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第15話:奇跡の生還、親子の絆に邪魔はいらない
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あれから半年──かつてショッピングモールだったこの施設も、今ではまるで要塞のように様変わりしていた。
良子の指導の下、建物の守りは盤石となり、住民たちはかつてないほど穏やかに暮らしている。
「襲撃だ!」
門番の男の声が響く。秩序の崩れた世界では、物資を狙う略奪者やゾンビの群れが後を絶たない。しかし、この避難所だけはほころびなく保たれていた。
「満里奈、行ってきまーす!」
その叫び声と共に入口の高いバリケードを、6歳の少女が軽々と飛び越えた。それがかつて何もできずに怯えていた満里奈だと、誰が想像できるだろうか。
風を切る音とともに、満里奈はふわりと着地する。小さな足元に砂埃が舞い、得体の知れない少女の出現に、襲撃に来た男たちは思わず後ずさった。
「おじさんたち、悪いことしちゃいけないよー」
そう呟くやいなや、満里奈は一瞬で男たちとの間合いを詰める。蹴りが一閃、みぞおちにめり込み、男の一人が嗚咽とともに地面に崩れた。
まだ良子には到底及ばない。けれどその動きの正確さと速さは、たしかに彼女の教えを体に刻み込んできた証だった。
満里奈がここまで成長できたのは、疑うことなく教えを受け入れ、自分もあの人のようになりたいと強く願ったからだ。
武器を持つ屈強な男たちを前にしても、満里奈は一歩も怯まない。
子供だと高をくくっていた男たちは、次の瞬間には視界の中からその姿を見失い、気がつけば膝を折り、地面に這いつくばっていた。
小さな体から繰り出される動きは、迷いがなく、速く、正確だった。
満里奈の瞳には恐怖ではなく、守るべきもののために戦うという決意だけが宿っていた。
「な、何だ……このガキ、バケモンじゃねぇか!」
子供とは思えないその身のこなしに、襲撃者たちは息を呑んだ。
いくら振り回しても手にしたバットは空を切り、狙いを定めたボウガンの矢さえ、ほんの数センチ先で空振りする。
「くそっ、捕まえろ!」
男の一人が突進してくるが、満里奈はその動きを一瞬で見切った。すっと横に体を滑らせ、その腕を掴むと、柔らかな体の反動を利用して投げ飛ばす。
ゴッという鈍い音とともに男の背中が床に叩きつけられ、空気を失った肺から嗚咽が漏れた。
それを目にした男たちにとって、もはや満里奈の存在は脅威でしかなかった。手にした武器は役に立つことも無く、たった一人の子供に一人、また一人と倒されていく。
やがて誰かが悲鳴のような声を上げたのを皮切りに、襲撃に来た男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。
その場は一瞬にして修羅場と化し、ただ小さな少女だけが、静かにその中心に立っていた。
足元には呻き声を上げる男たち、空気には鉄のような血の匂いが漂う。
「殺しはしない。だから安心しな」
最後の一人を地面に転がしたあと、満里奈は淡々と告げる。目には憎悪ではなく、冷たい決意だけが宿っていた。
その背中を見守っていたバリケードの上の男たちが、一斉に飛び出す。そしてロープを手に、倒れた襲撃者を次々に縛り上げていく。
「満里奈さん、ご苦労様です。いつもの所に連中を隔離します」
彼らの声には畏怖と敬意が入り混じっていた。この避難所にとって、満里奈はすでになくてはならない存在になっていた。
「いつもより五分遅かった……東側にも見張りを立てるか」
満里奈が見張りのリーダーに冷静に指示を出す姿に、誰もが一瞬言葉を失う。六歳の少女が状況を把握し、戦闘だけでなく組織の動きまで掌握していることに、居合わせた大人たちは驚愕していた。
良子に教わった医術や理論も、成人の枠をとうに超えつつある。その知識は単なる暗記ではなく、自らの判断で応用できる段階にまで到達していた。
良子は満里奈に知識を教える時、単なる“暗記”ではなく“脳そのものの活性化”することに重点を置いていた。
細腕の良子が常人離れした力を発揮できるのも、彼女の星では当たり前の「脳と肉体の完全な連動」を行っているからだ。
たとえばパンチひとつを放つとき。人間なら大きな筋肉を意識して使うだけだが、良子の星の住民たちは一打一打に使う筋肉の細部まで一点集中でコントロールする。
それはピアノの演奏者が一音一音を操るように、あるいは外科医が顕微鏡越しに細胞を縫うように精緻なものだった。
もちろん脳の造りの違いは大きい。だが、脳の動きに意識を向ける訓練さえできれば、人間でもその片鱗に触れられる。
良子の持つ“万能の学習能力”も、そんな脳の働きができるからこそ成せる業だ。
この半年の間に満里奈は、その訓練を欠かさなかった。夜明け前の静かな時間に呼吸と動きを一致させ、脳内に浮かぶ神経の地図を描くように体を操る。
その成果は、走りながら計算し、敵の動きを先読みし、医療の場では数秒で最適な処置を判断するという形で表れた。
そうして満里奈は、瞬く間に良子のような人間離れした存在へと近づいていった。
戦闘を終えてバリケード内に戻った満里奈は、息を整える間もなくきょろきょろと辺りを見回した。いつもなら真っ先に現れて頭を撫でてくれるはずの良子の姿が、どこにも見えない。
「前島のおっちゃん、お姉ちゃんは?」
代わりに出迎えたのは、避難所のリーダー前島だった。彼はわずかに表情を曇らせながら答える。
「ラボで研究を続けてる。手が離せないそうだ」
満里奈の胸に、ほんの小さな不安が広がった。いつもは研究そっちのけで、成長の度合いを見に来てくれるはずなのに、今日はどうしたのだろう。
廊下を進む足音が、やけに響く。胸の奥で何かがざわつくのを抑えきれず、ラボへ向かう満里奈の足はいつの間にか駆け足になっていた。
「お姉ちゃん!」
扉を押し開けた瞬間、金属と薬品が混じった匂いが鼻を刺した。機械の低い唸り音の向こうで、何かが小さく嗚咽する声が聞こえる。
そして視界に飛び込んできた光景に、満里奈は目を疑った。
「……満里奈」
そこにいたのは、ゾンビになったはずの母親だった。ふらつく身体を良子に支えられ、涙を流しながら温かい目で娘を見つめている。
ゾンビだった頃の濁った瞳はもうない。そこにあるのは、懐かしい母のまなざしだった。
あの頃よりずっと痩せこけてしまってはいたが、それでも──あの優しい瞳だけは、記憶の中のままだ。
「お……お母さん……?」
途方に暮れたように呟く満里奈の元へ、母は震える脚でゆっくりと一歩を踏み出した。その距離が一歩、また一歩と縮まっていく。
満里奈の視界は涙で滲み、もう母の顔がはっきり見えない。
そして、母の腕が自分を包んだ瞬間──
「お母さん!」
満里奈は叫び、抑え込んでいたものが一気に決壊したように、大声で泣き出した。
「私……がんばったんだよ……お母さんを助けるために、ずっと、ずっとがんばったんだ……」
母の胸元に顔を埋めながら、あの頃のように嗚咽混じりの声で訴える。その頭に、母はか細い手をそっと添え、何度も何度も優しく撫でた。
良子は二人を静かに見つめ、胸の奥でひそかに息をついた。
──ワクチンは、三日前には完成していた。だが、確証のないまま満里奈の母に使うなど、あまりにも危険すぎる。
良子の脳裏に、これまでの治験の光景が次々とよぎる。
研究の結果、ゾンビには二種類いることがわかっていた。──完全に絶命し魂を失ったものと、ウイルスに操られているだけのもの。
後者ならばまだ「元に戻せる」可能性がある。
その可能性を確かめるために、良子は絶命したゾンビに対して幾度も治験を繰り返し、手応えを探ってきた。
満里奈の母には致命的な外傷も無く、生きてる事はほぼ間違いなかった。脳波の動きを何度も確認し、その実証も取れていた。
後はウイルスの封じ込めに成功したワクチンを、満里奈の母の血管へ静かに注入するだけ。
しかし、未知のウイルスを封じ込める為のワクチンだ。どんな副作用があるかはわからない。
それは一度限りの、後戻りのできない賭けだった。
投与から間もなく、母親の体は激しく痙攣し、体温が上下を繰り返した。
呼吸が途切れそうになるたび、良子は酸素マスクを当て、人工呼吸器で支え続ける。
──三日間、眠ることなくその経過を見守り続けた。
そして三日目の朝、かすかな吐息とともに、母親の目に光が宿った。濁っていた瞳に色が戻り、薄れていた頬に微かな赤みが差していく。
良子はその変化を半信半疑で見つめながら、慎重に観察を続け検査を重ねた。
「……満里奈……は……?」
母親の口からこぼれたその言葉が、何よりの証明だった。良子は胸の奥でひそかに拳を握り、ようやく息をついた。
そして今──
良子は抱き合う二人を見つめながら、邪魔になってはいけないと、この場を立ち去ろうとする。
静かにラボの扉に手を掛けると、満里奈がそっと呟いた。
「お姉ちゃん、ワクチン完成したんだね。ありがとう」
満里奈の言葉に、良子はゆっくりとうなずき、静かに笑顔を返した。
その笑顔には、研究者としての誇りだけでなく、ひとりの保護者としての温もりも滲んでいた。
「……ああ、お前もよく頑張った」
良子はそう囁くと、再び二人に視線を戻し、そっとラボの扉を閉めた。
その瞬間、張り詰めていた空気がふっと緩み、満里奈と母親の小さなすすり泣きが、静かな部屋にやわらかく響いていた。
~To be continued~
良子の指導の下、建物の守りは盤石となり、住民たちはかつてないほど穏やかに暮らしている。
「襲撃だ!」
門番の男の声が響く。秩序の崩れた世界では、物資を狙う略奪者やゾンビの群れが後を絶たない。しかし、この避難所だけはほころびなく保たれていた。
「満里奈、行ってきまーす!」
その叫び声と共に入口の高いバリケードを、6歳の少女が軽々と飛び越えた。それがかつて何もできずに怯えていた満里奈だと、誰が想像できるだろうか。
風を切る音とともに、満里奈はふわりと着地する。小さな足元に砂埃が舞い、得体の知れない少女の出現に、襲撃に来た男たちは思わず後ずさった。
「おじさんたち、悪いことしちゃいけないよー」
そう呟くやいなや、満里奈は一瞬で男たちとの間合いを詰める。蹴りが一閃、みぞおちにめり込み、男の一人が嗚咽とともに地面に崩れた。
まだ良子には到底及ばない。けれどその動きの正確さと速さは、たしかに彼女の教えを体に刻み込んできた証だった。
満里奈がここまで成長できたのは、疑うことなく教えを受け入れ、自分もあの人のようになりたいと強く願ったからだ。
武器を持つ屈強な男たちを前にしても、満里奈は一歩も怯まない。
子供だと高をくくっていた男たちは、次の瞬間には視界の中からその姿を見失い、気がつけば膝を折り、地面に這いつくばっていた。
小さな体から繰り出される動きは、迷いがなく、速く、正確だった。
満里奈の瞳には恐怖ではなく、守るべきもののために戦うという決意だけが宿っていた。
「な、何だ……このガキ、バケモンじゃねぇか!」
子供とは思えないその身のこなしに、襲撃者たちは息を呑んだ。
いくら振り回しても手にしたバットは空を切り、狙いを定めたボウガンの矢さえ、ほんの数センチ先で空振りする。
「くそっ、捕まえろ!」
男の一人が突進してくるが、満里奈はその動きを一瞬で見切った。すっと横に体を滑らせ、その腕を掴むと、柔らかな体の反動を利用して投げ飛ばす。
ゴッという鈍い音とともに男の背中が床に叩きつけられ、空気を失った肺から嗚咽が漏れた。
それを目にした男たちにとって、もはや満里奈の存在は脅威でしかなかった。手にした武器は役に立つことも無く、たった一人の子供に一人、また一人と倒されていく。
やがて誰かが悲鳴のような声を上げたのを皮切りに、襲撃に来た男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。
その場は一瞬にして修羅場と化し、ただ小さな少女だけが、静かにその中心に立っていた。
足元には呻き声を上げる男たち、空気には鉄のような血の匂いが漂う。
「殺しはしない。だから安心しな」
最後の一人を地面に転がしたあと、満里奈は淡々と告げる。目には憎悪ではなく、冷たい決意だけが宿っていた。
その背中を見守っていたバリケードの上の男たちが、一斉に飛び出す。そしてロープを手に、倒れた襲撃者を次々に縛り上げていく。
「満里奈さん、ご苦労様です。いつもの所に連中を隔離します」
彼らの声には畏怖と敬意が入り混じっていた。この避難所にとって、満里奈はすでになくてはならない存在になっていた。
「いつもより五分遅かった……東側にも見張りを立てるか」
満里奈が見張りのリーダーに冷静に指示を出す姿に、誰もが一瞬言葉を失う。六歳の少女が状況を把握し、戦闘だけでなく組織の動きまで掌握していることに、居合わせた大人たちは驚愕していた。
良子に教わった医術や理論も、成人の枠をとうに超えつつある。その知識は単なる暗記ではなく、自らの判断で応用できる段階にまで到達していた。
良子は満里奈に知識を教える時、単なる“暗記”ではなく“脳そのものの活性化”することに重点を置いていた。
細腕の良子が常人離れした力を発揮できるのも、彼女の星では当たり前の「脳と肉体の完全な連動」を行っているからだ。
たとえばパンチひとつを放つとき。人間なら大きな筋肉を意識して使うだけだが、良子の星の住民たちは一打一打に使う筋肉の細部まで一点集中でコントロールする。
それはピアノの演奏者が一音一音を操るように、あるいは外科医が顕微鏡越しに細胞を縫うように精緻なものだった。
もちろん脳の造りの違いは大きい。だが、脳の動きに意識を向ける訓練さえできれば、人間でもその片鱗に触れられる。
良子の持つ“万能の学習能力”も、そんな脳の働きができるからこそ成せる業だ。
この半年の間に満里奈は、その訓練を欠かさなかった。夜明け前の静かな時間に呼吸と動きを一致させ、脳内に浮かぶ神経の地図を描くように体を操る。
その成果は、走りながら計算し、敵の動きを先読みし、医療の場では数秒で最適な処置を判断するという形で表れた。
そうして満里奈は、瞬く間に良子のような人間離れした存在へと近づいていった。
戦闘を終えてバリケード内に戻った満里奈は、息を整える間もなくきょろきょろと辺りを見回した。いつもなら真っ先に現れて頭を撫でてくれるはずの良子の姿が、どこにも見えない。
「前島のおっちゃん、お姉ちゃんは?」
代わりに出迎えたのは、避難所のリーダー前島だった。彼はわずかに表情を曇らせながら答える。
「ラボで研究を続けてる。手が離せないそうだ」
満里奈の胸に、ほんの小さな不安が広がった。いつもは研究そっちのけで、成長の度合いを見に来てくれるはずなのに、今日はどうしたのだろう。
廊下を進む足音が、やけに響く。胸の奥で何かがざわつくのを抑えきれず、ラボへ向かう満里奈の足はいつの間にか駆け足になっていた。
「お姉ちゃん!」
扉を押し開けた瞬間、金属と薬品が混じった匂いが鼻を刺した。機械の低い唸り音の向こうで、何かが小さく嗚咽する声が聞こえる。
そして視界に飛び込んできた光景に、満里奈は目を疑った。
「……満里奈」
そこにいたのは、ゾンビになったはずの母親だった。ふらつく身体を良子に支えられ、涙を流しながら温かい目で娘を見つめている。
ゾンビだった頃の濁った瞳はもうない。そこにあるのは、懐かしい母のまなざしだった。
あの頃よりずっと痩せこけてしまってはいたが、それでも──あの優しい瞳だけは、記憶の中のままだ。
「お……お母さん……?」
途方に暮れたように呟く満里奈の元へ、母は震える脚でゆっくりと一歩を踏み出した。その距離が一歩、また一歩と縮まっていく。
満里奈の視界は涙で滲み、もう母の顔がはっきり見えない。
そして、母の腕が自分を包んだ瞬間──
「お母さん!」
満里奈は叫び、抑え込んでいたものが一気に決壊したように、大声で泣き出した。
「私……がんばったんだよ……お母さんを助けるために、ずっと、ずっとがんばったんだ……」
母の胸元に顔を埋めながら、あの頃のように嗚咽混じりの声で訴える。その頭に、母はか細い手をそっと添え、何度も何度も優しく撫でた。
良子は二人を静かに見つめ、胸の奥でひそかに息をついた。
──ワクチンは、三日前には完成していた。だが、確証のないまま満里奈の母に使うなど、あまりにも危険すぎる。
良子の脳裏に、これまでの治験の光景が次々とよぎる。
研究の結果、ゾンビには二種類いることがわかっていた。──完全に絶命し魂を失ったものと、ウイルスに操られているだけのもの。
後者ならばまだ「元に戻せる」可能性がある。
その可能性を確かめるために、良子は絶命したゾンビに対して幾度も治験を繰り返し、手応えを探ってきた。
満里奈の母には致命的な外傷も無く、生きてる事はほぼ間違いなかった。脳波の動きを何度も確認し、その実証も取れていた。
後はウイルスの封じ込めに成功したワクチンを、満里奈の母の血管へ静かに注入するだけ。
しかし、未知のウイルスを封じ込める為のワクチンだ。どんな副作用があるかはわからない。
それは一度限りの、後戻りのできない賭けだった。
投与から間もなく、母親の体は激しく痙攣し、体温が上下を繰り返した。
呼吸が途切れそうになるたび、良子は酸素マスクを当て、人工呼吸器で支え続ける。
──三日間、眠ることなくその経過を見守り続けた。
そして三日目の朝、かすかな吐息とともに、母親の目に光が宿った。濁っていた瞳に色が戻り、薄れていた頬に微かな赤みが差していく。
良子はその変化を半信半疑で見つめながら、慎重に観察を続け検査を重ねた。
「……満里奈……は……?」
母親の口からこぼれたその言葉が、何よりの証明だった。良子は胸の奥でひそかに拳を握り、ようやく息をついた。
そして今──
良子は抱き合う二人を見つめながら、邪魔になってはいけないと、この場を立ち去ろうとする。
静かにラボの扉に手を掛けると、満里奈がそっと呟いた。
「お姉ちゃん、ワクチン完成したんだね。ありがとう」
満里奈の言葉に、良子はゆっくりとうなずき、静かに笑顔を返した。
その笑顔には、研究者としての誇りだけでなく、ひとりの保護者としての温もりも滲んでいた。
「……ああ、お前もよく頑張った」
良子はそう囁くと、再び二人に視線を戻し、そっとラボの扉を閉めた。
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