推理問答部は謎を呼ぶ -Personality Log-

猫蕎麦

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第2章>仔羊の影踏[ゾンビ・アポカリプス]

Log.53 death game

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 「お前の目的は一体なんなんだ」

 俺がそう聞くと、咲夜は眉を曲げ頬を釣り上げ顎を突き出し、実に薄気味悪いにやけ顔を作る。

 「あぁぁ……もぅ……そのセリフよぉぅ……。俺が何十年も夢に見ていたやつだぁ……鳥肌もんですなぁ」

 お前が鳥肌もんだよ。そう突っ込むのをなんとか堪えると、咲夜は続けた。

 「俺はねーぇ?小さい頃に見たアニメでねぇ、VRMMOでデスゲームをするってゆー……もぉその展開を聞いただけで目が覚めたんだぁ。ラスボスになって挑戦者をぶちのめすのはどんなに楽しいかってねぇ!」

 出来ればずっと目覚めずに眠ってて欲しかった。だがとりあえず、何となく状況は掴めてきている。

 俺には理解できないし、どんな環境で育ったのかも知らないが、それがこいつの人格なのだろう。

 「それにしてもぉ……美頼ちゃんはコミュ障って聞いてたのに、結構強気じゃないかぁ。まあ嫌いじゃないけどねぇ。秋君、君もなんか喋ったらどうだい?」

 美頼がその言葉に俺の方を見る。俺は小声で話す。

 「アキ、もしかして……」

 「あぁ、多分あいつは俺らが入れ替わってるのを知らない。本当にたまたま入れ替わったみたいだ」

 そこで話を切って、少し考えてから俺は続けた。

 「一応、美頼はとにかく俺のフリをしろ。コミュ障とか関係ない、俺になりきるんだ。いいな?」

 「わ、わかった。がんばる」

 そして俺は咲夜に向き直った。

 「麻尋は?麻尋ちゃんはどこにいるの?」

 「ん?ぁあ、彼女ならここだよぉ。君たちがゲームに勝ったらぁ返してやろう。ただし負けたらみんなお陀仏だぁ」

 咲夜が指さした先には、何か生物兵器でも育ててそうな、謎の液体入りのタンクがあった。その中には制服姿の薪原が浮かんでいた。まだ目は覚めていないようだ。

 それを見ると同時に、麻尋と瓜二つの優衣さんのことが思い浮かぶ。俺は歯を噛み締めた。

 「ゲームってなんだよ」

 そう言ったのは俺じゃない。声のした方を見れば、美頼が頑張っていた。

 「おっ、よぉやく喋ってくれたねぇ。実を言うとねぇ、俺ぁ美頼ちゃんには興味ねんだぁ。仲山秋、君の方が戦いがいがあると思ってねぇ」

 そう言いながら咲夜は歩き回る。そして足を止めた。

 「将棋だよ」

 「将棋?」

 「ぁあ。王将は君と俺。美頼ちゃんは捨て駒として使ってくれて構わねぇ。特別に彼女の痛覚システムも解除しておこう。ここで死んでも死ぬこたぁないよ」

 電気ショックが機能しないということか。

 「ただ、仲山秋。君がここで死ねばぁ……みんな死ぬ。麻尋ちゃんも美頼ちゃんもねぇ」

 そう言って咲夜はまた気味の悪い笑みを浮かべる。どこからともなく台車が運ばれてきて、俺たちの前に停まった。見ると、何本か刀が並べてある。

 「武器はそこから使ってくれていいよ。"侍"ってのを一回やってみたかったんだぁ。もちろん、君たちが持っている飛び道具は、無効化させてもらおう」

 既に持っていたのか、咲夜はいつの間にか手元にある鞘から刀を抜いた。風を切る良い音が聞こえる。

 拳銃を確かめてみると、確かに引き金が引けなくなっていた。全てコントロールされているのか。

 未だにこの行為の意味がわからない。だが、ここはひとまず奴に勝つしか手段はなさそうだ。

 俺も一つ、黒光りする長めの鞘をつかんで、つかを握り引っ張る。シャキッという効果音とともに、刀身が姿を見せた。

 美頼の方は短刀を選んでいた。もちろん姿は俺の体だ。

 「じゃぁもう準備はいいかい?始めようかぁ!」

 そして、咲夜は初っ端から俺に切りかかってきた。

 

 いや、正しくは、俺の体に入った美頼に。
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