メサイア

渡邉 幻月

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※噂の根源

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その噂は、実は人の口から広まったモノでは無かった。

メサイアの能力は、基本的に攻撃スキルに偏っている。打倒天使・打倒怪物を願った末に与えられた能力なのだから、ある意味当然とも言えるだろう。
得意とする能力が物理攻撃に長けるか魔法攻撃に長けるかは、それぞれの生まれ持った才に左右されるが。

だが、稀に異なる力を持つ者がいる。
回復系の能力者だ。
メサイアになった者達は、肉体と霊魂の狭間の存在になる。
であるが故に薬品の類いではケガも病気も治せない。
だからこそ、の、存在である。

そして。
さらに稀な能力。

精神感応テレパシー

かつての技術が失われたこの世界では、遠方の相手と交流する場合は手紙以外に手段がなかった。
電話すらない世界だ。インターネットなどもっての他。
そんな中、テレパシーは各地に散らばるメンバーを統率するのに役立った。
使える者は一握り。彼らはもれなくメサイアの幹部だった。

ペルペテュエル・アムの噂はつまり、
が都合良く流したのだ。

彼の目的に沿うように、彼が選んだ者達に。
噂で聞いたと錯覚するように、わざと人混みの中にいる時を狙って。

やがて、じわじわと噂は広がる。
始めこそ、テレパシーを使ったモノだったのに。

ここだけの話、と、親しいものに話したが最後。

じわじわと。
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