面倒くさがり悪役令嬢は、追放先でのんびりしたいのに！

24

すべてを知った。
リリアンの嘘も、レティシアの真実も。
そして、自分が犯した、あまりにも愚かな過ちも。

絶望の淵に立たされたエドワードは、最後の望みを託し、衝動的に行動を起こした。
誰にも行き先を告げず、数人の側近だけを連れて、王都を飛び出した。
ただひたすらに、北の辺境、ゼンドラー領を目指して馬を走らせた。

数日後、彼がたどり着いたゼンドラーは、噂に違わぬ活気と豊かさに満ちていた。
その光景に胸を打たれながら、彼はレティシアのいる館にたどり着く。

館の庭では、一人の女性が、気持ちよさそうに木陰の椅子に座り、うたた寝の準備をしているところだった。
あの頃と何も変わらない、優雅で、そしてどこか面倒くさそうな彼女の姿。
レティシアだった。

「―――レティシアッ！」

エドワードは馬から転がり落ちるように降りると、彼女のもとへ駆け寄った。
そして、驚いて目を開けた彼女の前で、ためらうことなく、泥だらけのまま土下座をした。

「私が、私が愚かだった！　君こそが、この国に必要な女性だ！　君の偉大さに、私は気づけなかったんだ！」

彼は、必死の形相で叫んだ。

「どうか、どうか王都に戻ってきてくれ！　そして、もう一度、私の妃になってほしい！　お願いだ！」

復縁の懇願。
かつて自分が婚約を破棄した相手への、みっともない命乞い。
そんな元婚約者の姿を、レティシアは、心底どうでもよさそうな、冷めた目で見下ろしていた。
そして、やれやれとでも言うように、深くて長いため息を、一つ、ついたのだった。