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第6話:万物の霊長とか言う気ありませんから
しおりを挟むオセロのコツも満員電車に乗るコツも、角を取ること。善い子になるコツも、角を取ること。
先生は「心を丸くするように」だって。お母さんは「角張ってたら人を傷つける」だって。
二人とも散々わたしを傷つけてきたのに、なにを言ってるんだろう?
まん丸お月様。お月見団子。あんの入ってないお餅お持ち帰りのお団子屋さん。お団子屋さんの娘さんは愛想のいい娘さん。お愛想お願いします。
お月見団子より、わたしは星。好きなのはきらきら星。きらきら光る夜空の星より、この人は好きなのかな? おまんじゅうみたいなお尻。お餅みたいなお尻。
そう思ってたけど、そうでもないっぽい? だって今日もわたしは抱き締められてる。
押し競まんじゅうの満員電車。角を取ったわたしの後ろ。人間の皮を被った宇宙人かも知れない人は、善い子の皮を被った悪い子のわたしを抱き締めている。優しく。昨日は意地悪したのに。
宇宙人かも知れないのに。心は丸いのかな。
だから恥ずかしさは変わらない。抱き締められるのは、なんか恥ずかしい。わたしも丸くなりたい。心じゃなくて身体の話。手すりを持つ手をぎゅっとする。
人間の身体は星みたいだよね。形はこう「☆」。 手足を広げてる。「☆」の中に「○」を描けば、心身の出来上がり。心は身体の内に秘めるもの。
──みたいな嘘に騙されてばかりでした。
騙されてた? 違うかな。わからなかった。言ってることと目にする行動、みんなバラバラだし。
だから、わたしにはわからない。わからないことをわからないままにしてたら、今のわたしになった。
大切なのは、わかったフリをすること。わからなくても、わかったと騙し合うこと。騙し合いの輪は大事らしい。共通点の多さは仲間を作る。だったらね、宇宙人はきっと、地球人と仲良くはできないと思うよ。
宇宙人になりたいわたしも、仲良く……は、難しいのかな?
宇宙人は知ってる。身体の形「☆」に、心の形「○」は秘めてちゃいけない。身体の中に心を秘めてたら、一生、心と心は触れ合えない。
宇宙人は知ってる。本当は逆だってことを。心の形「○」で、身体の形「☆」を、包み込まなきゃいけないっていう真実を。
「☆」は「○」の中にある。
宇宙人は円盤形UFOに乗ってるくらいだから。
きらきら光ろう、心の星。光って世界の嘘を照らし出そう。
「…………?」
背広を着た宇宙人に脇腹をつままれてる。
痩せろってことかな。肉ついてるのウエストだけだと思うけど。でも好みの話だったら困るし。ペットにしてもらえないかも。
それより、くすぐったい。
笑っちゃいそうだから、ちょっと手の甲をつまむ。
「…………」
やめてくれた。
会話より態度。ハンドサインかな。ギブアップみたいな感じのあれ。タップ?
「ギブ」は頂戴。「アップ」は上昇。「タップ」はなんだろう? とりあえず「やめて欲しい」みたいな意味のはず。
「欲しい」はプリーズ。
「プリーズ・ミー」はわたしにください。
なにを? 宇宙を。新しい世界を。おまんじゅうの内側から見た真実を。
「プリーズ・ミー」善い子の皮を被った悪い子のわたしを一緒くたに食べて下さい。背広を着た宇宙人の胃の中から、わんわん鳴いてみたいのです。わんわん泣いてみたいのです。
きっと世界は、今よりも美しいはずですから。
「……ん」
入ってきてる? スカートの中に指が……。
あ、ああ。これ……は、で、電車の中で食べる気なのかな? わたしを。そしたら本当に痴漢だよ。お行儀悪い。わたしはお行儀のいいペットのつもりなのに。おまんじゅうはお皿の上で食べて下さい……つねり、と。
あれ? やめてくれた。
お願いは聞いてくれるのかな。人類に友好的な痴漢さん。背広着てるし紳士かも。手に手を取り合い、それでは一緒に踊りましょう。曲はワルツです、よろしいですか?
『間もなく──』間もなくワルツも終わる頃、なんかお腹に入ったよ? 「ここにある」みたいな感じにお腹を撫でられた。お腹とスカートの隙間。なに、四角いこれ? 授業中、教室に回る折り畳まれた手紙? ──手紙っ? わっ、ファースト・コンタクトっ?
わっ、ファースト・タッチも! 手に触っちゃった!
どうしよう? 宇宙式の挨拶は考えてなかったな。
「ハロー宇宙人」って挨拶したら「ハロー地球人」って言い返されそう。わたし礼儀とか知らないし。
わたしは地球人です。地球に70億人ほどいます。わたしは日本人です。日本に1億2000万人ほどいます。わたしはわたしです。世界に1人だけです。わたしは世界にたった1人だけです。
わたしは絶滅危惧種です。どうか保護して下さい。遠い星の彼方まで連れて行って下さい。どうかお願いします。ペット可。ペット化。万物の霊長とか言う気ありませんから。
『お出口は──』人間のお出口は左側です。DNAは右巻きです。螺旋階段も右巻きです。もう、この階段から降りたいのです。
プシューと開く人間のお出口。左足から降りるべきか。右足から降りるべきか。左足から降りることにする。験担ぎ。人間に向いていないわたしの考えでは。
お腹からお手紙を……と思ったら、名刺でした。暗号? QRコード? 名前はなし。人類の声帯じゃ発音できない?
『締まる扉に──』ご注意して、世界にたった1人のわたしは、宇宙にたった1人の“あなた”を見る。
背広を着た宇宙人は、なにか言いたそうな顔をしていました。
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