​『王太子とついで私も悪いですって?!』

きららののん

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翌朝、メテオの荒野に昇った太陽は、全てを平等に焼き尽くす無慈悲な黄金の円盤であった。

私は、昨夜ティアが必死に磨き上げた(というより、私の罵声を浴びながら煤を落とした)日傘を差し、マクシミリアン様の隣を歩いていた。


「……マクシミリアン様。この地の人々の視線、まるで飢えた狼の群れの中に放り込まれた仔羊を見るかのようですわね」


「ほう、仔羊か。誰がこれほどまでに気位の高い、毒を隠し持った羊を好んで食べるというのだ?」


「あら、失礼な。私はいつだって、か弱く、守られるべき淑女ですわ。……ついでに、少しばかり気が強いだけです」


「その『ついで』が、国家を一つ滅ぼすほど重いことを自覚したまえ」


私たちは、城下にある唯一の集落——「市の跡」へと向かっていた。

そこには、生活の匂いというよりも、死を待つ者の倦怠感が漂っている。


「おい、そこの商人。その、泥のついた不格好な芋が金貨一枚だと? 貴様の脳は、その芋よりも発酵しているようだな」


マクシミリアンの声が、埃っぽい市場に冷たく響いた。

呼び止められた商人は、卑屈な笑みを浮かべながら、それでも欲に塗れた瞳でマクシミリアンを見上げた。


「旦那様、ここは辺境でさあ。王都の物価を持ち込まれちゃ困ります。生きたければ、私の言い値で買うしかねえんですよ」


「……なるほど。需要と供給の極北、というわけか。面白い」


マクシミリアンは、ふっと目を細めた。

それは、彼が何かを徹底的に破壊しようとする時の、最も美しい表情であった。


「エレオノーラ。君なら、この『搾取』という名の暴挙を、どう定義する?」


「そうですわね……。私ならば、『無能が振るう、最も卑俗な権力』と呼びますわ。あまりに品性が欠けていて、吐き気がいたしますこと」


私は扇を広げ、商人の顔から漂う不潔な空気を遮断した。


「おい、あんたら! 格好ばかり立派だが、腹が減ればプライドなんて糞食らえだぜ!」


商人が声を荒らげると、周囲の浮浪者たちがゆっくりと立ち上がり、私たちを取り囲み始めた。


「マクシミリアン様。少々、雲行きが怪しくなってまいりましたわね。私のドレスが汚れるのは、万死に値する罪ですけれど?」


「安心したまえ。君のドレスを汚す前に、彼らの『常識』を塗り替えてやろう」


マクシミリアンは、懐から一通の書状を取り出した。

それは、昨日リュシアンの私物から「ついでに」持ち出した、王家直轄領の管理権限書であった。


「聞け、愚か者ども。私は今日から、この地のすべての取引を統制する。第一の法は——『私の気分を害する者は、その呼吸を贅沢品と見なし、相応の税を課す』ことだ」


「は、はあ!? 何を言ってやがる!」


「この芋の適正価格は、銀貨三枚だ。だが、貴様が私を不快にさせたため、没収とする。代わりに、貴様には明日から、私の城の石畳を舐めて清掃する権利を授けよう」


「ふざけるな! やっちまえ!」


商人の合図で浮浪者たちが襲いかかろうとした、その瞬間。

マクシミリアンが指を鳴らすと、背後の影から昨日助けたはずの「男」たちが現れた。

彼らは、昨夜マクシミリアンから与えられた僅かな食糧と、それ以上に「恐怖」という名の秩序を与えられた新参の私兵であった。


「無駄な抵抗はやめておきなさい。マクシミリアン様は、情けはかけませんが、契約は守る方ですわ」


私は、騒乱の予感に震える民衆を見据え、朗々と告げた。


「あなたたちが今日まで奪い合ってきたのは、ただの泥ですわ。明日からは、マクシミリアン様の『悪意』という名の秩序の下で、本物のパンを奪い合う権利を差し上げます」


沈黙が、市場を支配した。

怒りでも、感謝でもない。

それは、圧倒的な「強者」に出会った時にのみ生じる、生存の本能に近い服従であった。


「……エレオノーラ。君の煽り方は、やはり一流だな。まるで舞台の悪女そのものだ」


「お褒めに預かり光栄ですわ。ついでに、この汚らわしい市場の再建計画も、私の手帳に書き留めておきましたから」


「ふ。搾取を憎む者が、最も効率的に搾取のシステムを構築するとは。実に皮肉で、愉快な話だ」


私たちは、芋一つ買うことなく、しかし集落の「心臓」を握りしめて城へと引き返した。

恥の多い生涯の、これが第二章。

私たちはこの荒野を、王都よりも冷酷で、そして美しい地獄へと変えていくのだ。
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