メサイア

渡邉 幻月

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風の噂

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人の口に戸は立てられぬ。
とは、良く言ったものである。

メサイアの過激派の存在は、いつとはなしに人々の知るところとなった。
ただし、正確なメンバーや組織の規模・目的については未だ闇の中だったが。

彼らは過激派でありながら、慎重でもあった。
いきなり反旗を翻すことなく、仲間を集っていた。組織としての力を蓄えてくると、やがて、その存在は雨が大地に染みていくように巷に浸透していった。
不気味な存在感を放ちながら。

噂は、波のように寄せては引く。

一度目の噂は、組織に反意を持つ者達が居るらしい。それだけだった。それはさざ波のようで、ただ、メサイアの組織の内部で囁かれただけだった。

噂の第二波は、反意を持つ者達がクーデターを企てている。と言うものだった。
これも、組織の内部で囁かれただけだったが、上層部へのインパクトは大きかったようで、規律が厳しくなった。

その次は、クーデターを成功させるために組織を編成したらしい、と言う噂で、これはメサイアの外部に漏れた。
メサイアの上層部が反乱者のアジトを探す際に、派遣した部隊。そのただならぬ雰囲気故に、アジトではないかと目をつけられた場所の近くにいた人々は当然不審に思う。
特殊部隊は何も語らなかったが、やがて、噂が囁かれる。
もちろん、箝口令は敷かれたため、広範囲には広がらなかった。
ように見えた。

だが、実際は違う。箝口令の網の目をくぐり、じわじわと広がっていた。ゆっくりと。

そして、ヨナタンが帰省する前。
その組織の名前は、『ペルペテュエル・アム』と言うらしい。と言う噂が流れた。その噂はメサイアの組織内だけでなく、一部地域にまで広がっていた。
噂の出所は分からない。諜報部隊がどれだけ調べても。

ヨナタンは、始めこそ馬鹿馬鹿しいと思った。反意を示して何になるのだ、と。
末路は見えているではないか。メサイアは、もうかつてのよう叶わぬ抵抗を続けていた小さな地下組織ではないのだ。
そんな事より、鍛練してメサイアのNo.1に、許されるなら勇者になりたいと。
栄光を手にしたいと、無意識に願っていた。

ヨナタンがそのように考えている間にも、ペルペテュエル・アムの噂は静かに広がっていた。乾いた大地が水を吸い込むように自然に。

ヨナタンは気付かなかった。
噂と言うには、あまりにも不自然であったことを。
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