断罪されてたからってなんなんですの?

きららののん

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「……アン。わたくし、今朝から窓の外に見える『巨大な黄金のリディア像』が気になって、朝食のクロワッサンが喉を通りませんの。あれ、いつの間に建ちましたの?」


帝宮の最上階、皇后専用の寝室。


わたくし、リディアは、寝起きのコーヒーを啜りながら、眼下に広がる帝都の景色を指差しました。


そこには、朝日に照らされて神々しく(物理的に)輝く、全高五十メートルはあろうかというわたくしの立像がそびえ立っています。


「リディア様、おはようございます。あれは昨夜、サイラス陛下が『リディアが目覚めた時、自分の美しさを再確認できるように』と、魔導建築ギルドを総動員して突貫工事で建てさせたものでございます」


「……陛下。わたくし、鏡を見るだけで十分ですわ。あんな巨大なもの、鳥の落とし物の標的になるだけではありませんこと?」


「ご安心ください。像には常時『自動洗浄結界』と『威圧:カラス除け』が張られております。ちなみに、像の瞳の部分は最高級のサファイアで作られており、夜間は帝都を照らす灯台の役割も果たすそうですわ」


アンが淡々と答える中、寝室の扉が「バァン!」と景気良く開け放たれました。


「リディア! 起きたか! 今日も世界一美しいな! ああ、その寝癖すら、俺にとっては銀河の渦より尊い!」


軍服を半分脱ぎ捨てたような格好で飛び込んできたのは、わたくしの愛すべき、そして致命的に距離感のバグった夫、サイラス様です。


彼はわたくしの返事も待たずにベッドへ飛び込み、わたくしの腰をがっしりとホールドしました。


「陛下! 重いですわ! それから、まだ公務の時間ではありませんでしょう!」


「公務など、お前を愛でる時間に比べれば塵に等しい。……リディア、今朝の像は見たか? お前の気高さを表現するために、純金に魔力を混ぜて特別に輝かせたんだ」


「見ましたわ。眩しすぎて、カーテンを開けた瞬間に目が焼けそうになりましたわよ。……すぐに撤去、あるいは『避雷針』に改造してくださいまし」


「……お前がそう言うなら、次は銀で作らせるか」


「素材の問題ではありませんわよ」


わたくしが溜息をつきながら彼の頬をつねると、サイラス様は嬉しそうに目を細め、わたくしの指先に口づけを落としました。


「リディア。お前が俺の隣にいるだけで、帝国は豊かになり、俺の心は満たされる。……昨日、王国の残党が『リディア様を返せ』という嘆願書を送ってきたが、無視してよかったか?」


「返せ、ですの? あの方たち、わたくしをゴミのように捨てたこと、もうお忘れになったのかしら」


「ああ。どうやら、飢えと寒さで記憶の一部が消滅したらしい。……安心しろ、返信として『お前たちの国の土地を、リディア専用の靴箱にするために買い取る』という契約書を送っておいた」


「……陛下、わたくしの靴は、国一つ分もございませんわよ」


「これから増やすんだ。毎日百足ずつ、世界中の名職人に作らせているからな」


サイラス様の独占欲と過保護ぶりは、結婚してからさらに「宇宙規模」へと進化しておりました。


でも不思議なことに、以前のような「重苦しさ」は感じません。


断罪されたあの日。わたくしはただ一人で戦う覚悟を決めましたけれど。


今は、わたくしがどれだけ皮肉を言っても、どれだけ予算を削っても、全力で愛し返してくるこの「バカな男」がいる。


「……サイラス様。わたくし、今日の午後は市場の視察に行きたいのですけれど」


「ダメだ。お前の足を地面につかせるわけにいかない。……よし、帝都の道をすべて『雲』に変える魔導具を開発させよう」


「……普通に歩かせてくださいまし」


わたくしは微笑みながら、彼の胸にそっと頭を預けました。


断罪されてたからって、なんなんですの。


わたくしは今、世界で一番贅沢で、世界で一番賑やかな「本当の幸せ」の真っ只中にいますのよ。


「アン、今夜の晩餐はフォアグラを二倍にしてちょうだい。……陛下を黙らせるために、口に押し込んで差し上げますわ」


「かしこまりました。じつにリディア様らしい、愛に満ちた(暴力的な)解決策ですわね」


わたくしたちの騒がしい朝は、帝都の黄金像の輝きと共に、今日も華やかに幕を開けるのでした。
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