面倒くさがり悪役令嬢は、追放先でのんびりしたいのに!

きららののん

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一括陳情会の結果、領地の最重要課題は「水路の老朽化」だと判明した。
あちこちで水漏れが起き、農作物の収穫量にも影響が出始めているという。

書斎で報告書を眺めていたセバスが、深いため息をついた。

「これは大規模な工事が必要ですな。領内の男手を総動員しても、少なくとも数年はかかりましょう…」

「数年?」

わたくしは、ソファで寝転がりながら聞き返した。

「冗談でしょう? そんなに長く、この面倒事が続くなんて耐えられませんわ」

工事が始まれば、進捗報告だの、予算会議だの、面倒事のオンパレードになるに決まっている。
そんなのは絶対に御免だ。

わたくしは、むくりと起き上がった。

「セバス。わたくしがやりますわ」

「は? レティシア様が、何を…?」

わたくしはセバスと、いつの間にか部屋の隅にいたアッシュを伴い、領地を一望できる丘の上へと向かった。
眼下には、古びて蛇行した水路が、まるで老いた蛇のように横たわっている。

「一度で済ませますわ。その方が、コストパフォーマンスもよろしいでしょう」

わたくしは両手を広げ、体内の魔力を練り上げていく。
びりびりと空気が震え、足元の小石がカタカタと揺れ始めた。
セバスが恐怖に顔を引きつらせ、アッシュが初めて目を大きく見開くのが視界の端に映る。

「創造の土よ、古きを壊し、新しき理を紡げ!」

わたくしが詠唱を終えると、地面から眩い光がほとばしった。
轟音とともに古い水路が土に還り、次の瞬間、まるで設計図でも引いたかのように、合理的で美しい新たな水路が、領地の隅々まで一瞬にして形成されていく。

魔法で全魔力の三割ほど使ってしまったが、これで数年分の面倒事が消えたのだ。
最高の取引だったと言えるだろう。

「ふぅ……これで当分、水路のことで呼び出されることはありませんわね」

唖然とする二人を尻目に、わたくしは満足のため息をつき、早く館に帰って二度寝しよう、と心に決めたのだった。
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