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王都の広場を埋め尽くしたのは、かつて「聖女」の名を熱狂的に叫んでいた民衆の群れであった。
しかし、その熱狂は今や、どす黒い疑惑と飢えへの苛立ちに取って代わられている。
私は、塔の影に設えられた特等席で、扇を弄びながらその様子を眺めていた。
「……マクシミリアン様。ご覧になって。あの方々の瞳、まるで舞台の結末を急かす、性格の悪い観客のようですわ」
「当然だ。信じていたものに裏切られたと知った時、人間は最も残酷な獣に変わる。……さあ、主役の登場だ」
マクシミリアン様が合図を送ると、鉄格子の嵌まった馬車から、白い衣を纏ったクロエ様が引き摺り出された。
その白衣は汚れ、かつての神々しさは微塵も感じられない。
「……嘘よ。こんなの、何かの間違いだわ! 私、皆様のために祈り続けていたのに!」
クロエ様が壇上で叫ぶ。
しかし、その声は民衆の冷ややかな沈黙に吸い込まれていった。
私は立ち上がり、漆黒のドレスの裾を翻して壇上へと歩み寄った。
私の独白(モノローグ)は、今や王都の空気を切り裂く、最も鋭利な短刀となる。
私の内なる文豪が、この喜劇を「偽りの光が暴かれる正午」と記し、冷酷な筆致を走らせている。
「クロエ様。往生際が悪うございますわ。ついでに申し上げれば、あなたのその『祈り』の代金が、どこから支払われていたか、皆様にもお伝えしなくては」
私は、ティアから受け取った一束の書状を、高く掲げた。
「皆様、お聞きなさい! この聖女様が配っていたパンの代金……それは、マクシミリアン様が追放される際、彼女が『ついでに』私物化した王太子の私有財産を換金したものでしたのよ」
広場に、凍り付くような衝撃が走った。
「……え? 私たちのパンは、聖女様の奇跡ではなかったのか?」
「マクシミリアン殿下から盗んだ金で、恩を売っていたというのか!」
怒号が、波のように押し寄せる。
「ち、違うわ! 私はただ、有効に活用しただけで……!」
「有効に活用、ですって? まあ。それを世間では『横領』、あるいは『窃盗』と呼びますの。ついでに、その帳簿を改竄するために雇った会計士の証言も、ここに揃っておりますわ」
私は、絶望に顔を歪めるクロエ様の耳元に、死神のような囁きを届けた。
「さあ、聖女様。最後のお祈りをしてはいかが? 誰も助けに来ない、この孤独な地獄の中で」
「……あああああ!」
クロエ様は崩れ落ち、頭を抱えて泣き叫んだ。
その姿に、かつての慈悲深さはなく、ただ己の罪から逃げ場を失った矮小な人間だけがそこにいた。
「マクシミリアン様。偶像が壊れる音、案外、安っぽい音がいたしますのね」
「ああ。だが、これでようやくこの街の『霧』が晴れた。……さて、次はあの愚かな弟をどう料理する?」
マクシミリアン様が私の肩を抱き寄せた。
その冷徹な温もりが、私の勝利を確かなものにする。
恥の多い生涯の、これが最も華やかなる「断罪」。
正義という名の嘘が剥がれ落ち、真実という名の毒が街を満たしていく。
私たちの逆襲劇は、いよいよ最高潮へと向かっているのでございます。
「……ついでに、あの噴水の水、今日は『ケソミの赤ワイン』にでも変えてしまいましょうか。祝杯を挙げるには丁度よろしいですもの」
しかし、その熱狂は今や、どす黒い疑惑と飢えへの苛立ちに取って代わられている。
私は、塔の影に設えられた特等席で、扇を弄びながらその様子を眺めていた。
「……マクシミリアン様。ご覧になって。あの方々の瞳、まるで舞台の結末を急かす、性格の悪い観客のようですわ」
「当然だ。信じていたものに裏切られたと知った時、人間は最も残酷な獣に変わる。……さあ、主役の登場だ」
マクシミリアン様が合図を送ると、鉄格子の嵌まった馬車から、白い衣を纏ったクロエ様が引き摺り出された。
その白衣は汚れ、かつての神々しさは微塵も感じられない。
「……嘘よ。こんなの、何かの間違いだわ! 私、皆様のために祈り続けていたのに!」
クロエ様が壇上で叫ぶ。
しかし、その声は民衆の冷ややかな沈黙に吸い込まれていった。
私は立ち上がり、漆黒のドレスの裾を翻して壇上へと歩み寄った。
私の独白(モノローグ)は、今や王都の空気を切り裂く、最も鋭利な短刀となる。
私の内なる文豪が、この喜劇を「偽りの光が暴かれる正午」と記し、冷酷な筆致を走らせている。
「クロエ様。往生際が悪うございますわ。ついでに申し上げれば、あなたのその『祈り』の代金が、どこから支払われていたか、皆様にもお伝えしなくては」
私は、ティアから受け取った一束の書状を、高く掲げた。
「皆様、お聞きなさい! この聖女様が配っていたパンの代金……それは、マクシミリアン様が追放される際、彼女が『ついでに』私物化した王太子の私有財産を換金したものでしたのよ」
広場に、凍り付くような衝撃が走った。
「……え? 私たちのパンは、聖女様の奇跡ではなかったのか?」
「マクシミリアン殿下から盗んだ金で、恩を売っていたというのか!」
怒号が、波のように押し寄せる。
「ち、違うわ! 私はただ、有効に活用しただけで……!」
「有効に活用、ですって? まあ。それを世間では『横領』、あるいは『窃盗』と呼びますの。ついでに、その帳簿を改竄するために雇った会計士の証言も、ここに揃っておりますわ」
私は、絶望に顔を歪めるクロエ様の耳元に、死神のような囁きを届けた。
「さあ、聖女様。最後のお祈りをしてはいかが? 誰も助けに来ない、この孤独な地獄の中で」
「……あああああ!」
クロエ様は崩れ落ち、頭を抱えて泣き叫んだ。
その姿に、かつての慈悲深さはなく、ただ己の罪から逃げ場を失った矮小な人間だけがそこにいた。
「マクシミリアン様。偶像が壊れる音、案外、安っぽい音がいたしますのね」
「ああ。だが、これでようやくこの街の『霧』が晴れた。……さて、次はあの愚かな弟をどう料理する?」
マクシミリアン様が私の肩を抱き寄せた。
その冷徹な温もりが、私の勝利を確かなものにする。
恥の多い生涯の、これが最も華やかなる「断罪」。
正義という名の嘘が剥がれ落ち、真実という名の毒が街を満たしていく。
私たちの逆襲劇は、いよいよ最高潮へと向かっているのでございます。
「……ついでに、あの噴水の水、今日は『ケソミの赤ワイン』にでも変えてしまいましょうか。祝杯を挙げるには丁度よろしいですもの」
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