断罪されてたからってなんなんですの?

きららののん

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「……それで? この小娘が、我が帝国の財布を握る『経済顧問』だというのか?」


重厚な円卓が並ぶ帝宮の会議室。


並み居る髭面の重臣たちが、わたくしを疑いの目で見つめていました。


わたくし、リディアは、そんな視線を柳に風と受け流し、手元の資料を優雅にめくりました。


「小娘、ではなくリディアとお呼びになって。それから閣下、その資料の三ページ目、物流コストの計算が五パーセントほど過大に計上されていますわよ。予備費という名の『裏金』にしては、少しばかり杜撰(ずさん)ですわね」


「なっ……!? き、貴様、何を……!」


「あら、図星でしたかしら? わたくし、数字の嘘を見抜くのだけは得意なんですの」


わたくしが微笑むと、隣に座るサイラス様が、待ってましたと言わんばかりに机を叩きました。


「聞いたか。リディアが『無能』だと言った奴は、今すぐこの場で全財産を没収し、裸で国境まで放り出してやろう。……続けろ、リディア。次は何を壊す?」


「壊すのではありませんわ、陛下。作り直すのです」


わたくしは立ち上がり、巨大な帝国の地図を指差しました。


「まず、この帝国で独占されている『魔力銀』の流通経路をすべて開放します。そして、わたくしの商会を通じて周辺国に一括販売いたしますわ。これにより、利益は昨年度の三倍。さらに、王国へ流れていた余計な関税をカットすれば……」


わたくしが淀みなく説明を続けるうちに、先ほどまで不満げだった重臣たちの顔色が、見る見るうちに青から白、そして「感嘆」へと変わっていきました。


「お、驚いた……。これほどの規模の計算を、暗算で……?」


「しかも、王国の弱点を完璧に突き、帝国の利益だけを最大化している。……恐ろしい娘だ」


「あら、お褒めいただき光栄ですわ。断罪されてたからって、脳みそまで置いてきたわけではありませんもの」


会議が終わる頃には、重臣たちはわたくしの前に跪き、「リディア様、ぜひ我が部門の予算も見てください!」と縋り付く有様でした。


「リディア、よくやった。ご褒美だ。……さあ、俺の膝に来い」


「陛下、公務中ですわよ。そんなところで仕事ができるわけがありませんでしょう」


「できると言っているだろう。俺の膝はお前専用の特等席だ。さあ、遠慮するな」


サイラス様は、逃げようとするわたくしの腰をがっちりと捕まえ、そのまま自分の膝の上へと引き揚げました。


「……っ。陛下、重臣の皆様が見ておりますわ!」


「気にするな。彼らは今、お前がもたらす『莫大な利益』の計算で忙しくて、周りが見えていない」


確かに、重臣たちは鼻血を出しそうな勢いで書類に齧り付いており、こちらを一瞥だにしません。


「リディア。お前がこの国を豊かにし、俺がお前を愛で満たす。完璧な分担作業だと思わないか?」


「……一方的な搾取の間違いではありませんこと?」


わたくしが溜息をつくと、サイラス様は嬉しそうにわたくしの髪に唇を寄せました。


その頃、かつての王国では。


わたくしが止めた「魔力銀」の流通のせいで、王宮内の魔導灯がすべて消え、アルフォンス殿下が暗闇の中で「お化けが出たー!」と叫んでいるという報告が届きましたわ。


経済を知らないということは、本当に恐ろしいことですわね。
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