82 / 92
第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
Log.76 カイダンループ
しおりを挟む
「出口あったよ~!!」
麻尋の脳天気な声が聞こえる。その声に顔を上げて、あるものが目に入った。先ほどの見覚えのあるLED電球、さらにその先に隙間風が吹いてくる壁のヒビ割れ。
「ループしてたってことか……!」
階段と天井、壁、全てが細切れにパーツのようになっていて、俺らがしばらく登ることで、元来た道のパーツが分解され、向かっている先の上部のパーツに成り代わる。エスカレーターのような仕組みだったらしい。
つまり今回は階段の最上部に麻尋が走って近づいたために、それに合わせてカラクリが動き、階段の下部が一瞬で上部に使われる為に無くなった。その無くなった部分に俺と辻堂、そして美頼がいた。なぜ一番下の辻堂ではなく真ん中の美頼が落ちたのかは謎だが、そういうことだろう。
これが本当だとしたら、かなりの大仕掛けだ。
「秋山?みよっち?ももちー?どうしたの??」
呼んでて頭こんがらがらないのかこいつは。上から不安そうな声が近づいてくる。それとともに、先程まであった穴の部分に階段が追加される。美頼が落ちたと思われる奈落は、段々と塞がれていった。
「美頼が……落ちた」
しばらくの沈黙。
「……はあ?!」
麻尋の怒号。すぐに上からその声の主が駆け下りてくる。駆け下りてきたことで、美頼が落ちた穴は完全に塞がれてしまった。
「落ちるところがどこにあんのよ!!」
「この階段はカラクリ仕掛けでループしてたんだよ。俺らがここにいて、麻尋が上に行ったからお前のほうに階段を追加するためにこちら側の階段がどんどん消えたんだ」
疑問符を3つほど浮かべる麻尋に、もう少し詳しく説明する。すると理解したのだろう。ムスッとしていた彼女の顔は、バツの悪そうな顔に早変わりした。そして核心をつく。
「それってつまり……ウチがみよっちを落としたみたいなもんじゃん……」
「……まあ、な」
だが落胆している場合ではない。恐らくみんな死んではいないだろう、という仮定のもとで前に進むしかないのだ。いやそれにしても、気になることは……。
「まあいいや。とりあえず誰か1人ここに残れば、あとの2人は出口にたどり着けるってわかったわね」
……まあいいや?流石にその言い方は不謹慎じゃないか。俺が麻尋を睨むと、首を傾げてこちらを見返してくる。
「そうね……一回私がここに残るから、2人は先に行ってもらって構わないわ」
辻堂は何事もなかったかのように続ける。2人ともどうかしてないか?そう言いかけ口を開くが、麻尋に遮られた。
「おっけー!ウチらにまっかしといて!」
「お、おい麻尋……」
元気いっぱいの麻尋に引っ張られて、成す術なく最上部まで連れて行かれてしまった。なるほど確かに。出口らしき扉がある。入ってきた時の隠し扉とは違う、あからさまな木の扉だ。俺は息を吸い込む。
「よし、慎重に行くぞ。この先なにが待ち構えているか……」
「こんちゃーっす」
俺がセリフを言い切る前に、麻尋がなんの躊躇いもなく扉を開けた。
「おいお前!楽しみすぎだろ!!開けた瞬間弓矢にでも射たれたらどうするんだ!」
「まあその時は避ければいいし、なんとかなるっしょ。死なないんだし」
平然とキョロキョロ扉の先を覗く麻尋。一体その自信はどこから湧いてくるんだ。本当に死なないという保証はないのに。
「お、なんかあるよ。これは……」
マネキンだ。部屋の中央に堂々とマネキンが立っている。その先に何個か扉があるが、とにかくこのマネキンは……。
「人の代わりに、なるかもな」
俺の一言に、麻尋があからさまに大喜びする。
「つまりこれをモモちーのとこに持ってけばいいのか!よしきたまかせろい」
マネキンを抱えに行こうと足を踏み出す麻尋を、俺は止める。
「待て待て待て。お前さっきからおかしいぞ。まあ最初からおかしかった気もするが……どうしてそんな能天気なんだ」
「うーん。だってさぁ……いや、ごめん」
なんだ。意外と素直じゃないか。静まってくれれば話は早い。
「それより相談したいことがあるんだが」
「え?なに?」
このゲームの目標はなんだったか。11年前の人殺しを殺すことだ。そして今もまだゲームは続いている。死んでいないのは俺、麻尋、そして辻堂の3人だけ。
「このゲームを早く終わらそうぜ」
麻尋の脳天気な声が聞こえる。その声に顔を上げて、あるものが目に入った。先ほどの見覚えのあるLED電球、さらにその先に隙間風が吹いてくる壁のヒビ割れ。
「ループしてたってことか……!」
階段と天井、壁、全てが細切れにパーツのようになっていて、俺らがしばらく登ることで、元来た道のパーツが分解され、向かっている先の上部のパーツに成り代わる。エスカレーターのような仕組みだったらしい。
つまり今回は階段の最上部に麻尋が走って近づいたために、それに合わせてカラクリが動き、階段の下部が一瞬で上部に使われる為に無くなった。その無くなった部分に俺と辻堂、そして美頼がいた。なぜ一番下の辻堂ではなく真ん中の美頼が落ちたのかは謎だが、そういうことだろう。
これが本当だとしたら、かなりの大仕掛けだ。
「秋山?みよっち?ももちー?どうしたの??」
呼んでて頭こんがらがらないのかこいつは。上から不安そうな声が近づいてくる。それとともに、先程まであった穴の部分に階段が追加される。美頼が落ちたと思われる奈落は、段々と塞がれていった。
「美頼が……落ちた」
しばらくの沈黙。
「……はあ?!」
麻尋の怒号。すぐに上からその声の主が駆け下りてくる。駆け下りてきたことで、美頼が落ちた穴は完全に塞がれてしまった。
「落ちるところがどこにあんのよ!!」
「この階段はカラクリ仕掛けでループしてたんだよ。俺らがここにいて、麻尋が上に行ったからお前のほうに階段を追加するためにこちら側の階段がどんどん消えたんだ」
疑問符を3つほど浮かべる麻尋に、もう少し詳しく説明する。すると理解したのだろう。ムスッとしていた彼女の顔は、バツの悪そうな顔に早変わりした。そして核心をつく。
「それってつまり……ウチがみよっちを落としたみたいなもんじゃん……」
「……まあ、な」
だが落胆している場合ではない。恐らくみんな死んではいないだろう、という仮定のもとで前に進むしかないのだ。いやそれにしても、気になることは……。
「まあいいや。とりあえず誰か1人ここに残れば、あとの2人は出口にたどり着けるってわかったわね」
……まあいいや?流石にその言い方は不謹慎じゃないか。俺が麻尋を睨むと、首を傾げてこちらを見返してくる。
「そうね……一回私がここに残るから、2人は先に行ってもらって構わないわ」
辻堂は何事もなかったかのように続ける。2人ともどうかしてないか?そう言いかけ口を開くが、麻尋に遮られた。
「おっけー!ウチらにまっかしといて!」
「お、おい麻尋……」
元気いっぱいの麻尋に引っ張られて、成す術なく最上部まで連れて行かれてしまった。なるほど確かに。出口らしき扉がある。入ってきた時の隠し扉とは違う、あからさまな木の扉だ。俺は息を吸い込む。
「よし、慎重に行くぞ。この先なにが待ち構えているか……」
「こんちゃーっす」
俺がセリフを言い切る前に、麻尋がなんの躊躇いもなく扉を開けた。
「おいお前!楽しみすぎだろ!!開けた瞬間弓矢にでも射たれたらどうするんだ!」
「まあその時は避ければいいし、なんとかなるっしょ。死なないんだし」
平然とキョロキョロ扉の先を覗く麻尋。一体その自信はどこから湧いてくるんだ。本当に死なないという保証はないのに。
「お、なんかあるよ。これは……」
マネキンだ。部屋の中央に堂々とマネキンが立っている。その先に何個か扉があるが、とにかくこのマネキンは……。
「人の代わりに、なるかもな」
俺の一言に、麻尋があからさまに大喜びする。
「つまりこれをモモちーのとこに持ってけばいいのか!よしきたまかせろい」
マネキンを抱えに行こうと足を踏み出す麻尋を、俺は止める。
「待て待て待て。お前さっきからおかしいぞ。まあ最初からおかしかった気もするが……どうしてそんな能天気なんだ」
「うーん。だってさぁ……いや、ごめん」
なんだ。意外と素直じゃないか。静まってくれれば話は早い。
「それより相談したいことがあるんだが」
「え?なに?」
このゲームの目標はなんだったか。11年前の人殺しを殺すことだ。そして今もまだゲームは続いている。死んでいないのは俺、麻尋、そして辻堂の3人だけ。
「このゲームを早く終わらそうぜ」
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる