RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第八章 天下分け目の大戦・漆

千里の道も足下から始まる

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荒々しく吹き荒れる天候、吹雪の下、攻勢は
完全に転じる事となった。

持ち前の速度を封じられたルミナは此の状況
に於いて、博打を打たざるを得なくなる。

其れは、状況を完全に一変させる一撃を放ち
ソフィアの地盤を砕く事。

其れ即ち、ギフト授与者にとってあの奥義を
放つ以外に道は無くなったという事。

確率は、ほんの僅か。

だが、既に戦いを経て覚醒を継続して行って
いたルミナにとって持久性は厳しい。

勝算は低くとも、行かざるを得なかった。

覚悟は、決まった。



「絶技……」



ルミナが吹雪を裂く様に宙に舞う。

大地のギフトの特性“重力”を逆に作用させて
自身を無重力の身体へと変化させた。



 鳴奏楽曲・兎鈴脚めいそうがっきょく・とりんきゃくッッ!!!!」



其の一瞬の為に、耐えて来た開眼を果たすと
其の瞳にソフィアを映し込んだ。

そして、鈴の音を響かせながら蹴撃の応酬を
ソフィアに叩き込もうと旋回する。

だが、動き始めたソフィアと吹き荒れる吹雪
の前に其の応酬は、的を得なかった。



「ちょっ……マ?」



絶技が届かなかった事を察したルミナの頬に
冷や汗が滴り落ちる。

其れと同時にソフィアがルミナの真横を飛び
遥か空へと舞い上がって行く。



「私達が遅れた事にも意味がある……此の先に待ち受けるのは何方を引いても……安寧とは程遠いモノ……だけど、其れを果たそうとしている者が居る……。千里を一歩では進めない…私にとっても出来る限りの事はして来たつもり……だから……後は、其のスタートラインに事を乗せるだけッ!!心配は要らない……皆なら必ず果たすッ!!」



ソフィアが遥か空で吹雪を纏いながら氷の翼
を大きく広げて小太刀を交差させ、天空へと
突き上げて見せた。

其の、瞬間だった。



「絶技…… 天空舞翼・氷霧乃氷柱てんくうぶよく・ひょうむのつららッ!!」



空から降り注ぐ氷柱の雨。

其れは、激しくも美しく雨の様に降り注いで
大地に支柱を立てる様に突き刺さる。

其の苛烈な迄の、氷柱の雨にルミナは其の身
を貫かれ凍結した儘、横たわった。

ルミナの無念の涙すら凍り付き、氷の大地に
勝者の麗しき翼が舞い降りる。



「少なくとも此れで一歩……ディルの言う通り…きっと同盟軍の真打ち達が…時代の奔流に負けずやり遂げる……私達は信じて待つだけ、其の時を……だから…皆の想いを乗せたアレを……必ず届けて……」



ソフィアの口から溢れた言葉。

其れは恐らく、死蜘蛛狂天の幹部達が此処へ
遅れて参戦した理由なのだろう。

彼等は、何か楔を打って来た。

其れが何なのかは、未だ明かされぬモノ。

だが、時代を変える為の此の戦いの中に在り
其れは、大きな意味を齎すであろう。

ソフィアは、其れを信じて待っている。



帝国軍本部左翼、演習場前。

同盟軍ソフィアvs政府軍ルミナ。

勝者ソフィア・アインプテラ。
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