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立ち上がったクーデリアは、アレンにまっすぐ向き直った。
その瞳には、もう迷いの色はなかった。
「アレン殿下。わたくしは、ここで生きていきます」
その言葉は、静かだったが、何よりも強い決意に満ちていた。
「わたくしには、ここで、共に生きたいと願う人がおります。その人と、ささやかでも、温かい家庭を築いていく。それが、今のわたくしの、たった一つの望みです」
アレンは、静かに頷いた。
報告にあった、ディラン・クラインという男のことだろう。
嫉妬の炎は、もう、アレンの心にはなかった。
ただ、彼女が選んだ道を、尊重したいという気持ちだけがあった。
「そうか。……幸せに、なりなさい」
絞り出した言葉は、心からのものだった。
「はい」
クーデリアは、花が咲くように、微笑んだ。
それは、アレンが初めて見る、何の曇りもない、幸福に満ちた笑顔だった。
その笑顔を見て、アレンは、自分の役目が終わったことを悟った。
その時だった。
森の奥から、一人の男が、心配そうな顔でこちらへ駆けてくるのが見えた。
たくましい体つきの、日に焼けた青年。
ディラン・クラインだった。
「リア! ……あんたは!」
ディランは、クーデリアの隣に立つアレンを見て、警戒するように足を止めた。
その目には、クーデリアを守ろうとする、強い意志が宿っている。
「ディラン、大丈夫ですわ。こちらは、アレン殿下。わたくしが、けじめをつけたいと願っていたお方です」
クーデリアが、安心させるように言う。
ディランは、まだ警戒を解かないまま、アレンとクーデリアを交互に見た。
アレンは、そのディランに向かって、静かに頭を下げた。
「君が、ディラン・クラインか。……彼女を、支えてくれて、感謝する」
王太子が、平民に頭を下げる。
異例の、あり得ない光景だった。
ディランも、そしてクーデリアも、驚いて目を見開いている。
「彼女を、幸せにしてやってくれ。……いや、君となら、彼女はきっと、幸せになれるだろう」
アレンはそう言うと、踵を返した。
もう、ここに、自分の居場所はない。
「アレン様!」
クーデリアの声に、彼は一度だけ、足を止めて振り返った。
「リリアンナ様を、どうか、お幸せに」
その言葉に、アレンは、今度こそ、心からの笑みを浮かべて、頷いた。
そして、彼はもう振り返ることなく、森の中へと去っていった。
王国へと帰る道すがら、アレンの心は、不思議なほど晴れやかだった。
彼は、クーデリアを許すことで、自分自身を許すことができた。
過去を清算し、未来へと進むべき道が、今はっきりと見えている。
隣にいる、リリアンナという、本当に愛すべき女性と共に。
彼の心もまた、救われたのだった。
一人残されたクーデリアの元に、ディランが駆け寄る。
「……よかったのか? これで」
「ええ。よかったのです」
クーデリアは、ディランの胸に、そっと顔をうずめた。
「帰りましょう、ディラン。わたくしたちの、家に」
「ああ。帰ろう」
ディランは、愛しい人を強く抱きしめた。
夕暮れの光が、新しい未来へと歩き出す二人を、優しく照らしていた。
その瞳には、もう迷いの色はなかった。
「アレン殿下。わたくしは、ここで生きていきます」
その言葉は、静かだったが、何よりも強い決意に満ちていた。
「わたくしには、ここで、共に生きたいと願う人がおります。その人と、ささやかでも、温かい家庭を築いていく。それが、今のわたくしの、たった一つの望みです」
アレンは、静かに頷いた。
報告にあった、ディラン・クラインという男のことだろう。
嫉妬の炎は、もう、アレンの心にはなかった。
ただ、彼女が選んだ道を、尊重したいという気持ちだけがあった。
「そうか。……幸せに、なりなさい」
絞り出した言葉は、心からのものだった。
「はい」
クーデリアは、花が咲くように、微笑んだ。
それは、アレンが初めて見る、何の曇りもない、幸福に満ちた笑顔だった。
その笑顔を見て、アレンは、自分の役目が終わったことを悟った。
その時だった。
森の奥から、一人の男が、心配そうな顔でこちらへ駆けてくるのが見えた。
たくましい体つきの、日に焼けた青年。
ディラン・クラインだった。
「リア! ……あんたは!」
ディランは、クーデリアの隣に立つアレンを見て、警戒するように足を止めた。
その目には、クーデリアを守ろうとする、強い意志が宿っている。
「ディラン、大丈夫ですわ。こちらは、アレン殿下。わたくしが、けじめをつけたいと願っていたお方です」
クーデリアが、安心させるように言う。
ディランは、まだ警戒を解かないまま、アレンとクーデリアを交互に見た。
アレンは、そのディランに向かって、静かに頭を下げた。
「君が、ディラン・クラインか。……彼女を、支えてくれて、感謝する」
王太子が、平民に頭を下げる。
異例の、あり得ない光景だった。
ディランも、そしてクーデリアも、驚いて目を見開いている。
「彼女を、幸せにしてやってくれ。……いや、君となら、彼女はきっと、幸せになれるだろう」
アレンはそう言うと、踵を返した。
もう、ここに、自分の居場所はない。
「アレン様!」
クーデリアの声に、彼は一度だけ、足を止めて振り返った。
「リリアンナ様を、どうか、お幸せに」
その言葉に、アレンは、今度こそ、心からの笑みを浮かべて、頷いた。
そして、彼はもう振り返ることなく、森の中へと去っていった。
王国へと帰る道すがら、アレンの心は、不思議なほど晴れやかだった。
彼は、クーデリアを許すことで、自分自身を許すことができた。
過去を清算し、未来へと進むべき道が、今はっきりと見えている。
隣にいる、リリアンナという、本当に愛すべき女性と共に。
彼の心もまた、救われたのだった。
一人残されたクーデリアの元に、ディランが駆け寄る。
「……よかったのか? これで」
「ええ。よかったのです」
クーデリアは、ディランの胸に、そっと顔をうずめた。
「帰りましょう、ディラン。わたくしたちの、家に」
「ああ。帰ろう」
ディランは、愛しい人を強く抱きしめた。
夕暮れの光が、新しい未来へと歩き出す二人を、優しく照らしていた。
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