面倒くさがり悪役令嬢は、追放先でのんびりしたいのに!

きららののん

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王都を出発して、揺れる馬車に身を任せること十日。
わたくしは、ほとんどの時間を睡眠に費やしていた。
これほど誰にも邪魔されず、心ゆくまで眠れたのは何年ぶりだろうか。
辺境暮らしは、始まる前からすでに最高だった。

「レティシア様、まもなくゼンドラーの館に到着いたします」

御者の声で、ようやく重い瞼を開ける。
窓の外には、荒涼とした土地が広がっていた。
ボロ屋敷を想像していたが、視界の先に見えてきた館は、意外にもしっかりとした石造りの建物だった。

(あら、思ったより立派ですわね。これなら快適に寝られそうですわ)

馬車が止まり、扉が開かれると、一人の老人が深々と頭を下げていた。
白髪をきれいに撫でつけ、古いが清潔な執事服を身につけている。

「ようこそおいでくださいました、レティシア様。わたくし、この地の領主代行と執事を兼務しております、セバスチャンと申します。以後、お見知りおきを」

「ええ、よろしくてよ、セバス」

わたくしは馬車から降り立ち、軽く会釈を返す。
セバスは、わたくしの荷物がトランク一つしかないことに少し驚いたようだったが、すぐに表情を戻した。

「長旅でお疲れでございましょう。まずはお部屋へご案内いたします。その後、この領地の現状について、ご説明を……」

「結構ですわ」

わたくしは、セバスの言葉を遮った。

「説明は後で結構。長旅で疲れましたの。わたくしは今すぐ、ベッドという文明の利器と再会したい気分なのです。さあ、寝室へ案内なさい」

「は、はあ……」

呆気にとられるセバスを尻目に、わたくしはさっさと館の中へ足を踏み入れた。
案内された寝室は、簡素だが掃除が行き届いており、大きな天蓋付きのベッドが鎮座している。

(完璧ですわ……!)

わたくしは、着ていたドレスを脱ぎ捨てるのももどかしく、そのままベッドへとダイブした。
ふかふかの羽根布団の感触。
ああ、幸せとはこのことですわね。
わたくしの理想のぐうたらライフが、今、幕を開けたのだ。
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