推理問答部は謎を呼ぶ -Personality Log-

猫蕎麦

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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.76 カイダンループ

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 「出口あったよ~!!」

 麻尋の脳天気な声が聞こえる。その声に顔を上げて、あるものが目に入った。先ほどの見覚えのあるLED電球、さらにその先に隙間風が吹いてくる壁のヒビ割れ。

 「ループしてたってことか……!」

 階段と天井、壁、全てが細切れにパーツのようになっていて、俺らがしばらく登ることで、元来た道のパーツが分解され、向かっている先の上部のパーツに成り代わる。エスカレーターのような仕組みだったらしい。

 つまり今回は階段の最上部に麻尋が走って近づいたために、それに合わせてカラクリが動き、階段の下部が一瞬で上部に使われる為に無くなった。その無くなった部分に俺と辻堂、そして美頼がいた。なぜ一番下の辻堂ではなく真ん中の美頼が落ちたのかは謎だが、そういうことだろう。

 これが本当だとしたら、かなりの大仕掛けだ。

 「秋山?みよっち?ももちー?どうしたの??」

 呼んでて頭こんがらがらないのかこいつは。上から不安そうな声が近づいてくる。それとともに、先程まであった穴の部分に階段が追加される。美頼が落ちたと思われる奈落は、段々と塞がれていった。

 「美頼が……落ちた」

 しばらくの沈黙。

 「……はあ?!」

 麻尋の怒号。すぐに上からその声の主が駆け下りてくる。駆け下りてきたことで、美頼が落ちた穴は完全に塞がれてしまった。

 「落ちるところがどこにあんのよ!!」

 「この階段はカラクリ仕掛けでループしてたんだよ。俺らがここにいて、麻尋が上に行ったからお前のほうに階段を追加するためにこちら側の階段がどんどん消えたんだ」

 疑問符を3つほど浮かべる麻尋に、もう少し詳しく説明する。すると理解したのだろう。ムスッとしていた彼女の顔は、バツの悪そうな顔に早変わりした。そして核心をつく。

 「それってつまり……ウチがみよっちを落としたみたいなもんじゃん……」

 「……まあ、な」

 だが落胆している場合ではない。恐らくみんな死んではいないだろう、という仮定のもとで前に進むしかないのだ。いやそれにしても、気になることは……。

 「まあいいや。とりあえず誰か1人ここに残れば、あとの2人は出口にたどり着けるってわかったわね」

 ……まあいいや?流石にその言い方は不謹慎じゃないか。俺が麻尋を睨むと、首を傾げてこちらを見返してくる。

 「そうね……一回私がここに残るから、2人は先に行ってもらって構わないわ」

 辻堂は何事もなかったかのように続ける。2人ともどうかしてないか?そう言いかけ口を開くが、麻尋に遮られた。

 「おっけー!ウチらにまっかしといて!」

 「お、おい麻尋……」

 元気いっぱいの麻尋に引っ張られて、成す術なく最上部まで連れて行かれてしまった。なるほど確かに。出口らしき扉がある。入ってきた時の隠し扉とは違う、あからさまな木の扉だ。俺は息を吸い込む。

 「よし、慎重に行くぞ。この先なにが待ち構えているか……」

 「こんちゃーっす」

 俺がセリフを言い切る前に、麻尋がなんの躊躇いもなく扉を開けた。

 「おいお前!楽しみすぎだろ!!開けた瞬間弓矢にでも射たれたらどうするんだ!」

 「まあその時は避ければいいし、なんとかなるっしょ。死なないんだし」

 平然とキョロキョロ扉の先を覗く麻尋。一体その自信はどこから湧いてくるんだ。本当に死なないという保証はないのに。

 「お、なんかあるよ。これは……」

 マネキンだ。部屋の中央に堂々とマネキンが立っている。その先に何個か扉があるが、とにかくこのマネキンは……。

 「人の代わりに、なるかもな」

 俺の一言に、麻尋があからさまに大喜びする。

 「つまりこれをモモちーのとこに持ってけばいいのか!よしきたまかせろい」

 マネキンを抱えに行こうと足を踏み出す麻尋を、俺は止める。

 「待て待て待て。お前さっきからおかしいぞ。まあ最初からおかしかった気もするが……どうしてそんな能天気なんだ」

 「うーん。だってさぁ……いや、ごめん」

 なんだ。意外と素直じゃないか。静まってくれれば話は早い。

 「それより相談したいことがあるんだが」

 「え?なに?」

 このゲームの目標はなんだったか。11年前の人殺しを殺すことだ。そして今もまだゲームは続いている。死んでいないのは俺、麻尋、そして辻堂の3人だけ。


 「このゲームを早く終わらそうぜ」
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