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銀色の髪の男
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カインは呆然と、メサイア本部の門を見ていた。
訳が分からない。
アレ、は、誰だったのだろう。
八年前に出会った男に良く似た、あの金髪の男は。
それに、アベルが勇者だと言うのも。
「オレ、は…」
カインは絶望と嫉妬がじわじわと身を焦がし始めるのを、働かない頭で感じ取っていた。
兄はメサイア。弟は、勇者。
…オレは?
腸が煮えくり返る。
と、カインは思った。そのまま焼き尽くされてしまうんじゃないかと錯覚するほど、煮え滾っている。
『ダメだよ。』
どこからか聞き覚えのある声が、カインに語りかけてきた。
ふっ、とカインは我に返った。
そして、影が差したのに気付く。
「いつまでここに居る。さっさと帰れ。」
黒い隊服のメサイアが、カインに吐き捨てるように言った。
カインの頭に血が上る。が。
『ダメだよ。』
また、聞こえたその声にほんの少し冷静さを取り戻す。
でも、どうしたら良いか分からないんだ。
カインは心の中で、そう泣き言を言った。
『取り敢えず、この街を出ようか。』
何をすれば良いのかもどうしたいのかも分からないカインは、誰の声とも分からない言葉に従って町を出た。
無力感に襲われながら、ふらふらと街道を歩く。何処へ向かうのかも、分からないまま。
ふつふつと、アベルへの嫉妬が沸き上がる。ヨナタンへの嫉妬も一緒に。
同時に、罪悪感も生まれる。大好きな兄弟に、醜い感情を抱き始めている事への罪悪感。
そうして、自分だけが取り残されたという、絶望に似た寂しさ。
カインは混乱していた。
嫉妬と罪悪感と、絶望と寂しさに悲しさ、孤独さ、綯い交ぜになって結局のところ自分が何をどう感じているのか分からない。
混乱したまま当て所もなく歩き続け、気が付けば日も暮れていた。
「あれ、ここ、どこだ?」
見たこともない場所にただ一人。人気もない荒野に、カインは肝を潰した。
…まずい、このままじゃ…
このままでは、怪物の格好の餌食だ。今のカインには身を守る術は無いと言っていい。
なんでこんな所に、と思っても今さら後の祭でしかない。
カインはその場にへたり込んで、そうして拳と額を地面に押し付けた。体が震える。
泣きたい。のに、涙も出なかった。
「やあ、久しぶりだね。」
頭の上から声が聞こえた。
カインは、ハッとして上体を起こした。
そこには。
八年前と同じ、銀色の髪の男がいた。
「あ、あんた… あの時の、人だよな?」
「八年ぶりかな?」
柔らかい笑みで、カインの問いに答える。
「さっきの、人は…?」
一方、カインは混乱していた。
感情の波がかつて無く荒れ狂っている中で、唐突とも言える再会に。なのに、この安心感は何なのだろう。
「あの子は、私の双子の弟だよ。」
訳が分からない。
アレ、は、誰だったのだろう。
八年前に出会った男に良く似た、あの金髪の男は。
それに、アベルが勇者だと言うのも。
「オレ、は…」
カインは絶望と嫉妬がじわじわと身を焦がし始めるのを、働かない頭で感じ取っていた。
兄はメサイア。弟は、勇者。
…オレは?
腸が煮えくり返る。
と、カインは思った。そのまま焼き尽くされてしまうんじゃないかと錯覚するほど、煮え滾っている。
『ダメだよ。』
どこからか聞き覚えのある声が、カインに語りかけてきた。
ふっ、とカインは我に返った。
そして、影が差したのに気付く。
「いつまでここに居る。さっさと帰れ。」
黒い隊服のメサイアが、カインに吐き捨てるように言った。
カインの頭に血が上る。が。
『ダメだよ。』
また、聞こえたその声にほんの少し冷静さを取り戻す。
でも、どうしたら良いか分からないんだ。
カインは心の中で、そう泣き言を言った。
『取り敢えず、この街を出ようか。』
何をすれば良いのかもどうしたいのかも分からないカインは、誰の声とも分からない言葉に従って町を出た。
無力感に襲われながら、ふらふらと街道を歩く。何処へ向かうのかも、分からないまま。
ふつふつと、アベルへの嫉妬が沸き上がる。ヨナタンへの嫉妬も一緒に。
同時に、罪悪感も生まれる。大好きな兄弟に、醜い感情を抱き始めている事への罪悪感。
そうして、自分だけが取り残されたという、絶望に似た寂しさ。
カインは混乱していた。
嫉妬と罪悪感と、絶望と寂しさに悲しさ、孤独さ、綯い交ぜになって結局のところ自分が何をどう感じているのか分からない。
混乱したまま当て所もなく歩き続け、気が付けば日も暮れていた。
「あれ、ここ、どこだ?」
見たこともない場所にただ一人。人気もない荒野に、カインは肝を潰した。
…まずい、このままじゃ…
このままでは、怪物の格好の餌食だ。今のカインには身を守る術は無いと言っていい。
なんでこんな所に、と思っても今さら後の祭でしかない。
カインはその場にへたり込んで、そうして拳と額を地面に押し付けた。体が震える。
泣きたい。のに、涙も出なかった。
「やあ、久しぶりだね。」
頭の上から声が聞こえた。
カインは、ハッとして上体を起こした。
そこには。
八年前と同じ、銀色の髪の男がいた。
「あ、あんた… あの時の、人だよな?」
「八年ぶりかな?」
柔らかい笑みで、カインの問いに答える。
「さっきの、人は…?」
一方、カインは混乱していた。
感情の波がかつて無く荒れ狂っている中で、唐突とも言える再会に。なのに、この安心感は何なのだろう。
「あの子は、私の双子の弟だよ。」
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