは察しているだろうが、彼女が『生きた爆弾』として機能しているかは確認したいはずだ」


「その通りですわ、お兄様。こちらから情報を小出しにすれば、彼らは必ず確認のために『特使』を送ってきます。爆弾の信管を外せる、高位の魔導師をね」


私の提案に、会議室の空気がわずかに変わった。


敵を待つのではなく、敵の方から「解決策」を持ってこさせる。


それが私の狙いだった。


「……だが、エリアナ。それは危険な賭けだ。もし帝国が特使ではなく、軍を送ってきたらどうする?」


「その時は、お兄様率いる魔導騎士団の出番ですわ。でも、彼らはそんな無鉄砲なことはしません。リリアの秘薬は、彼らにとっても貴重な研究成果のはず。証拠を隠滅するために、まずは穏便に接触してくるはずですわ」


私は立ち上がり、窓の外に広がる王都を見渡した。


「セドリック様。あなたはここで、リリアによって乱された国政を立て直してください。民を安心させ、王室の威信を取り戻す。それがあなたの仕事ですわ」


「……君一人に、重荷を背負わせるわけにはいかない」


セドリック様が私の手を取り、真剣な眼差しで訴えかける。


「重荷だなんて。私はただ、私の婚約者をたぶらかした連中に、きっちりと落とし前をつけさせたいだけですの」


私は彼の手に自分の手を重ね、力強く握り返した。


「泥棒猫を送り込んだ飼い主には、それ相応の代償を払っていただきますわ」


その日の午後、私は地下深くにある特別監獄へと足を運んだ。


魔力を封じられたリリアが、ボロボロの衣服を纏って蹲っている。


「……何の用よ、エリアナ。私を笑いに来たの?」


リリアの声は、もはやかつての愛らしさなど微塵もなく、枯れ果てた老婆のように掠れていた。


「いいえ。あなたに一つ、教えて差し上げようと思って。あなたの愛する帝国へ、招待状を送りましたわ」


リリアが弾かれたように顔を上げる。


「……なんですって? 助けが、助けが来てくれるのね!?」


「どうかしら。彼らが連れてくるのは、あなたを救うための騎士か……あるいは、口を封じるための死神か」


私は冷徹な視線で、かつての「聖女」を見下ろした。


「楽しみにしていてくださいな。あなたの『真実の愛』が、どれほど脆いものだったか、その目で確かめることになるのですから」


私は背を向け、地下牢を後にした。


反撃の招待状は、すでに帝国の国境を越えようとしていた。
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