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1 猫耳の幼女
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圏外……だと?
俺は自分の携帯を見ると使えなくなっていることに気づく。Wi-Fiは通ってるはずだが、ルーターを見てみると電源が切れていた。
え、でもだって……
俺が住んでいるアパートの電力源は一階にある。そこに行くために、二階にいた俺は部屋を飛び出した。
だがその瞬間、いつもの光景に違和感があった。
「静かすぎる……」
しんしんと降りしきる雪の他に、動くものが見えない。二階から見える景色には都会らしいビル達、道路も含まれるのだが、自動車も歩行者も、カラスも川の魚も何もかもが、気配がしない。
生きているものの気配がない。
ドンッ
そう思った直後だったのに。
「っててて……」
ドアに何かがぶつかり、可愛らしい女の声がする。何かと思って見てみれば、そこにいたのは人ではなかった。
「ね、猫耳……??」
戸惑う俺に、そいつは顔を上げてにっこり笑う。
「あ、えっと、ようこそ別世界へ?とでも言うべきかにゃ?」
おいおいここに来てまさかの異世界話かよ……。だがどうだろう、人の気配がしないところ以外に、特に景色には変わった点は見当たらない。確かに目の前にいるこいつは、人間には見えないが……後ろの方でゆらゆらと揺れる尻尾を見ながらそう考える。
「別世界って、どーゆう事だ」
「ここは現実世界ではないんだにゃ。にゃんか、君、大阪にいたけど、ほんとは違うんだって?」
少し体がこわばる。確かに俺は大阪府ネイティブではない。実は東京から大阪に大学になってから越して来たばかりなのだ。お気づきの方もいると思うが、さっきから標準語しか喋っていない。
「でもそれと何の関係が……」
そう言うと、ふんすと息を吐いて猫耳幼女がドヤ顔をする。
「儀式には全国の血筋47人が必要だにゃ。宇梨ちゃんは東京都出身だから、自分の出身地で彼氏を作らにゃきゃにゃらにゃいのを見落としてた。それで、君はホントは東京都の彼氏ににゃるから、どの都道府県民にもなれるにゃーがジョーカーに選ばれたにゃん」
いきなり長文の説明だ。途中噛みそうなセリフがあったが……とにかくただでさえ意味わかんないのに、頭がこんがらがってくる。とりあえずあれだ。こいつは自分のことを『にゃー』と呼ぶらしい。
「儀式ってなんだ?」
「それはにゃーにもわかんにゃいよ」
出た。都合のいいとこで話せなくなるやつ。すました顔の猫耳を睨みつける。冬らしくない澄んだ水色のワンピースを着ていて、スカートの下から茶色い尻尾が覗いている。顔つきは猫そっくりだが、猫らしい髭はなかった。そこまで観察して、お決まりの質問だ。
「てか、お前誰だよ」
すると本日2度目のドヤ顔をいただいた。
「にゃーのにゃまえは琴咲瑠猪。宇梨ちゃんの妹だにゃん」
「は?」
にゃはーと柔らかい笑顔を見せる瑠猪。俺が聞き返すのに一秒もかからなかった。
俺は自分の携帯を見ると使えなくなっていることに気づく。Wi-Fiは通ってるはずだが、ルーターを見てみると電源が切れていた。
え、でもだって……
俺が住んでいるアパートの電力源は一階にある。そこに行くために、二階にいた俺は部屋を飛び出した。
だがその瞬間、いつもの光景に違和感があった。
「静かすぎる……」
しんしんと降りしきる雪の他に、動くものが見えない。二階から見える景色には都会らしいビル達、道路も含まれるのだが、自動車も歩行者も、カラスも川の魚も何もかもが、気配がしない。
生きているものの気配がない。
ドンッ
そう思った直後だったのに。
「っててて……」
ドアに何かがぶつかり、可愛らしい女の声がする。何かと思って見てみれば、そこにいたのは人ではなかった。
「ね、猫耳……??」
戸惑う俺に、そいつは顔を上げてにっこり笑う。
「あ、えっと、ようこそ別世界へ?とでも言うべきかにゃ?」
おいおいここに来てまさかの異世界話かよ……。だがどうだろう、人の気配がしないところ以外に、特に景色には変わった点は見当たらない。確かに目の前にいるこいつは、人間には見えないが……後ろの方でゆらゆらと揺れる尻尾を見ながらそう考える。
「別世界って、どーゆう事だ」
「ここは現実世界ではないんだにゃ。にゃんか、君、大阪にいたけど、ほんとは違うんだって?」
少し体がこわばる。確かに俺は大阪府ネイティブではない。実は東京から大阪に大学になってから越して来たばかりなのだ。お気づきの方もいると思うが、さっきから標準語しか喋っていない。
「でもそれと何の関係が……」
そう言うと、ふんすと息を吐いて猫耳幼女がドヤ顔をする。
「儀式には全国の血筋47人が必要だにゃ。宇梨ちゃんは東京都出身だから、自分の出身地で彼氏を作らにゃきゃにゃらにゃいのを見落としてた。それで、君はホントは東京都の彼氏ににゃるから、どの都道府県民にもなれるにゃーがジョーカーに選ばれたにゃん」
いきなり長文の説明だ。途中噛みそうなセリフがあったが……とにかくただでさえ意味わかんないのに、頭がこんがらがってくる。とりあえずあれだ。こいつは自分のことを『にゃー』と呼ぶらしい。
「儀式ってなんだ?」
「それはにゃーにもわかんにゃいよ」
出た。都合のいいとこで話せなくなるやつ。すました顔の猫耳を睨みつける。冬らしくない澄んだ水色のワンピースを着ていて、スカートの下から茶色い尻尾が覗いている。顔つきは猫そっくりだが、猫らしい髭はなかった。そこまで観察して、お決まりの質問だ。
「てか、お前誰だよ」
すると本日2度目のドヤ顔をいただいた。
「にゃーのにゃまえは琴咲瑠猪。宇梨ちゃんの妹だにゃん」
「は?」
にゃはーと柔らかい笑顔を見せる瑠猪。俺が聞き返すのに一秒もかからなかった。
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