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森の入り口には、静寂だけが流れていた。
アレンは、クーデリアの変わりように、ただ立ち尽くすばかりだった。
先にその沈黙を破ったのは、クーデリアの方だった。
彼女は、ゆっくりと、しかし深く、その場に膝をついた。
そして、泥で汚れるのも厭わず、額が地面につきそうなほど、頭を下げた。
「アレン殿下」
その声は、地面に吸い込まれるように、くぐもっていた。
「そして、ここにはおられませんが、リリアンナ様へ。これまでの、わたくしの……数々の非礼、そして、許されざる罪の全てを、心よりお詫び申し上げます」
アレンは、息を呑んだ。
彼女の、そのあまりにも真摯な姿に。
「わたくしは、嫉妬という醜い感情に心を支配され、お二方を深く、深く傷つけました。どんな言葉を尽くしても、償えるものではございません。わたくしのしたことは、それほどまでに、卑劣で、愚かな行いでした」
彼女の肩が、微かに震えている。
泣いているのだろうか。
いや、違う。
それは、後悔と、そして誠意からくる、魂の震えだった。
「全て、私が悪うございました。どうか……どうか、お許し下さいとは、申しません。許しを乞う資格など、わたくしにはございませんから」
クーデリアは、顔を上げないまま、続けた。
「ただ、この謝罪の気持ちだけは、偽りのない、わたくしの本心であると、それだけは、信じていただけたらと……そう、願うばかりです」
その言葉を最後に、彼女は再び、深く、深く、頭を垂れた。
かつての、傲慢でプライドの高かった公爵令嬢の面影は、そこには一片もなかった。
ただ、自分の罪と向き合い、心からの謝罪を捧げる、一人の女性がいるだけだった。
アレンは、胸を締め付けられるような思いがした。
自分は、この女性を、ここまで追い詰めたのだ。
そして、彼女は、その絶望の淵から、自らの力で這い上がり、自分よりもずっと、気高い存在へと昇華していた。
自分の正義とは、なんだったのだろう。
彼女を断罪し、追放した、あの日の自分は、本当に正しかったのだろうか。
その問いが、アレンの心を激しく揺さぶる。
「……顔を、上げなさい。クーデリア」
アレンの声は、自分でも驚くほど、穏やかだった。
クーデリアが、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳は濡れていたが、涙は流れていなかった。
ただ、澄み切った、静かな光を湛えている。
「君の謝罪は、受け取った」
アレンは、静かに言った。
「君が、本当に反省し、変わったのだということは、もう、十分にわかった。……いや、君は、私が思っていたよりも、ずっと強い人間だったのかもしれないな」
それは、アレンの本心だった。
「リリアンナにも、伝えよう。君が、心から謝罪していたと。彼女も、きっと、君を許すだろう。彼女は、そういう女性だ」
「……ありがとう、ございます」
クーデリアは、再び頭を下げた。
その声には、安堵の色が滲んでいた。
アレンは、彼女の前にしゃがみ込むと、そっとその肩に手を置いた。
「立てるか?」
「はい」
クーデリアが立ち上がるのを助けながら、アレンは、初めて、心から穏やかな気持ちになっている自分に気づいた。
彼女を許すことで、自分自身もまた、過去の呪縛から、救われようとしていた。
アレンは、クーデリアの変わりように、ただ立ち尽くすばかりだった。
先にその沈黙を破ったのは、クーデリアの方だった。
彼女は、ゆっくりと、しかし深く、その場に膝をついた。
そして、泥で汚れるのも厭わず、額が地面につきそうなほど、頭を下げた。
「アレン殿下」
その声は、地面に吸い込まれるように、くぐもっていた。
「そして、ここにはおられませんが、リリアンナ様へ。これまでの、わたくしの……数々の非礼、そして、許されざる罪の全てを、心よりお詫び申し上げます」
アレンは、息を呑んだ。
彼女の、そのあまりにも真摯な姿に。
「わたくしは、嫉妬という醜い感情に心を支配され、お二方を深く、深く傷つけました。どんな言葉を尽くしても、償えるものではございません。わたくしのしたことは、それほどまでに、卑劣で、愚かな行いでした」
彼女の肩が、微かに震えている。
泣いているのだろうか。
いや、違う。
それは、後悔と、そして誠意からくる、魂の震えだった。
「全て、私が悪うございました。どうか……どうか、お許し下さいとは、申しません。許しを乞う資格など、わたくしにはございませんから」
クーデリアは、顔を上げないまま、続けた。
「ただ、この謝罪の気持ちだけは、偽りのない、わたくしの本心であると、それだけは、信じていただけたらと……そう、願うばかりです」
その言葉を最後に、彼女は再び、深く、深く、頭を垂れた。
かつての、傲慢でプライドの高かった公爵令嬢の面影は、そこには一片もなかった。
ただ、自分の罪と向き合い、心からの謝罪を捧げる、一人の女性がいるだけだった。
アレンは、胸を締め付けられるような思いがした。
自分は、この女性を、ここまで追い詰めたのだ。
そして、彼女は、その絶望の淵から、自らの力で這い上がり、自分よりもずっと、気高い存在へと昇華していた。
自分の正義とは、なんだったのだろう。
彼女を断罪し、追放した、あの日の自分は、本当に正しかったのだろうか。
その問いが、アレンの心を激しく揺さぶる。
「……顔を、上げなさい。クーデリア」
アレンの声は、自分でも驚くほど、穏やかだった。
クーデリアが、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳は濡れていたが、涙は流れていなかった。
ただ、澄み切った、静かな光を湛えている。
「君の謝罪は、受け取った」
アレンは、静かに言った。
「君が、本当に反省し、変わったのだということは、もう、十分にわかった。……いや、君は、私が思っていたよりも、ずっと強い人間だったのかもしれないな」
それは、アレンの本心だった。
「リリアンナにも、伝えよう。君が、心から謝罪していたと。彼女も、きっと、君を許すだろう。彼女は、そういう女性だ」
「……ありがとう、ございます」
クーデリアは、再び頭を下げた。
その声には、安堵の色が滲んでいた。
アレンは、彼女の前にしゃがみ込むと、そっとその肩に手を置いた。
「立てるか?」
「はい」
クーデリアが立ち上がるのを助けながら、アレンは、初めて、心から穏やかな気持ちになっている自分に気づいた。
彼女を許すことで、自分自身もまた、過去の呪縛から、救われようとしていた。
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