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第十四篇第三章 最悪の顛末
食事処 “育鶴”
しおりを挟むそして、場面は切り替わる。
此処は始まりの街コミンチャーレ。
其の港町リューグウに在る食事処“育鶴”。
此の日、此の人気の食事処は昼間から貸切と
なっていたのだが客は何と二人だけ。
そして、貸し切りでの宴席が設けられている
訳でも無く重たい空気が流れていた。
「ユーリさん…大丈夫でしょうか?」
「………済みません、マオさん。マオさんの料理でも食べれば少しは明るくなるかと踏んだのですが……」
厨房の中からひょこっと顔を出した女将マオ
はカウンターに座った准将パイロとの会話を
しながら一番奥の席で料理では無く酒を口に
入れ続けるU・Jを心配そうに眺める。
「………なあ、P・J……マオちゃん…」
「は、はいっ!」
「何でしょうか?U・J」
突然、口を開いたU・Jが視線は合わさずに
緩りとした口調で話し始めた。
「…………招集があった。帝国軍本部へのな」
「ええ、訊いています」
「………俺は、どうしたらいい…?」
其の言葉にパイロとマオは口篭もる。
そして、マオはとある日の記憶を掘り返して
頭の中で再生し始めた。
其れは、U・Jが仕事の関係でリューグウの
近くに訪れていた男を此処へ連れて来た日の
記憶であった。
『だははは…そんでよォ……コイツとはガキの頃からずーっと一緒なんだ…腐れ縁ってヤツよ』
『マオさんなら解ると思うッスけど、コイツと一緒に居てやってるのは俺の方ッスよ?』
『サーガさんも、少将さんも本当に仲がいいんですねぇ』
『んーー?なぁんでサーガが名前で俺だけ少将って呼び名なんだよ…マオちゃん』
『だってU・Jさんって呼ぶと“さん”はいらねぇって言うじゃないですか…呼び捨てにするのは抵抗あるんですもん』
『なら…“ユーリさん”って呼んでくれェ』
『……ユーリ…さん?』
『ああ、アレッスよ…ユーリック・ジャクソン・ブラッド…略してU・Jッスから…つか、U・Jのコト、“ユーリさん”って呼ぶ人は見た事無いッスわ……もしかして…マオさんに気があるんッスか?』
『……ふぇ…?』
『だははは…そんなんお前が居たら話せやしねーだろって…!』
『おっと、そりゃ失敬したッス』
マオは記憶のページを綴じる。
そして、U・Jの持つ悩みの種があのサーガ
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心の中で感じていた。
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「ですが、今回に至っては…招集に応じないというのは無理があるかと…」
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U・Jの瞳にまた一つ怒りが満ち始めた。
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