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お歳暮大作戦 ②
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俺は大量になったお歳暮を減らすべく、その足でヤング洋品店に向かった。
「こんにちわ~。」
相変わらず、店内は雪崩でも起きそうなほどの衣類で溢れかえっている。
「誰かと思ったら、お兄さんかい。」
衣類の山の中から、相変わらず極彩色の派手な洋服を着たお姉さんが現れる。
おねぇさんは俺の姿を上から下までしげしげと眺め、
「結構、こなれてきたじゃないか。七五三の子どもみたいに洋服に着られてるって感じだったけど、だいぶ様になってきた。」
と満足そうにうなずいた。
「今日はどうしたね?何か洋服で必要なものでもあるのかい?」
「あ、今日は年末のご挨拶に。」
そう言って、紅屋の翁饅頭箱入りを差し出す。
「おやおや。驚いたね、お歳暮かい?こんな風習まだ残ってたんだね。何でもかんでも合理的がいい世の中になっちまって、中元だのお歳暮なんかすっかり廃れちまったからね。ありがたく頂くよ。」
「来年もよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくね。」
「それと、もう一つ。誰かシルバーアクセサリーとか手作りで制作している腕のいい職人さんをご存じないですか?」
「シルバーのアクセサリーねぇ。一人いるにはいるけど、、。あいつはねぇ。腕はものすごく良いんだよ。でも、ちょっと素行に問題ありでねぇ。まぁ、そいつの名刺をあげるから行くだけ行ってみたらいいさ。」
「ありがとうございます。じゃ、また来ます。」
「ああ、いつでもおいで。」
俺は、貰った名刺を財布の中にしまった。
その後、バイク屋、スマイル眷属紹介所と精力的にお歳暮を配り歩いく。
ケンタロウは福引でもらったの翁飴も目ざとく見つける。一度に食べてしまわないようにカヲルさん預かりにして翁飴も全部スマ眷に置いてきた。だいぶ荷物が軽くなった。俺は足取り軽く刑部家へ向かう。
明るいうちに刑部家を訪ねるのは初めてだった。
「おやこんな時間に珍しいですね、一宇様。」
「今日は、高梨さんに用があったんで。」
「私に?それは嬉しいですね。ちょうど今、高梨特製タルトタタンが焼けたところですから、お茶にしましょう。」
「高梨さん、今年は食事やお弁当、とっても美味しかったです。これ、気持ちだけですが、お歳暮です。」
「おやまぁ、お歳暮なんて20年前に貰ったのが最後ですよ。一宇様は古い風習をご存じなんですね。」
「うちの爺さん、亡くなるまでお歳暮やってたんで、知ってることは知ってました。でも、俺自身がお歳暮を贈るのは初めてです。今年は、なんか人生が一変したっていうか、沢山の人のお世話になる機会が増えたんで。」
高梨さんは、おろし金の包みを開けて顔をほころばせた。
「こんな高価なものを、私に。ありがとうございます。一宇様。大切に使わせていただきますよ。」
タルトタタンは、シナモンが効いて濃い目の紅茶によくあった。
「おや?それは。アヤメ様へのお歳暮ですか?」
大江戸ちょんまげランドのパンフレットが紙袋から飛び出している。
「アヤメに?これを?実は、アヤメのお歳暮だけ何も思い浮かばなくて、それで高梨さんに、相談しようかと思って、、、。」
「それはいい。大江戸ちょんまげランドならアヤメ様もお喜びになりますよ。」
俺が言い終わる前に高梨さんがそう言った。
「まだアヤメ様が幼かったころ、我が主もまだお元気で、お二人で一緒に大江戸ちょんまげランドにお出かけになれたことがありました。アヤメ様も楽しそうにされていましたよ。」
「それじゃ、ここに入場券とパレードの鑑賞券が二枚あります。高梨さんとアヤメで一緒に行ってください。」
高梨さんが頭を振る。
「それはいけません、一宇様。一宇様とアヤメ様のお二人でお出かけください。」
「アヤメ、俺と一緒に行くって言うかな?」
「一宇様は女心が分かっていらっしゃらないですねぇ。ほほほ。勇気をもってアヤメ様を誘ってごらんなさい。」
俺は不安だったが、高梨さんは自信満々だった。俺は高梨さんの助言に従うことにした。
「こんにちわ~。」
相変わらず、店内は雪崩でも起きそうなほどの衣類で溢れかえっている。
「誰かと思ったら、お兄さんかい。」
衣類の山の中から、相変わらず極彩色の派手な洋服を着たお姉さんが現れる。
おねぇさんは俺の姿を上から下までしげしげと眺め、
「結構、こなれてきたじゃないか。七五三の子どもみたいに洋服に着られてるって感じだったけど、だいぶ様になってきた。」
と満足そうにうなずいた。
「今日はどうしたね?何か洋服で必要なものでもあるのかい?」
「あ、今日は年末のご挨拶に。」
そう言って、紅屋の翁饅頭箱入りを差し出す。
「おやおや。驚いたね、お歳暮かい?こんな風習まだ残ってたんだね。何でもかんでも合理的がいい世の中になっちまって、中元だのお歳暮なんかすっかり廃れちまったからね。ありがたく頂くよ。」
「来年もよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくね。」
「それと、もう一つ。誰かシルバーアクセサリーとか手作りで制作している腕のいい職人さんをご存じないですか?」
「シルバーのアクセサリーねぇ。一人いるにはいるけど、、。あいつはねぇ。腕はものすごく良いんだよ。でも、ちょっと素行に問題ありでねぇ。まぁ、そいつの名刺をあげるから行くだけ行ってみたらいいさ。」
「ありがとうございます。じゃ、また来ます。」
「ああ、いつでもおいで。」
俺は、貰った名刺を財布の中にしまった。
その後、バイク屋、スマイル眷属紹介所と精力的にお歳暮を配り歩いく。
ケンタロウは福引でもらったの翁飴も目ざとく見つける。一度に食べてしまわないようにカヲルさん預かりにして翁飴も全部スマ眷に置いてきた。だいぶ荷物が軽くなった。俺は足取り軽く刑部家へ向かう。
明るいうちに刑部家を訪ねるのは初めてだった。
「おやこんな時間に珍しいですね、一宇様。」
「今日は、高梨さんに用があったんで。」
「私に?それは嬉しいですね。ちょうど今、高梨特製タルトタタンが焼けたところですから、お茶にしましょう。」
「高梨さん、今年は食事やお弁当、とっても美味しかったです。これ、気持ちだけですが、お歳暮です。」
「おやまぁ、お歳暮なんて20年前に貰ったのが最後ですよ。一宇様は古い風習をご存じなんですね。」
「うちの爺さん、亡くなるまでお歳暮やってたんで、知ってることは知ってました。でも、俺自身がお歳暮を贈るのは初めてです。今年は、なんか人生が一変したっていうか、沢山の人のお世話になる機会が増えたんで。」
高梨さんは、おろし金の包みを開けて顔をほころばせた。
「こんな高価なものを、私に。ありがとうございます。一宇様。大切に使わせていただきますよ。」
タルトタタンは、シナモンが効いて濃い目の紅茶によくあった。
「おや?それは。アヤメ様へのお歳暮ですか?」
大江戸ちょんまげランドのパンフレットが紙袋から飛び出している。
「アヤメに?これを?実は、アヤメのお歳暮だけ何も思い浮かばなくて、それで高梨さんに、相談しようかと思って、、、。」
「それはいい。大江戸ちょんまげランドならアヤメ様もお喜びになりますよ。」
俺が言い終わる前に高梨さんがそう言った。
「まだアヤメ様が幼かったころ、我が主もまだお元気で、お二人で一緒に大江戸ちょんまげランドにお出かけになれたことがありました。アヤメ様も楽しそうにされていましたよ。」
「それじゃ、ここに入場券とパレードの鑑賞券が二枚あります。高梨さんとアヤメで一緒に行ってください。」
高梨さんが頭を振る。
「それはいけません、一宇様。一宇様とアヤメ様のお二人でお出かけください。」
「アヤメ、俺と一緒に行くって言うかな?」
「一宇様は女心が分かっていらっしゃらないですねぇ。ほほほ。勇気をもってアヤメ様を誘ってごらんなさい。」
俺は不安だったが、高梨さんは自信満々だった。俺は高梨さんの助言に従うことにした。
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