俺の彼女の彼氏は46人いるのでちょっと倒してくる

猫蕎麦

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3 第一村人発見

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 「なんだ一体……てか人いるのかよ???」

 俺が戸惑いつつも窓の外を見ようとすると、瑠猪が俺の服の裾を引っ張った。

 「なんだよ。伸びるからやめろ」

 「気をつけるにゃ。まずはカーテンの隙間からこっそり覗くべきだにゃ」

 お、おう……猫耳幼女に物騒なアドバイスを受け、とりあえず隙間からチラリと見てみる。そしていつもと景色が違うことに気づく。

 普段なら通りに面しているはずのその窓は、山道を映し出していた。いや、そこには実際に山道があった。家の反対側には竹林が並び、大分田舎のようだ。その道の端から、人影が近づいてくる。

 混乱する中、目を凝らす。するとその男は、馴染みのある服を身につけていた。

 「一体どうなってるんだ……瑠猪。なんか警察が来たみたいだぞ」

 「んーわかんにゃいけども。ケーサツってそんな簡単に拳銃を使うものかにゃ」

 確かに。さっき聞こえた発砲音は、誰に向けてのものだったのだろうか。辺りにはそれらしき人影は見当たらないし、警察官が争ったような形跡は見て取れない。

 「あと、なんで家の前に竹林があるんだ?」

 瑠猪は首を振る。

 「いやあ、さっぱりにゃ」

 やはり俺が知ってる情報とこいつが知ってる情報は大差ないと考えた方が良いだろうか。そんなことを考えていると、今度は例の警察がなにか叫んでいるのが聞こえてきた。

 「さあ出てこい!そこにいるのは分かっているんだ!!!俺はもう目が覚めているぞ。出てきてこんなことをした目的を話せ!」

 これは、俺に言っているのか?

 多分違うにゃ。

 幼女の目がそう言っていた。

 「くそっ。ほんとに誰もいないのか……しかもここ住所どうなってんだよ。右の電柱は岐阜で左の電柱は大阪?」

 確信が持てた。こいつは俺と同類だ。俺はカーテンをめくり、窓を勢いよく開けた。

 「あっ、ちょ待つにゃ!」

 「おい!あんたも訳もわからず閉じ込められたのか?」

 瑠猪の制止も気にせずそう呼びかけると、返事の代わりに銃弾が帰ってきた。目を大きく見開き、俺は視線を横にずらす。窓のフレームに円形の穴が空き、煙が立っていた。

 この一瞬でここまでの精度ということは、正面から勝負すれば歯が立たないだろう。そう思うと、背筋が凍った。

 「だ、だだ誰だっ!?!」

 「お、落ち着け……俺はあんたを攻撃したりしない。ここがどこか知らないのは同じなんだ」

 「そそそう言って油断した所を撃つ気だな!?」

 こいつさっきから決めつけが過ぎる……大体俺は素手だぞ。警察官かどうか疑いたくなる程の慌てようだ。

 でもそれもそうか。得体の知れない世界に放り込まれて、しかも俺とは違って1人きり。こいつの気持ちもわかる。

 「俺は武器になるものは何も持ってないよ。さっきも言った通り、俺もよく状況が飲めてない。多分あんたとおなじなんじゃないか?」

 まだ拳銃の先はこちらに向いたままだ。

 「ここはひとつ、情報交換といこうぜ?」

 そう言って、顔色をうかがう。しばらくの沈黙。そして、彼は口を開いた。

 「……いいだろう。ただし、妙な真似をしたら直ぐに撃つからな?」

 隣では不服そうに瑠猪がふくれっ面をしている。

 俺のボロアパートに、人生で2人目の客人がやってきた。まさかそれが拳銃持ちの警察官だとは夢にも思わなかったが。
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