祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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「……消えた、ですって?」


静まり返った庭園に、私の冷ややかな声が響いた。


魔法を封じ、何重もの結界を張り巡らせたはずの特別監獄。


そこから、魔力を失ったはずの女が忽然と姿を消すなど、普通に考えればあり得ない話だ。


「ああ。見張りの騎士たちは眠らされていた。強力な睡眠薬だ。結界も魔法的な破壊ではなく、物理的な手段……つまり、合鍵で開けられている」


カイン兄様が、苦々しく報告を続ける。


セドリック様の顔色が、怒りで瞬時に真っ赤に染まった。


「内部に裏切り者がいるというのか……! 私が自ら選抜した近衛騎士団の中に!」


「落ち着きなさい、セドリック様。怒鳴っても彼女は戻りませんわ」


私は震えるセドリック様の手を優しく、しかし強く握りしめた。


「お兄様。眠らされていた騎士たちの中に、不審な者はいませんでしたか?」


「……一人、行方がわからなくなっている。リリアの取り巻きだった若手貴族の縁者だ。術が解けた後も、密かに彼女に心酔していたのかもしれない」


私は冷たく鼻で笑った。


魅了が解けてなお、あの女の毒に中てられている馬鹿者がいたとは。


「セドリック様、今すぐ全関門を封鎖してください。それから、先日の帝国の特使……ザハール侯爵の宿舎を包囲なさいな」


「侯爵か。だが、彼はすでに国境へ向けて出発したはずだぞ?」


「だからこそですわ。あのような重荷、普通なら置いていくはず。それをわざわざ連れ出したということは、リリア・ノエルにはまだ『利用価値』があるということですわ」


私は庭園を後にし、足早に王宮の執務室へと向かった。


背後でセドリック様が鋭く騎士たちに指示を飛ばす声が聞こえる。


執務室に入ると、私はデスクの引き出しから一枚の地図を広げた。


「お兄様、ザハール侯爵の馬車が通るルートで、最も待ち伏せに適した場所はどこかしら?」


「……国境近くの『嘆きの断崖』だろうな。あそこを越えれば、帝国の勢力圏だ。今の時間なら、全力で馬を飛ばせば夜明け前に追いつける」


「よろしい。セドリック様、行きましょう」


私が振り返ると、セドリック様はすでに剣を腰に差し、覚悟を決めた表情で立っていた。


「ああ。今度こそ、私の手で決着をつける。リリアを連れ戻し、背後にいる帝国に引導を渡してやる」


「いいえ、セドリック様。引導を渡すのは私ですわ。私の婚約者を泥棒し、国を汚した落とし前……利子をつけて返していただきます」


私は不敵に微笑み、騎乗用のドレスに着替えるために自室へと走った。


夜の闇を切り裂き、私たちは再び戦場へと赴く。


リリア・ノエル。


あなたが逃げられる場所など、この世界のどこにもありませんのよ。
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