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シルバーショップの怪(もののけ)
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ヤング洋品店で紹介された「シルバーショップ・カオス」は仙台市の南エリアの太白区八木山にあった。少し遠いので、俺は久々にべスパで出かける。
八木山は、仙台市民の憩いの場、八木山動物園や、八木山ベニーランドというレトロな遊園地があり週末には親子連れでにぎわう場所だ。今日は平日なので比較的道路はすいている。
青葉山方面から八木山に入る。伊達政宗の像に向かう観光バスの後ろについて走った。急な坂道に、ベスパがうなり音を上げる。ベニーランドの横を抜けようやく八木山のてっぺんに着いた。この坂を下りた先に目的のシルバーショップがある。
左右を確認しながらバイクを走らせる。一瞬、視界にあってはならないものが映ったような気がした。八木山の住宅は瀟洒なつくりの建物が多い、その中に一軒、黄色と紫のストライプに塗られた建物があったのだ。入口の脇には「シルバージュエリー制作、販売・カオス」の看板が出ている。
なんだか嫌な予感がする。
俺は玄関脇の駐車スペースにベスパを駐車した。
玄関のベルの押しボタンがドクロになっている。ベルを押すとスピーカーから直ぐに反応があった。
「はーい。どなたかしら。うちは一見さまお断りよ。誰の紹介なの?」
声は野太い低音。イヤな予感はマックスに達した。
「ヤング洋品店のお姉さんから紹介してもらいました。本田と言います。」
直ぐにドアが開き、中から身長190㎝程の大柄で露出の多い黒いドレスの女性が現れた。
俺は女性に襟首をつかまれ家の中へ引きずりこまれる。通されたリビングも壁紙が黒。紫のカーテンの見事なゴシック調だった。
怪しいポーズをとった男性とバラの花の彫刻がいくつか置かれている。
大柄な女性は、黒字に赤いバラの描かれたティーポットとカップを持って現れる。
「ちょっと、坊や。ヤング洋品店にお姉さんはいないでしょ。あそこには妖怪ババアが一匹いるだけよ。」
上から下まで嘗め回すように見られ、俺は蛇に睨まれたカエルのように硬直する。
「でも、あのババア、アタシの好みのツボは抑えてるのよね。」
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、つばを飲み込む。それに合わせて彼女の喉仏が上下した。
「それで、今日のご用件は?」
そうだ。怯んでる場合じゃない。
「あの、ちょっとシルバーで作ってほしいもんがあって。」
俺は手描きのデザイン画を彼女に渡す。
「あら?これって、、、。」
「そうなんです、アクセサリーじゃないんです。」
「別にアクセサリーじゃなくってもかまわないのよ。ただ最近、銀の相場があがちゃってこのサイズだと結構高くつくわよ、」
「高いって、どのくらいですか?」
「7~10万くらいかしらね。」
「それなら大丈夫です。ただ持ち手の部分に革を巻いてほしいんですけど。」
「あら、それなら問題ないわ。私、趣味でレザークラフトもやるから。ほら、そこにかかってるバラ鞭も私のお手製よ。」
俺は叫び出したい気持ちをどうにか抑える。
「あ、じゃあ。お願いします。」
「それで納期はいつ?」
「12月24日までにお願いできますか?」
「ええええ。あと10日じゃない。ムリよ、ムリムリ。時期が悪いわよ。もうすぐクリスマスじゃない。注文が立て込んでるのよねぇ。」
「そうですか。」
俺はがっくりと肩を落とす。
「誰か大切な人へのプレゼントなのね。にしてはちょっと変わったものよね?これって実用品なの?」
「ああ、はい。一応は。」
姉さんは考え出した。
「分かった。12月24までに間に合わせるわ。」
「本当ですか?」
俺は、身を乗り出す。
その乗り出した俺の顔のすぐ前に、彼女の顔が近づく。
近い。
彼女の息が唇にかかる。
「そのかわり、私のお願いも聞いてくれるかしら、、、。」
「おねがいって、、。」
その1時間後、俺はぐったりとジュエリーショップ・カオスを後にした。
目の前の世界が真っ白な靄がかって見える。
「坊やのお尻、可愛かったわ。それじゃ10日後取りにいらっしゃい。」
俺は嫌な記憶を振り払うようにベスパのアクセルをふかした。
八木山は、仙台市民の憩いの場、八木山動物園や、八木山ベニーランドというレトロな遊園地があり週末には親子連れでにぎわう場所だ。今日は平日なので比較的道路はすいている。
青葉山方面から八木山に入る。伊達政宗の像に向かう観光バスの後ろについて走った。急な坂道に、ベスパがうなり音を上げる。ベニーランドの横を抜けようやく八木山のてっぺんに着いた。この坂を下りた先に目的のシルバーショップがある。
左右を確認しながらバイクを走らせる。一瞬、視界にあってはならないものが映ったような気がした。八木山の住宅は瀟洒なつくりの建物が多い、その中に一軒、黄色と紫のストライプに塗られた建物があったのだ。入口の脇には「シルバージュエリー制作、販売・カオス」の看板が出ている。
なんだか嫌な予感がする。
俺は玄関脇の駐車スペースにベスパを駐車した。
玄関のベルの押しボタンがドクロになっている。ベルを押すとスピーカーから直ぐに反応があった。
「はーい。どなたかしら。うちは一見さまお断りよ。誰の紹介なの?」
声は野太い低音。イヤな予感はマックスに達した。
「ヤング洋品店のお姉さんから紹介してもらいました。本田と言います。」
直ぐにドアが開き、中から身長190㎝程の大柄で露出の多い黒いドレスの女性が現れた。
俺は女性に襟首をつかまれ家の中へ引きずりこまれる。通されたリビングも壁紙が黒。紫のカーテンの見事なゴシック調だった。
怪しいポーズをとった男性とバラの花の彫刻がいくつか置かれている。
大柄な女性は、黒字に赤いバラの描かれたティーポットとカップを持って現れる。
「ちょっと、坊や。ヤング洋品店にお姉さんはいないでしょ。あそこには妖怪ババアが一匹いるだけよ。」
上から下まで嘗め回すように見られ、俺は蛇に睨まれたカエルのように硬直する。
「でも、あのババア、アタシの好みのツボは抑えてるのよね。」
彼女は妖艶な笑みを浮かべ、つばを飲み込む。それに合わせて彼女の喉仏が上下した。
「それで、今日のご用件は?」
そうだ。怯んでる場合じゃない。
「あの、ちょっとシルバーで作ってほしいもんがあって。」
俺は手描きのデザイン画を彼女に渡す。
「あら?これって、、、。」
「そうなんです、アクセサリーじゃないんです。」
「別にアクセサリーじゃなくってもかまわないのよ。ただ最近、銀の相場があがちゃってこのサイズだと結構高くつくわよ、」
「高いって、どのくらいですか?」
「7~10万くらいかしらね。」
「それなら大丈夫です。ただ持ち手の部分に革を巻いてほしいんですけど。」
「あら、それなら問題ないわ。私、趣味でレザークラフトもやるから。ほら、そこにかかってるバラ鞭も私のお手製よ。」
俺は叫び出したい気持ちをどうにか抑える。
「あ、じゃあ。お願いします。」
「それで納期はいつ?」
「12月24日までにお願いできますか?」
「ええええ。あと10日じゃない。ムリよ、ムリムリ。時期が悪いわよ。もうすぐクリスマスじゃない。注文が立て込んでるのよねぇ。」
「そうですか。」
俺はがっくりと肩を落とす。
「誰か大切な人へのプレゼントなのね。にしてはちょっと変わったものよね?これって実用品なの?」
「ああ、はい。一応は。」
姉さんは考え出した。
「分かった。12月24までに間に合わせるわ。」
「本当ですか?」
俺は、身を乗り出す。
その乗り出した俺の顔のすぐ前に、彼女の顔が近づく。
近い。
彼女の息が唇にかかる。
「そのかわり、私のお願いも聞いてくれるかしら、、、。」
「おねがいって、、。」
その1時間後、俺はぐったりとジュエリーショップ・カオスを後にした。
目の前の世界が真っ白な靄がかって見える。
「坊やのお尻、可愛かったわ。それじゃ10日後取りにいらっしゃい。」
俺は嫌な記憶を振り払うようにベスパのアクセルをふかした。
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