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「皆様、お聞きなさい! わたくしこそが、この国を救う真の聖女マリアンヌですわ!」
王国の、ひび割れた石畳が広がる中央広場。
ボロボロのシーツをマントのように羽織ったマリアンヌ様が、即席の演壇(という名の木箱)の上で声を張り上げていました。
集まったのは、空腹で目が血走った市民や、職を失った元役人たちです。
「わたくしが祈れば、空からパンが降り、川はワインに変わります! リディア様のような冷酷な女に騙されてはいけませんわ! あの方は魔女! わたくしの聖なる力を盗んで、隣国へ売り払ったのです!」
「……まあ。アン、あの方の想像力だけは、帝国の予算規模に匹敵しますわね」
その光景を、わたくしリディアは「遠隔投影魔導具」のスクリーン越しに、別邸のテラスから眺めておりました。
隣では、サイラス様が「やはりあの広場ごと消滅させるべきだ」と、物騒な魔力を指先に集めていらっしゃいます。
「陛下、止めてくださいまし。せっかくわたくしが、あの方のために『特別な舞台装置』を用意したのですから」
わたくしは手元のスイッチ……もとい、魔力起動符をそっと撫でました。
広場では、マリアンヌ様がさらに調子に乗って叫びます。
「さあ、わたくしの聖なる祈りを見せますわ! 出よ、黄金の雨!」
彼女が天に手をかざした瞬間。
わたくしが仕掛けておいた「真実を映す魔導具」が作動しました。
広場の上空に巨大な光の幕が広がり、そこには……かつて王宮の隠し部屋で、マリアンヌ様がわたくしの宝石箱から指輪をくすね、懐に入れようとして指を挟んで悶絶する姿が映し出されました。
『いたっ! この指輪、なんでこんなに重いのよ! リディアの奴、嫌がらせで呪いでもかけてるんじゃないかしら!』
映像の中のマリアンヌ様は、今の清楚な(?)フリとは似ても似つかぬ、悪鬼のような形相で毒づいています。
「……な、何よこれ! 誰よ、こんな悪意のある捏造をしたのは!」
『いいわ、リディアを追い出せば、この宝石も全部わたくしのもの。アルフォンスをたぶらかすなんて、赤子の手をひねるより簡単だわ。あのバカ、わたくしが泣けば何でも信じるんですもの』
広場に集まった人々が、一斉に静まり返りました。
そして、誰かがボソリと呟きました。
「……聖女じゃねえ。ただの、泥棒猫じゃねえか」
「俺たちの税金で買ったドレスを、こいつは裏で切り刻んで遊んでたのか?」
「黄金の雨なんて降らねえよ! 降ってきたのは、こいつの汚い本性だけだ!」
怒れる群衆が、一歩、また一歩と演壇に詰め寄ります。
マリアンヌ様は顔を真っ青にして、ガタガタと震え出しました。
「ち、違うの! これは魔女リディアの罠よ! 助けて、アルフォンス様ぁ!」
「……マリアンヌ、君には失望したよ」
群衆の後ろから、犬のビスケットを齧りながら現れたアルフォンス殿下が、力なく首を振りました。
「君のせいで、私はリディアという最高の……いや、最高に便利な財布を失ったんだ。……衛兵! この女を捕らえろ! ついでに、私の夕食のパンも探してこい!」
「嫌あああ! 離して! わたくしはヒロインなのよ! こんな結末、認めませんわ!」
引きずられていくマリアンヌ様の叫び声と共に、スクリーンの映像は静かに消えました。
わたくしは、ふうと溜息をついて紅茶を啜りました。
「断罪されてたからって、あんなに分かりやすい自爆をするなんて。わたくし、少しだけ舞台を整えすぎましたかしら?」
「いや、リディア。最高に愉快な喜劇だった。……さて、害虫の駆除も終わったことだ。次は、俺たちの結婚式の打ち合わせをしよう。とりあえず、帝都の全市民にダイヤモンドを配る準備はさせてある」
「……陛下、今すぐその予算を回収してきてくださいまし」
わたくしの「平穏な隠居生活」は、どうやら王宮の崩壊と共に、新たな「爆買い皇帝との戦い」へと突入したようですわ。
王国の、ひび割れた石畳が広がる中央広場。
ボロボロのシーツをマントのように羽織ったマリアンヌ様が、即席の演壇(という名の木箱)の上で声を張り上げていました。
集まったのは、空腹で目が血走った市民や、職を失った元役人たちです。
「わたくしが祈れば、空からパンが降り、川はワインに変わります! リディア様のような冷酷な女に騙されてはいけませんわ! あの方は魔女! わたくしの聖なる力を盗んで、隣国へ売り払ったのです!」
「……まあ。アン、あの方の想像力だけは、帝国の予算規模に匹敵しますわね」
その光景を、わたくしリディアは「遠隔投影魔導具」のスクリーン越しに、別邸のテラスから眺めておりました。
隣では、サイラス様が「やはりあの広場ごと消滅させるべきだ」と、物騒な魔力を指先に集めていらっしゃいます。
「陛下、止めてくださいまし。せっかくわたくしが、あの方のために『特別な舞台装置』を用意したのですから」
わたくしは手元のスイッチ……もとい、魔力起動符をそっと撫でました。
広場では、マリアンヌ様がさらに調子に乗って叫びます。
「さあ、わたくしの聖なる祈りを見せますわ! 出よ、黄金の雨!」
彼女が天に手をかざした瞬間。
わたくしが仕掛けておいた「真実を映す魔導具」が作動しました。
広場の上空に巨大な光の幕が広がり、そこには……かつて王宮の隠し部屋で、マリアンヌ様がわたくしの宝石箱から指輪をくすね、懐に入れようとして指を挟んで悶絶する姿が映し出されました。
『いたっ! この指輪、なんでこんなに重いのよ! リディアの奴、嫌がらせで呪いでもかけてるんじゃないかしら!』
映像の中のマリアンヌ様は、今の清楚な(?)フリとは似ても似つかぬ、悪鬼のような形相で毒づいています。
「……な、何よこれ! 誰よ、こんな悪意のある捏造をしたのは!」
『いいわ、リディアを追い出せば、この宝石も全部わたくしのもの。アルフォンスをたぶらかすなんて、赤子の手をひねるより簡単だわ。あのバカ、わたくしが泣けば何でも信じるんですもの』
広場に集まった人々が、一斉に静まり返りました。
そして、誰かがボソリと呟きました。
「……聖女じゃねえ。ただの、泥棒猫じゃねえか」
「俺たちの税金で買ったドレスを、こいつは裏で切り刻んで遊んでたのか?」
「黄金の雨なんて降らねえよ! 降ってきたのは、こいつの汚い本性だけだ!」
怒れる群衆が、一歩、また一歩と演壇に詰め寄ります。
マリアンヌ様は顔を真っ青にして、ガタガタと震え出しました。
「ち、違うの! これは魔女リディアの罠よ! 助けて、アルフォンス様ぁ!」
「……マリアンヌ、君には失望したよ」
群衆の後ろから、犬のビスケットを齧りながら現れたアルフォンス殿下が、力なく首を振りました。
「君のせいで、私はリディアという最高の……いや、最高に便利な財布を失ったんだ。……衛兵! この女を捕らえろ! ついでに、私の夕食のパンも探してこい!」
「嫌あああ! 離して! わたくしはヒロインなのよ! こんな結末、認めませんわ!」
引きずられていくマリアンヌ様の叫び声と共に、スクリーンの映像は静かに消えました。
わたくしは、ふうと溜息をついて紅茶を啜りました。
「断罪されてたからって、あんなに分かりやすい自爆をするなんて。わたくし、少しだけ舞台を整えすぎましたかしら?」
「いや、リディア。最高に愉快な喜劇だった。……さて、害虫の駆除も終わったことだ。次は、俺たちの結婚式の打ち合わせをしよう。とりあえず、帝都の全市民にダイヤモンドを配る準備はさせてある」
「……陛下、今すぐその予算を回収してきてくださいまし」
わたくしの「平穏な隠居生活」は、どうやら王宮の崩壊と共に、新たな「爆買い皇帝との戦い」へと突入したようですわ。
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