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嫉妬の炎
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何て一日だ。
と、サプフィールは一人で腹を立てていた。執務を終え夕食も入浴も苛立ちのままぞんざいに済ませた彼は、自室のベッドに身を投げ出して行き場の無い憤りを持て余していた。
スピネルの言うことが正論なだけに、感情のぶつける先がも見当たらないサプフィールは自分が未熟なのかと自己嫌悪も感じてしまう。
「だけど!」
つい独り言にも怒気が孕む。
自分の怒りのこもった声にハッとして、サプフィールは溜息を吐いた。
「おれと一緒に居なくても平気そうなのは… って言うか、レオと知り合いなのかよ。」
むしゃくしゃしてくる。これは嫉妬だ。レオがあんなに馴れ馴れしくスピネルに絡んだ事への、自分の知らない銀狼を知っている事への嫉妬。きっと、さっきの話以外にも自分の知らないスピネルが居るのだろう。そう考えるとより一層嫉妬の炎が燃え上がっていく。
腹の底から沸き上がってくるその感情にサプフィールはじわじわと身を焼かれ、怒りがさらに燃え上がっていくのを感じていた。
醜い。嫉妬なんて。だけど。スピネルは。
嫉妬に目がくらんで、胸が苦しいのか息が苦しいのか、…心が苦しいのか分からなくなった頃。
こつん こつん
ガラスに何かがぶつかたような音がした。
一瞬、その音に気を取られてたサプフィールだったがすぐに嫉妬の炎が意識をさらっていく。
こつん
また、同じようにガラスに何かがぶつかるような音がする。
「バルコニーの方からだ。」
サプフィールは呟いて首を傾げた。ガラス張りのドアにいったい何がぶつかるというのだろう。不思議に思った彼は、バルコニーへ近寄ってみる。カーテンに手をかけるところでまた、こつん、と音がする。
…やっぱりバルコニーから音がしている。
意を決してカーテンを開けると、そこには。
「スピネル!」
サプフィールは急いでバルコニーのドアを開けた。
「やっと開いたぜぇ。」
そう言ってスピネルは部屋の主に断りもなく、それが当たり前と言うように室内に入ってくる。
「バルコニーのドアは開けといてくれって言ったじゃねぇか。」
ベッドに腰を下ろしながら、そう言うスピネルは不満気だ。
「あっ、ああ… 別に忘れていた訳じゃ… ただ…」
サプフィールは答えに詰まった。嫉妬にかられ、スピネルの言葉を忘れていた。
「ただ、なんだ?」
左腕をサプフィールに向けて伸ばし、スピネルが問う。
「昼間のこと考えていたら、思いの外時間が過ぎてて…」
昼間の出来事に、腹を立て嫉妬に狂っていたなど、そのまま素直に言いたくないとサプフィールは言い淀む。差し伸べられたスピネルの手に、おずおずと自分の手を伸ばす。
「昼間?」
サプフィールを引き寄せ抱き込んだスピネルは、時間を忘れて考え込むようなことがあったかと昼間の出来事を思い返す。
…あぁ、レオの態度のことか。そう思い至ってスピネルは溜息を吐きたくなった。そう言えばどうやって宥めるか、って考えてはいたんだよなぁ。そこまで考えを巡らせ、あとはサプフィールの出方次第だなと半ば諦める。
「も、もういいだろ。明日からは開けとくから!」
スピネルの存在に怒りも嫉妬も解けていったサプフィールは、今はもう恥ずかしくて仕方がなかった。
嫉妬していたことも、理不尽に腹を立てていたことも、何よりスピネルの姿を見ただけで消え去った事実だけは知られたくない。こんなこと知られたら、また子ども扱いされるに違いない。
子ども扱いは、もう嫌だ。対等になりたい。もうあんな顔はさせたくない。十年前の、あの日の別れ際の、あの表情だけはきっといつまで経っても忘れられないだろうと思っている。あの時、もっと大人だったら、きっとあんな別れ方じゃなくて、スピネルも利き腕を失うことも無くて、…もっと。
「ふうん?」
サプフィールの目を覗き込んだスピネルが、確かめるように視線で問いかける。サプフィールの視線が泳いだことに気が付きつつも彼は、
「まあ、今回だけな。」
そう一言だけ呟くように言った。
と、サプフィールは一人で腹を立てていた。執務を終え夕食も入浴も苛立ちのままぞんざいに済ませた彼は、自室のベッドに身を投げ出して行き場の無い憤りを持て余していた。
スピネルの言うことが正論なだけに、感情のぶつける先がも見当たらないサプフィールは自分が未熟なのかと自己嫌悪も感じてしまう。
「だけど!」
つい独り言にも怒気が孕む。
自分の怒りのこもった声にハッとして、サプフィールは溜息を吐いた。
「おれと一緒に居なくても平気そうなのは… って言うか、レオと知り合いなのかよ。」
むしゃくしゃしてくる。これは嫉妬だ。レオがあんなに馴れ馴れしくスピネルに絡んだ事への、自分の知らない銀狼を知っている事への嫉妬。きっと、さっきの話以外にも自分の知らないスピネルが居るのだろう。そう考えるとより一層嫉妬の炎が燃え上がっていく。
腹の底から沸き上がってくるその感情にサプフィールはじわじわと身を焼かれ、怒りがさらに燃え上がっていくのを感じていた。
醜い。嫉妬なんて。だけど。スピネルは。
嫉妬に目がくらんで、胸が苦しいのか息が苦しいのか、…心が苦しいのか分からなくなった頃。
こつん こつん
ガラスに何かがぶつかたような音がした。
一瞬、その音に気を取られてたサプフィールだったがすぐに嫉妬の炎が意識をさらっていく。
こつん
また、同じようにガラスに何かがぶつかるような音がする。
「バルコニーの方からだ。」
サプフィールは呟いて首を傾げた。ガラス張りのドアにいったい何がぶつかるというのだろう。不思議に思った彼は、バルコニーへ近寄ってみる。カーテンに手をかけるところでまた、こつん、と音がする。
…やっぱりバルコニーから音がしている。
意を決してカーテンを開けると、そこには。
「スピネル!」
サプフィールは急いでバルコニーのドアを開けた。
「やっと開いたぜぇ。」
そう言ってスピネルは部屋の主に断りもなく、それが当たり前と言うように室内に入ってくる。
「バルコニーのドアは開けといてくれって言ったじゃねぇか。」
ベッドに腰を下ろしながら、そう言うスピネルは不満気だ。
「あっ、ああ… 別に忘れていた訳じゃ… ただ…」
サプフィールは答えに詰まった。嫉妬にかられ、スピネルの言葉を忘れていた。
「ただ、なんだ?」
左腕をサプフィールに向けて伸ばし、スピネルが問う。
「昼間のこと考えていたら、思いの外時間が過ぎてて…」
昼間の出来事に、腹を立て嫉妬に狂っていたなど、そのまま素直に言いたくないとサプフィールは言い淀む。差し伸べられたスピネルの手に、おずおずと自分の手を伸ばす。
「昼間?」
サプフィールを引き寄せ抱き込んだスピネルは、時間を忘れて考え込むようなことがあったかと昼間の出来事を思い返す。
…あぁ、レオの態度のことか。そう思い至ってスピネルは溜息を吐きたくなった。そう言えばどうやって宥めるか、って考えてはいたんだよなぁ。そこまで考えを巡らせ、あとはサプフィールの出方次第だなと半ば諦める。
「も、もういいだろ。明日からは開けとくから!」
スピネルの存在に怒りも嫉妬も解けていったサプフィールは、今はもう恥ずかしくて仕方がなかった。
嫉妬していたことも、理不尽に腹を立てていたことも、何よりスピネルの姿を見ただけで消え去った事実だけは知られたくない。こんなこと知られたら、また子ども扱いされるに違いない。
子ども扱いは、もう嫌だ。対等になりたい。もうあんな顔はさせたくない。十年前の、あの日の別れ際の、あの表情だけはきっといつまで経っても忘れられないだろうと思っている。あの時、もっと大人だったら、きっとあんな別れ方じゃなくて、スピネルも利き腕を失うことも無くて、…もっと。
「ふうん?」
サプフィールの目を覗き込んだスピネルが、確かめるように視線で問いかける。サプフィールの視線が泳いだことに気が付きつつも彼は、
「まあ、今回だけな。」
そう一言だけ呟くように言った。
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