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疫病の洞窟
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洞窟は街から1時間ほど歩いた所にあった
兵士に連れられて、ブレイブは洞窟の中に放り込まれる
空気はとてつもなく淀んでいて、普通の呼吸をするのも辛さを感じるほどであった
「ここで魔物に食われるか、それとも疫病で死ぬか、仲間と賭けてるんだ。食われるときは悲鳴を上げろよ。分かりやすくな」
ゲラゲラと笑う兵士の声が洞窟の奥まで響く
腹立たしさを感じながらも、テリジェに貰ったポーションをブレイブはグイッと飲み干そうとする
余りの奇々怪々な味に、うぶ…とえずきそうになりながらも何とか飲み込むと
疫病の渦を目指し、洞窟の奥へと進んだ
モンスターたちの眼が微かな光を反射する
じろじろとブレイブを見つめるモンスターたちの眼に敵意は浮かんでいなかった
流石魔王ディアボロス。眠る場所が遠くとも影響力は絶大らしい
魔王の恋人を襲おうとする者は居らず、興味深そうに眺めるモンスターが多かった
(これはこれで…嫌だな…)
何とも言えない居心地の悪さを感じ、無意識に歩みが早まる
空気の淀みが更に濃くなり始めると、ただ立っているだけでもゼエゼエと息が切れ始めた
足取りも次第に重くなり、壁にもたれ掛かって休息を取る
バロメの様に乗せてくれるモンスターは流石に居らず
じ…とその様子を眺める眼が光るだけであった
(テリジェの話だと丸一日かかるって言ってたな…くそ…いちいち休んでいたら、いつまで経っても奥に着かないか…)
鉛の様に重くなった体に鞭を打ち、何とか起き上がってブレイブは奥を目指した
歩みを進める度に、重力が何倍にも増したような重さが体に圧し掛かる
最奥に辿り着くころには
膝から崩れ落ち、這いつくばるほどになっていた
(ここが…っ…一番…奥…)
考える事すら気怠く感じる
目に見えない死の呪いが漂うであろうその場で、テリジェに渡された水晶を掲げる
シュウゥ…と空気が吸い込まれる様な音が聞こえると
次第に体の怠さが無くなり、気分もスっと楽になる
(これで目的は達成できた…って事だよな?)
六角状の透き通っていたキレイな水晶は
疫病を吸い取ったからか、灰色に濁り輝きを完全に失っていた
それを抱え、その場を後にする
行きよりも軽い足取りに安堵しながら、ブレイブは速足で洞窟の出口を目指した
出口の光が見えると、思わずブレイブは駆け出す
外に出るころには、日の出の時刻になっていた
「お、お前…どうやって生きて帰った!?」
待機していた兵士が戸惑い、ブレイブに槍を向ける
「錬金術師様の命令に従っただけだぜ。俺をこの場で殺して奪うか?どうやって錬金術師様に説明するつもりだ?俺がモンスターに食われず、疫病で死にもしなかったせいで、賭けで損したから殺しましたとでも言うのかよ」
その言葉に、グ…と兵士は言葉に詰まる
「クソ…人間に仇なす魔王の手先め」
「人の命で賭博してたやつが今更正義ぶるなって」
「黙れ!…錬金術師様の所に連れていく。厳重に拘束してな!!」
ブレイブは縄できつく縛られ、城の地下室へと連れていかれる
ケガをするかなどお構いなしに階段から放り投げられると
ブレイブは全身を殴打した
「い…っ~~~!?うぐ、げっほ、おえ」
「乱暴じゃのう…ほれ、薬をかけてやる」
テリジェに薬をジャバジャバとかけられると、たちまち痛みが無くなる
「助かった…あいつら本当に城の兵士かよ?」
「王国の闇じゃな。どの国にも存在するもんじゃ」
「腹立つどころじゃねえって…ほら、ちゃんと持ってきたぜ」
ブレイブは濁り切った水晶をテリジェに渡す
「うんうん。よくやってくれたのう。さて、ここからはかなり危険な錬成をする。その中でお主らには死んでもらおうかの」
「え、え?」
「本気で殺しはせんわ。儂の実験台になる過程で死んだという事にしておけばここから抜け出しやすくもなるじゃろ?」
「ああ、そういう事か…」
テリジェの息をするように言われるとんでもない言葉に、ブレイブは振り回される
「…そう言えば、お主…錬金術を学びたくはないかの?」
「え、そりゃ…学びたいさ」
「良い機会じゃ。儂から少しずつ学んでいくと良い。魔王の魔力を回復するものはそんなすぐ出来んからの。普通ならひと月かかる」
「そ、そんなにか…」
「まあ、儂が頑張れば1週間で終わる」
「いや、なら頑張ってくれよ」
「儂一人でそんな頑張れるか。お前にも手伝ってもらいたいんじゃ。その間に簡単な錬金術なら出来るようになろう。儂なら魔物を癒すものも作れるぞ?」
何とも気まぐれのように取れる言葉に
ブレイブはテリジェをじとっと見つめる
錬金術を教えると言っておきながら、自分の面倒を少しでも省きたいだけではないか…
とも思うが、ディアボロスを回復できる術も錬金術も学べるなら願ったり叶ったりだ
「分かった。教えてくれ」
「良い返事じゃ。じゃ、まずその辺の物を片づけて貰おうかのー」
「やっぱり面倒ごと押し付けたいだけだろ!」
ブレイブは1週間という短い間、テリジェから錬金術を学ぶことになったのだった
兵士に連れられて、ブレイブは洞窟の中に放り込まれる
空気はとてつもなく淀んでいて、普通の呼吸をするのも辛さを感じるほどであった
「ここで魔物に食われるか、それとも疫病で死ぬか、仲間と賭けてるんだ。食われるときは悲鳴を上げろよ。分かりやすくな」
ゲラゲラと笑う兵士の声が洞窟の奥まで響く
腹立たしさを感じながらも、テリジェに貰ったポーションをブレイブはグイッと飲み干そうとする
余りの奇々怪々な味に、うぶ…とえずきそうになりながらも何とか飲み込むと
疫病の渦を目指し、洞窟の奥へと進んだ
モンスターたちの眼が微かな光を反射する
じろじろとブレイブを見つめるモンスターたちの眼に敵意は浮かんでいなかった
流石魔王ディアボロス。眠る場所が遠くとも影響力は絶大らしい
魔王の恋人を襲おうとする者は居らず、興味深そうに眺めるモンスターが多かった
(これはこれで…嫌だな…)
何とも言えない居心地の悪さを感じ、無意識に歩みが早まる
空気の淀みが更に濃くなり始めると、ただ立っているだけでもゼエゼエと息が切れ始めた
足取りも次第に重くなり、壁にもたれ掛かって休息を取る
バロメの様に乗せてくれるモンスターは流石に居らず
じ…とその様子を眺める眼が光るだけであった
(テリジェの話だと丸一日かかるって言ってたな…くそ…いちいち休んでいたら、いつまで経っても奥に着かないか…)
鉛の様に重くなった体に鞭を打ち、何とか起き上がってブレイブは奥を目指した
歩みを進める度に、重力が何倍にも増したような重さが体に圧し掛かる
最奥に辿り着くころには
膝から崩れ落ち、這いつくばるほどになっていた
(ここが…っ…一番…奥…)
考える事すら気怠く感じる
目に見えない死の呪いが漂うであろうその場で、テリジェに渡された水晶を掲げる
シュウゥ…と空気が吸い込まれる様な音が聞こえると
次第に体の怠さが無くなり、気分もスっと楽になる
(これで目的は達成できた…って事だよな?)
六角状の透き通っていたキレイな水晶は
疫病を吸い取ったからか、灰色に濁り輝きを完全に失っていた
それを抱え、その場を後にする
行きよりも軽い足取りに安堵しながら、ブレイブは速足で洞窟の出口を目指した
出口の光が見えると、思わずブレイブは駆け出す
外に出るころには、日の出の時刻になっていた
「お、お前…どうやって生きて帰った!?」
待機していた兵士が戸惑い、ブレイブに槍を向ける
「錬金術師様の命令に従っただけだぜ。俺をこの場で殺して奪うか?どうやって錬金術師様に説明するつもりだ?俺がモンスターに食われず、疫病で死にもしなかったせいで、賭けで損したから殺しましたとでも言うのかよ」
その言葉に、グ…と兵士は言葉に詰まる
「クソ…人間に仇なす魔王の手先め」
「人の命で賭博してたやつが今更正義ぶるなって」
「黙れ!…錬金術師様の所に連れていく。厳重に拘束してな!!」
ブレイブは縄できつく縛られ、城の地下室へと連れていかれる
ケガをするかなどお構いなしに階段から放り投げられると
ブレイブは全身を殴打した
「い…っ~~~!?うぐ、げっほ、おえ」
「乱暴じゃのう…ほれ、薬をかけてやる」
テリジェに薬をジャバジャバとかけられると、たちまち痛みが無くなる
「助かった…あいつら本当に城の兵士かよ?」
「王国の闇じゃな。どの国にも存在するもんじゃ」
「腹立つどころじゃねえって…ほら、ちゃんと持ってきたぜ」
ブレイブは濁り切った水晶をテリジェに渡す
「うんうん。よくやってくれたのう。さて、ここからはかなり危険な錬成をする。その中でお主らには死んでもらおうかの」
「え、え?」
「本気で殺しはせんわ。儂の実験台になる過程で死んだという事にしておけばここから抜け出しやすくもなるじゃろ?」
「ああ、そういう事か…」
テリジェの息をするように言われるとんでもない言葉に、ブレイブは振り回される
「…そう言えば、お主…錬金術を学びたくはないかの?」
「え、そりゃ…学びたいさ」
「良い機会じゃ。儂から少しずつ学んでいくと良い。魔王の魔力を回復するものはそんなすぐ出来んからの。普通ならひと月かかる」
「そ、そんなにか…」
「まあ、儂が頑張れば1週間で終わる」
「いや、なら頑張ってくれよ」
「儂一人でそんな頑張れるか。お前にも手伝ってもらいたいんじゃ。その間に簡単な錬金術なら出来るようになろう。儂なら魔物を癒すものも作れるぞ?」
何とも気まぐれのように取れる言葉に
ブレイブはテリジェをじとっと見つめる
錬金術を教えると言っておきながら、自分の面倒を少しでも省きたいだけではないか…
とも思うが、ディアボロスを回復できる術も錬金術も学べるなら願ったり叶ったりだ
「分かった。教えてくれ」
「良い返事じゃ。じゃ、まずその辺の物を片づけて貰おうかのー」
「やっぱり面倒ごと押し付けたいだけだろ!」
ブレイブは1週間という短い間、テリジェから錬金術を学ぶことになったのだった
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