祝福の果てに断罪された悪役令嬢ですが?

きららののん

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柔らかな朝の光が、王宮の寝室に差し込んでいた。


「……セドリック様。いつまで眠っていらっしゃるのですか? もう公務の時間は過ぎておりますわよ」


私はベッドの天蓋を揺らし、隣で心地よさそうに眠る夫――セドリック様の頬をつついた。


「うーん……。あと五分、いや、あと一時間だけ……。エリアナ、君の隣は温かくて離れがたいんだ」


「お聞きになりまして? 一国の王太子が、朝から愛の言葉を言い訳に遅刻だなんて。他の方に聞かれたら、また私が『殿下をたぶらかす悪女』だと言われてしまいますわ」


私は呆れたふりをして溜息をついたが、セドリック様は気に留める様子もなく、私の腰を強く抱き寄せた。


「いいじゃないか、事実なのだから。私は君に、一生たぶらかされていたいんだ。……それとも、また叱ってくれるかい?」


「……本当に、手のつけられない甘えん坊さんですこと」


私は彼の碧い瞳を見つめ、少しだけ降参するように、その額にそっと唇を寄せた。


あの激動の日々から一年。


リリア・ノエルは、魔力を完全に封じられたまま、帝国の最果てにある魔導鉱山で一生罪を贖うことになったという。


彼女を助けようとする者は、もはやこの世界のどこにもいない。


一方で、私たちは今、かつてないほどに強固な絆で結ばれていた。


私が率直に意見を述べ、セドリック様がそれを真摯に受け止める。


その「型破りな」夫婦の姿は、最初は貴族たちの間で物議を醸したが、今では国の新しい活力として民衆に熱狂的に受け入れられている。


「エリアナ、見てごらん。今日は素晴らしい快晴だ」


セドリック様に連れられてバルコニーへ出ると、眼下には活気に満ちた王都の街並みが広がっていた。


私たちが姿を現すと、広場にいた人々が一斉に帽子を投げ、歓声を上げた。


「エリアナ様! 今日も殿下を厳しく教育してください!」


「真実の王妃様、万歳!」


「……ふふ。教育、ですって。どうやら私の評判は、すっかり『厳しい奥方』で定着してしまったようですわね」


「ははは! いいじゃないか、それこそが君の魅力だ。君のその真っ直ぐな言葉が、私を、そしてこの国を救ってくれたのだから」


セドリック様が私の手を取り、民衆の前で堂々とその甲に口づけを落とした。


私は少しだけ顔を赤らめながらも、背筋を伸ばし、公爵令嬢……いえ、次期王妃としての最高の微笑みを返した。


一度は祝福の最後で断罪され、地獄を見た。


けれど、私は諦めなかった。


泥棒猫に奪われたものは、自らの手で、倍にして取り返せばいい。


「セドリック様。覚悟はできていまして?」


「ああ。君と共に歩む未来なら、どんな困難も怖くない」


「よろしい。では、まずはその寝癖を直すところから始めましょうか」


私の言葉に、セドリック様が吹き出し、私もつられて声を立てて笑った。


私たちは、繋いだ手を二度と離すことはない。


永遠に続く、真実の祝福。


その光の中で、私たちは新しい物語の一歩を踏み出した。
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