破滅の王子と武者倶楽部 美少女は秘密結社のエージェント♪

健野屋文乃(たけのやふみの)

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2章 地下街の秘密基地

9話 ヒロインはエロインです。

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女医は穂香を大切な娘を見るような目で見つめ、
「2人だけで行くの?」

「はい、そちらの方が良いと直感で感じるので」
「姫巫女候補生の直感を、私は尊重するけど、危ないと思ったらすぐに助けを求めるのよ」
「うん、ありがと」
「じゃあ穂香ちゃん、これを」

女医と一緒に、家臣の心得を教えてくれた桃色の制服を着た看護師が、スマホと小さな革の手帳を渡した。
茶色のとても地味で小さな手帳だ。

「今月分のIDとパスワードと暗号表」
「うん、ありがと」

あるじが、パラパラと捲ると、ぎっしり文字が見えた。
どんだけあるんだよ。しかし、暗号表って・・・

女医は、由良穂香の頬を愛おしそうに撫でて、僕をじっと見つめた。

「それじゃ穂香をよろしくね。」
「はい」
「いい家臣、そして、いい男になるんだよ。」
「はい」

クリニックを出ると、あるじは、スマホを操作した後、かざした。
「家臣くん、見て見て、うちの調査部仕様の最新式です」
スマホには、地下街を通りすがりの人の個人名が記されていた。

「めっちゃ個人情報じゃないですか!」
「ホント、みんな筒抜けな酷い世の中だよ」
「あんたらがね」

多分、操作すれば個人名以上の情報が出てくるのだろう。

「これは、うちの調査部が違法に取得した情報じゃなくてですね、
あちこちに流れている情報を、整理して表示しているだけなのです。
それなりの組織の人間なら、知っている可能性のある情報です。
そんな連中が知ってて、私たちが知らないってのは、情報戦において、不利になるのですよ。」

「う~ん」

まるでゲームの世界だ。
僕は異世界に飛ばされて訳ではなく、これは現実世界の出来事だ。

「見て見て見て、あの女の人、専務と浮気してるってさ」

綺麗なお姉さん系の美女が、旅行用の鞄を持って空港の方へ歩いていた。

「これから浮気旅行じゃない?
雰囲気からして・・・ひゃは♪そしてこれが、あのお姉さんの下着姿」
「あっ!」

あるじのスマホには、下着姿の女の人が写っていた。
目を隠しているが、間違いない!

「もう~家臣くんたら、エロインだから!ダメだぞ!」
「いや・・別に僕は・・。」
「ネットにエロい事晒すと、確実に流出するのです。
情報の管理は、秘密結社の命です。
『秘すれば花なり』です。はい、リピートアフタミー」
「秘すれば花なり」
「秘密にするからこそ、そこに力が生じるのです。
だから情報管理は徹底するのです。」
「しかし、調査部って基本変態なんですか?」
「家臣くん失礼です!
うちの調査部は決して変態では、ない・・・」
「あっ、でもこの写真は・・・・」
「えっ・・・・うん、はい、家臣くんの言う通りです。
うちの調査部は変態の集団です(溜息)
でも人は多かれ少なかれ変態です。
私だって、変態です。
なぜならヒロインはエロインだからです。」
「あるじはヒロインでエロインですか?」
「そうです、私はヒロインでエロインです。
家臣くんなんかより、ずっとエロインです。
でも、これ以上言うと、家臣くんが照れてしまうので、
控えておくのです。さて・・・気分を変えて、
私たちも浮気旅行に行きますか」

「浮気って・・本命もいないのに、浮気旅行は出来ないでしょう」
「雰囲気なのです(笑)
あの女の事は、今日はわ・す・れ・て・・ね」

あの女の事・・先ほどのクリニックでの事がよぎった・・・

「家臣くん!」
スマホを見ていた由良穂香が、僕の手を強く握って
「パターン黒です」
「えっ?」
「パターン黒、秘密結社員です。
あの人は秘密結社員です、家臣くん、隠れよう」
「敵?味方?」
「微妙・・・」

僕は、フードコーナーがあるパン屋に入った。
パン屋のフードコーナーには、仕事前のОLさんたちで、込み入っていた。

これから専務と浮気旅行に行くであろう、綺麗なお姉さんがクロワッサンを、食べている横の席に、僕らは座った。
綺麗なお姉さんの、ちょっと危険な色気に、あるじも、ちょっとドキドキな表情だ。

その結社員の男は、黒いジージャンを着こなし、少しだけ攻撃的な雰囲気を醸し出しながら、石畳の地下街を、黙々と歩いていた。
年齢は、25前後ってところかな。
濃いサングラスは、少しだけ目立っていた。
秘密結社員として、それはどうなんだろうか?

「でも、なんで隠れるんです?あるじも、秘密結社員でしょう」
「彼が、私を誘拐したグループの、バックにいる連中かも知れないのです。
可能性は薄いですが・・・用心に越した事はないのです。
それと彼は戦闘要員です。私たちなんか瞬殺です。」

その戦闘要員の男が間近に迫った瞬間、あるじの肘がコーヒーカップに当たり、
「ガシャン」と落ちる寸前に、
僕がコーヒーカップを受け止めることが出来た時は、
「あれ、僕は何かの能力者?」と勘違いしかねなかった。

しかし、なぜこの瞬間に、コーヒーカップを落とします?運なさすぎです!

「あるじくん、凄い!」
あるじは小声で囁き、僕は耳元であるじの息吹を感じた。
そして、
「あるじは、あなたです。」
「あは♪」

結社の戦闘要員の男は、僕らに気付くことなく、早朝の地下街に、姿を消した。

「彼は私たちに気付かず、私たちは気づいた。
これが、情報量の差だよ。この差が勝敗を分けるのです。」

あるじは僕の耳元で言った。
そして、

「あるじくん、後を付けるのです」
「あるじは、あなたです」
「あは♪」


つづく
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