​『王太子とついで私も悪いですって?!』

きららののん

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王都の隅にひっそりと佇む、古びた修道院の一室。

そこには、未だに「王家の血統」と「古き正義」という名のカビの生えた幻想を抱き続ける、老いた貴族たちが集まっていた。


「……マクシミリアン殿下は、もはや悪魔に魂を売られた。我々だけでも、真の王権を、あの聖女様とリュシアン殿下を取り戻さねば……」


震える声で密談を交わす彼らの背後で、扉が音もなく、しかし絶対的な拒絶を込めて開かれた。


「……あら。随分と湿っぽくて、救いようのないお茶会ですわね。皆様、そんなに死臭の漂う過去がお好きなら、ついでに私が墓穴を掘って差し上げましょうか?」


私は扇で口元を隠し、暗がりに潜む亡霊たちに向けて、冷徹な一瞥を投げかけた。


「エ、エレオノーラ嬢……! なぜここが!」


「ここが? まあ。王都のすべての石畳が、マクシミリアン様の銀で磨かれているというのに、私に隠し事ができるとお思い?」


私は、ティアが捧げ持つ「証拠の束」を、円卓の中央に無造作に放り出した。


私の内なる文豪が、この浅はかな陰謀を「破滅を予約した愚者の手記」と名付け、軽蔑の唾棄を浴びせている。


「そこにあるのは、皆様がクロエ様の横領を黙認し、ついでに自分たちの私腹を肥やしていた記録のすべてですわ。……正義、ですって? 片腹痛いですわね。あなたたちが守りたかったのは、国ではなく、自分たちの醜い既得権益だけではありませんこと?」


「……っ! 貴様のような小娘に、何がわかる!」


一人の老貴族が立ち上がり、私を指差した。


「わかるも何も、私は『悪女』ですもの。悪は悪の匂いに敏感なのですわ。……マクシミリアン様、この方々の処遇、いかがいたしましょうか?」


部屋の隅の影から、マクシミリアン様が沈黙を破って歩み出た。

その足音は、もはや人間のそれではなく、運命そのものが階段を降りてくる響きであった。


「救いようのない無能は、罪ではない。だが、無能を正義という衣で隠し、他人の生を喰らうのは、私の美学が許さない」


マクシミリアン様は、円卓の端に指を這わせ、そのまま冷酷に言い放った。


「貴様らが守ろうとした『真の王権』など、最初から存在しない。……リュシアンは今、自らの愚かさを銀山で掘り起こしている。クロエは、自らの偽善を泥水で洗っている。……次は、貴様らが自らの罪を、この国の再建のための人柱となって償う番だ」


「……マクシミリアン殿下、お、お待ちを! 我々はただ、国を思って……!」


「国を思うなら、黙って私の足元で死ね。それが、貴様らがこの国にできる唯一の貢献だ」


マクシミリアン様の宣告は、冷たい刃となって彼らの心を貫いた。


一人、また一人と、老貴族たちは絶望の中に崩れ落ちていく。

かつてあれほど威厳を誇っていた彼らが、今はただの、色褪せた布切れのように見えた。


「……お見事ですわ、マクシミリアン様。ついでに、この部屋の書類もすべて焼いてしまいましょうか。不潔な記憶は、灰にするのが一番ですもの」


私は、ティアから受け取った蝋燭の火を、机の上の書類に落とした。


燃え上がる炎。

それは、アステリア王国を蝕んでいた最後の腐敗が、音を立てて消え去る音であった。


恥の多い生涯の、これが逆転劇の終止符。


私たちは、正義という名の墓標をここに建て、その上に、誰にも壊せない冷徹な現実を築き上げたのでございます。


「……さあ。ついでに、私の執務室に戻って、祝杯の準備をいたしましょう。……今度は毒ではなく、本当の勝利の美酒をね」


「ああ。君と共に飲む酒なら、どんなに毒々しくても、私には甘露に感じられるだろう」
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