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第11話:砂糖はいっぱい。気持ちもいっぱい。胸はいっぱいいっぱい──(善)
しおりを挟む「は、初めまして。か、鴨川……杏です」
身長推定175㎝ 体重推定65㎏ 血液の色は推定「緑色」 とっても地球に優しそう。「緑」は目にも優しそう。
わたしの目に映るのは「白」のカッターシャツと「黒」のパンツの柏葉さん──。
「……あ、あの」
ば、化けるの上手。柏葉さんは格好いい。そのサンプル誰だろう? 宇宙人は芸能人? わたしの皮と釣り合わないよ、柏葉さんの皮は。
でも、人間一皮剥けば、みんな一緒? 皮膚を剥げば、みんな一緒? そうだよね、理科室にある人体模型と見た目変わらないよね。
見た目の個性は皮と一緒に剥がされます。化かし合いの化けの皮。馬鹿馬鹿しいなら面白い? そうでもないかも。騙し合いも化かし合いも、人間社会には必要らしいのです。人間社会は経済社会。皮膚の上にある美しいという個性はお金になります。価値にもなります。勝ちにもなります。そうです、わたしは負け続け。負傷を負ってボロボロの皮膚も心も、完全降伏の完全無価値です。
人はそれを「ゴミ」と呼びます。わたしも「ゴミ」と呼ばれます。だから、わたしはこう思います──「エコ希望」 それはエゴだとも?
エコを決めるもの、エコをエゴと決めるのも結局は人間。人間にそんな決定権あげたの誰? 答えは──「さぁ?」
さぁ、踊りましょう。踊って忘れましょう。都合の悪いことは全部、踊って忘れましょう。
「……お、踊りますか?」
「……踊る?」
「それならわたしと踊りませんか?」
「……いや、踊らない。踊るよりも移動しよう。どこ行く?」
「線路は続くよどこまでも」
「…………」
お目目ぱちぱち柏葉さんは考え中。地球言語を解読中? 解読できたら、おめでとうの拍手。ぱちぱちぱち。
「そこのスタバでも行くか?」
「……す、すたば?」
油断大敵。不意を突かれたかも。未知の宇宙言語を返されました。未知に満ちてる柏葉さん。この謎を解く。
なぞなぞ。『すたばはすたばでも行くか行かないすたばってなぁーんだ?』答え──行くすたば。
「行きます」
どこでも。どこまでも──。
【KAFE「☆」BUCKS】
お洒落な店内。内装は落ち着いた雰囲気の吹き抜け構造。圧迫感はありません。
看板の「緑」と外観の「茶色」は地球を救えそう。木洩れ日の射す森の中にいるみたい。でも──。
わたしは場違いな感じ。ここは大人な感じ。ひまわりのブローチは合わないかも? 子供っぽい? ひまわりは太陽を探すみたいにきょろきょろ挙動不審です。
大人っぽい柏葉さんと子供っぽいわたし。店員さんっぽいお姉さん。「ご注文は?」安心できる場所をお願いします。
「ミックスサンドとソイラテ……は、HOTか? 鴨川」
「あ、温かいので」
「ソイラテはHOT。サイズはTall。俺はコーヒーのshortとフレンチトースト」
すごい。
柏葉さんは日本語ペラペラ。わたしよりも上手です。
地球の共通言語は英語なのに、地球の面積の1%にも満たない日本の言葉も習得済み? それとも入力済み? 宇宙人に反復学習とか考えられないから、UFO的USBで日本語データ入力なのかも。いいな、それ。
トレイを持って二階窓側。壁という壁は全部窓の窓側。太陽サンサンに賛成多数。役立つ麦わら帽子は顔も隠せていい感じ。赤い顔を伏せて赤い絨毯を見る。柏葉さんの顔は見られない……。
「改めて会ってみると本当にこど……少女だな。少女って言い方もおかしいか」
「い、いえ。わたしは少女です。森へ行くときは赤い頭巾を被りますし、冬はマッチを売ることもあります」
「赤い靴は履かないのか?」
「は、履きます。死ぬまで踊り続けます。で、でも……教会には通いません」
「そうだな。夏休み中、田舎に帰るときみたいな格好だしな。似合ってるぞ」
「……あ、ありがとうございます」
ほ、褒められた……。
似合ってる。お似合い。相性。組み合わせ。
例えば、クッキーにミルクティー。お煎餅に緑茶。ポップコーンにコーラ。
わたしには白ワンピに赤いリボンの麦わら帽子。ひまわりのブローチ。白いサンダル。白い恋人。恋人との相性。お似合いの二人。二人きりの時間。向かい合わせの椅子……。
向かい合わせの食事。食事中のお喋り。他愛のない話。話好き。好きなものの話。共通の話題。尽きないお喋り。足りない休憩時間。ウェストミンスターの不穏な響き。給食の終わり。終了の時間……。
「じ、時間……どうして? 待ち合わせよりも、だいぶ……早い……」
「ああ、本屋に寄ってたんだよ。今、WEB関連の本を探しててな」
柏葉さんは本を読む。地球言語は理解可能。地球共通語は英語。わたしに英語は理解不能。今夜の月は綺麗なアイラブユー。米人さんはアイニードゥー。身元不明は哀しいジョン・ドゥー。身元引受人は一生現れません。
「お前のほうこそ随分と早かったな。ぼー……と突っ立ってないで喫茶店にでも入ってれば良かったのに」
「ち、遅刻しないようにと思って……」
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