俺の彼女の彼氏は46人いるのでちょっと倒してくる

猫蕎麦

文字の大きさ
3 / 4

2 意味も目的も謎のまま

しおりを挟む
 あいつに妹なんていただろうか。聞いたことがない。雪は相変わらずまっすぐと降り注いでいる。

 「にゃーはにゃんでか知らにゃいけど、君たちに呼び出されたにゃん」

 「いや、俺はお前みたいなやつ呼び出した記憶もないし、だいたい宇梨に妹がいることすら知らなかったんだぞ?」

 「だぁかぁらぁー!君『たち』って言っただろう?君じゃにゃくて君と一緒にいた男の人に呼び出されたんだにゃ」

 「あ、その可能性もあるのね……」

 俺は少し肩の力を抜いて、ため息をついた。

 「なんだか知らないけど、とりあえず一階にある電源の場所へ行かせてくれ。ここくっそ寒いわ!」

 ほんとにさっきから体が震えだしている。鳥肌なんてとっくのとうに全身鳥になっていた。そんなわけで瑠猪の脇を通ろうとすると、彼女が首を振って俺の服を引っ張った。

 「なんだよ」

 「この世界に電気はにゃいよ。残り46人、いや、にゃーを除いた45人と戦って、体をあっためるしかにゃいね」

 なんてことを言いやがる。こんな所にいたら凍え死ぬだけというわけか。

 「つまり、どうすりゃいいんだ?おまえはどれだけ知ってんだよ」

 「さぁねぇ。にゃーが知ってることをすべて話すより、君が知らにゃいことをすべて聞く方が効率がいいんじゃにゃいかにゃ?」

 た、確かに。つまり質問しろというわけだ。自分の状況を把握するには最もいい機会ではないか。

 「わかった、じゃあとりあえず中入れ」

 「はいよー!おっじゃましまぁーすっ!」

 俺が言うと、瑠猪は元気よく、それこそ猫のように駆け込んできた。犬のように尻尾を振りながら。

 自分の部屋には宇梨も入れたことがない。なかなか恥ずかしかったのだ。そう考えると、初めて招き入れたのがこの猫耳幼女ということになる。

 はぁー……俺はまたため息をついた。

 なんかお茶でも出すか、と思ったが、電気ケトルは使えないままだ。冷蔵庫も覗いてみれば、電源がついていない。冷凍庫ではアイスがドロドロに溶けていた。

 「じゃあ質問させてもらおうか……」

 結局手ぶらで戻り、ちゃぶ台で瑠猪と対面する。

 「にゃんにゃりと」

 「まず、昨日の夜。俺らに何があった」

 ふむふむと自分の耳を触りながら、瑠猪は答える。

 「昨日の夜はね、君はよくわかんにゃい男の人たちに連れてかれたんだよ。それでこの世界に送り込まれたのさ。宇梨ちゃんもその人たちに連れてかれたけど、こっちの世界には来てにゃいみたいだね。にゃんでかわかんにゃいけど、にゃーはそれだけは知ってるんだよね」

 「その男の人たちって誰だ?」

 「それはにゃーにもわかんにゃいにゃ」

 うぅ。つい嫌な顔をしてしまう。別の質問に移すか。

 「じゃあ次にお前は本当に宇梨の妹か?」

 「当たり前だにゃ」

 「じゃあ何でお前は全ての都道府県の彼氏代わりになれるんだ?性別も違うしこんな危ないことさせられるなんて」

 「だからわかんにゃいってば!にゃーは君と同じでその男の人たちに連れてこられたんだから!」

 イライラしているようだ。

 「ちなみに儀式っていうのは??」

 「うーん……にゃんか、日本全国から人質が必要だとか、それくらいしかわかんにゃいにゃ。儀式の意味とかはさっぱり」

 「うーん……じゃああとお前のその喋り方と格好!!!!なんなんだよ!!人じゃねーじゃんか!!」

 「目が覚めたらここにいたんだってば!!!!喋り方はにゃんかそれっぽく話してるだけだよ!!!!」

 誰もいないであろうアパートで、静かな部屋に怒鳴り声が響き合う。少し落ち着いてから俺は口を開く。

 「とりあえず、お前の情報が役に立たないことがわかった」

 「失礼だにゃあ。全く」

 すると瑠猪は、床に横になって寝始めた。しばらくの沈黙。その沈黙を破ったのは、瑠猪の呟きだった。

 「まぁ、にゃーはずっとこの世界にいる気がするんだけどね……にゃんでだろ。現実世界での記憶が一切おもいだせにゃいんだ。宇梨ちゃんの妹だったことしか……」

 「……」

 こいつにもなんか色々と事情があるんだろうか……。俺は彼女を睨みつける。その時だった。

 外で銃声が聞こえた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...