全て私が悪かったので許してください!

きららののん

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夜が明け、窓から差し込む光が私の惨めさを照らし出す頃、部屋の扉が乱暴に開かれた。
現れたのは、見知らぬ騎士と、父であるアベンティス公爵だった。

「父様……!」

一晩中泣き明かしたせいで、声は嗄れていた。
それでも、私は最後の希望にすがる思いで、父に駆け寄ろうとした。

しかし、父の口から発せられた言葉は、私の期待を無慈悲に打ち砕いた。

「この、アベンティス家の面汚しめが」

地を這うような、冷たく低い声。
その瞳には、かつて私に向けられていた慈愛など欠片もなく、底知れないほどの嫌悪と怒りが渦巻いていた。

「お前の愚かな行いのせいで、我が家の名誉は地に堕ちた! 王家からの信頼も失墜し、各方面からどれほどの非難を浴びているか、わかっているのか!」

「ち、父様、お待ちください! わたくしは、ただアベンティス家のために……」

「黙れ!」

父の怒声が響き渡る。

「お前がしたことは、ただの嫉妬に狂った愚かな少女の癇癪だ! それがわからんか!」

父の言葉が、鋭い刃となって私の胸を突き刺す。
そんなはずはない。私は、ただ、教えられた通りに……。

「陛下からは、寛大なるご処置をいただいた。本来であれば、反逆罪として処刑されてもおかしくないところを、な」

処刑、という言葉に、背筋が凍る。

「お前には、国外追放の処分が下された。二度と、このアベンティス王国の土を踏むことは許されん」

「こ、国外追放……? そ、そんな……」

「当然の報いだ。そして、これは王家からの命令ではない。この私、アベンティス公爵家当主としての決定だ」

父は冷然と言い放った。

「クーデリア・アベンティス。本日をもって、お前をアベンティス家から勘当する。お前のような娘は、もはや我が家の者ではない」

「か、勘当……?」

足元から、世界が崩れていくような感覚に襲われた。
何を言われているのか、理解が追いつかない。

「荷物をまとめろ。と言っても、お前に許されるのは、そのみすぼらしい衣服と最低限の食料だけだ。馬車は用意してある。今すぐ、この家から出て行け」

「いや……いやです! 父様、母様は! 母様はどこですの!?」

「お前の母は、お前の愚行を知り、ショックで寝込んでいる。二度と、お前の顔など見たくないそうだ」

その言葉が、私の心を完全に折った。
唯一の味方だと思っていた母からも、見放された。

「さあ、立て。行くぞ」

騎士に腕を掴まれ、無理やり立たされる。

「いや! 離して! 私は公爵令嬢よ! 無礼者!」

最後の力を振り絞って抵抗するが、鍛えられた騎士の力には到底かなわない。
引きずられるようにして、私は生まれ育った部屋を、そして屋敷を後にした。

屋敷の玄関には、使用人たちが並んでいた。
彼らの目に同情の色はなく、ただ冷ややかに、厄介払いが済んだと安堵するような視線を私に向けているだけだった。

用意されていたのは、屋根もない、粗末な荷馬車だった。
荷台に乱暴に放り込まれる。

御者が鞭を振るうと、馬車はゆっくりと動き出した。
見慣れたアベンティス公爵家の壮麗な屋敷が、どんどん遠ざかっていく。

私のプライドも、地位も、家族も、全てが幻だったかのように消えていった。
後に残ったのは、勘当され、追放される、ただのクーデリアという女一人だけだった。
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