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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]
Log.75 アブナイゾーン
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麻尋が見つけた隠し扉の先には、仄暗く長い階段があった。弱々しい光を放っている裸電球が、壁沿いに点々と続いている。壁には約1メートルごとに、縦に線が入っている。だがその光が弱すぎるのか、階段の先は暗く見えないままだった。
「えーと……ウチらここを行くの?」
「お前が開けたんだからお前一番前な」
「は?!秋山あんたそれでも男かよ」
「仲山だ」
辻堂の方が何か仕掛けに詳しいかと思い聞いてみたが、初めて見た場所だという。この家に入り浸っていた割に、あまり役に立たない。階段に足を踏み入れたが、古臭く軋むことはなかった。意外としっかりしている。一同はゆっくりと進み始めた。順番は、麻尋、俺、美頼、辻堂といった感じだ。
「ところで」
みんな黙って進む中、後ろから辻堂の声がした。
「仲山くんのお父さん、なぜ亡くなったのかしら」
「ん?なぜそんなことを聞く」
「ちょうど11年前じゃない。気になったのよ」
「まさかまだ俺が殺人犯だと疑ってるのか??」
「や、やめてよ!!アキは殺人犯じゃないよ!!」
なぜか必死で俺のことを庇う美頼。その時、一際大きな電球が俺たちを照らす。目を細めながらよく見ると、この電球は一つだけLEDのようだった。
「できるならそのもう1人の仲山くんと話したいくらいなんだけれど」
「最近は意識して父さんのこと思い出さないようにしてるんだ。なかなか入れ替わりはしないぞ。だいたい入れ替わったところで面倒なだけなんだ」
そう言ってから、気づく。麻尋が俺よりだいぶ前に進んでいることに。そして彼女の服装は清楚系のワンピースだ。ふと壁の切れ目から隙間風が吹く。
「まひろん登りすぎ!!アキの変態!!」
「へ?」
その瞬間後ろから美頼が俺に飛びつき、目を塞いできた。麻尋が振り返ってニヤつく。
「あらあら、秋山くんも思春期ねぇ」
「……とんだ言いがかりだ」
不本意だと口を尖らせながらも、ほんの少しだけ期待してしまった自分に恥じらいを覚えた。ただ、後に俺たちは知ることになる。そう呑気にしている間にも、異変は起こり続けていたのだ。
「ねえアキ、なんかおかしくない?」
階段を登りはじめてから何分経ったのだろうか。だいぶ登っているはずなのだが……。
「あぁ。終わりが見えないな、この階段」
「もうウチら10階分くらいは登ってない?」
「ここがカラクリ屋敷の中だとしたら、3階建て。そんなに登る高さはないはず……まさか別の建物なのかしら」
辻堂の焦ったような声が聞こえてくる。俺は辺りを見回しながら聞いた。
「でもお前、さっきの部屋は見たことあるんだろ?」
「え、ええ……」
壁に耳を当ててみたり、真上にあるLED電球を調べたりしていると、視界の隅に辻堂の顔が目に入る。だがそれは、声色に似合わないやけに落ち着いた顔だった。いや、かと思えばすぐに不安そうな顔に戻ったので、気のせいだったのかもしれない。
「ちょっとウチ、どれくらい上があるか見てくるわ」
「お前いつからそんな積極的になったんだ。てか変に動かない方が……」
「大丈夫だってば!」
にひひと笑って彼女は走り出す。すぐに麻尋の後ろ姿は闇の中へと消えていった。だが急に歯車のような音が大きく聞こえるようになる。
ガタガタガタガタ……
「あ、なんか一番上っぽいとこ来たよ!!」
そう麻尋の声が聞こえてきた瞬間だった。歯車の音はだんだん大きくなって、止まった。そして、
「きゃあっ!?」
「美頼!?」
俺が前に気を取られている隙に、後ろで何か起こっていた。声がした方を振り向くが、そこには1人分の人影しかない。
「辻堂!!美頼はどうした!?」
「ごめんなさい……ほんとに……」
辻堂の声は震えている。そんな彼女に近づくと、嫌でも状況が理解できた。
先ほどまであったはずの場所に、辻堂の足元から後ろに、階段はなかった。真っ暗な深い闇があるだけだった。つまり美頼は……
「落ち……たのか……?」
暗闇からは涼しい風がゆっくりと吹いていた。
「えーと……ウチらここを行くの?」
「お前が開けたんだからお前一番前な」
「は?!秋山あんたそれでも男かよ」
「仲山だ」
辻堂の方が何か仕掛けに詳しいかと思い聞いてみたが、初めて見た場所だという。この家に入り浸っていた割に、あまり役に立たない。階段に足を踏み入れたが、古臭く軋むことはなかった。意外としっかりしている。一同はゆっくりと進み始めた。順番は、麻尋、俺、美頼、辻堂といった感じだ。
「ところで」
みんな黙って進む中、後ろから辻堂の声がした。
「仲山くんのお父さん、なぜ亡くなったのかしら」
「ん?なぜそんなことを聞く」
「ちょうど11年前じゃない。気になったのよ」
「まさかまだ俺が殺人犯だと疑ってるのか??」
「や、やめてよ!!アキは殺人犯じゃないよ!!」
なぜか必死で俺のことを庇う美頼。その時、一際大きな電球が俺たちを照らす。目を細めながらよく見ると、この電球は一つだけLEDのようだった。
「できるならそのもう1人の仲山くんと話したいくらいなんだけれど」
「最近は意識して父さんのこと思い出さないようにしてるんだ。なかなか入れ替わりはしないぞ。だいたい入れ替わったところで面倒なだけなんだ」
そう言ってから、気づく。麻尋が俺よりだいぶ前に進んでいることに。そして彼女の服装は清楚系のワンピースだ。ふと壁の切れ目から隙間風が吹く。
「まひろん登りすぎ!!アキの変態!!」
「へ?」
その瞬間後ろから美頼が俺に飛びつき、目を塞いできた。麻尋が振り返ってニヤつく。
「あらあら、秋山くんも思春期ねぇ」
「……とんだ言いがかりだ」
不本意だと口を尖らせながらも、ほんの少しだけ期待してしまった自分に恥じらいを覚えた。ただ、後に俺たちは知ることになる。そう呑気にしている間にも、異変は起こり続けていたのだ。
「ねえアキ、なんかおかしくない?」
階段を登りはじめてから何分経ったのだろうか。だいぶ登っているはずなのだが……。
「あぁ。終わりが見えないな、この階段」
「もうウチら10階分くらいは登ってない?」
「ここがカラクリ屋敷の中だとしたら、3階建て。そんなに登る高さはないはず……まさか別の建物なのかしら」
辻堂の焦ったような声が聞こえてくる。俺は辺りを見回しながら聞いた。
「でもお前、さっきの部屋は見たことあるんだろ?」
「え、ええ……」
壁に耳を当ててみたり、真上にあるLED電球を調べたりしていると、視界の隅に辻堂の顔が目に入る。だがそれは、声色に似合わないやけに落ち着いた顔だった。いや、かと思えばすぐに不安そうな顔に戻ったので、気のせいだったのかもしれない。
「ちょっとウチ、どれくらい上があるか見てくるわ」
「お前いつからそんな積極的になったんだ。てか変に動かない方が……」
「大丈夫だってば!」
にひひと笑って彼女は走り出す。すぐに麻尋の後ろ姿は闇の中へと消えていった。だが急に歯車のような音が大きく聞こえるようになる。
ガタガタガタガタ……
「あ、なんか一番上っぽいとこ来たよ!!」
そう麻尋の声が聞こえてきた瞬間だった。歯車の音はだんだん大きくなって、止まった。そして、
「きゃあっ!?」
「美頼!?」
俺が前に気を取られている隙に、後ろで何か起こっていた。声がした方を振り向くが、そこには1人分の人影しかない。
「辻堂!!美頼はどうした!?」
「ごめんなさい……ほんとに……」
辻堂の声は震えている。そんな彼女に近づくと、嫌でも状況が理解できた。
先ほどまであったはずの場所に、辻堂の足元から後ろに、階段はなかった。真っ暗な深い闇があるだけだった。つまり美頼は……
「落ち……たのか……?」
暗闇からは涼しい風がゆっくりと吹いていた。
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