眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

文字の大きさ
33 / 166

ヴァンパイアポリスの事件ファイル ⑦

しおりを挟む
コスモスグループ壊滅作戦当日。

工場作戦の参加のチームは、遮光車両に乗り、早めに現場に向かった。

幹部パーティーチームの中で、ホテルのバンケットスタッフとして潜り込む予定の杉山、灰野、ノエル、稲葉も今しがた事務所を出て行った、人のいない事務所はがらんとしている。

「一宇、ちょっと手伝って!」
奥の女子更衣室からアヤメに呼ばれ俺は更衣室に入って行った。

「お、おまえ。そんな恰好で、」

アヤメは大きくスリットの入った真っ赤なドレスに着替えている最中だった、

「ねぇ、後ろのファスナーあげてくれない、手が届かない。」

「そ、そんなのだれか女性に頼めよ。」

「みんな出払ってて、一宇しかいないんだからしょうがないでしょ。」

(こいつ、見た目はティーンエージャーだけど、中身はおばちゃんだな。)

振り返ったアヤメは、真っ赤なドレスがとても似合っていた。スリットが大きく入って太ももがあらわになっているドレス。俺は目のやり場に困り、アヤメの顔を見る。

今日は化粧もしているのか、、、、。


「一宇、ネクタイが曲がってる。」
そう言って、俺のネクタイを直す。俺はヤング洋品店で買った服の中に入っていた服の中で、フォーマルに着用OKと思われるスーツを着てきた。

「日が暮れたら、私たちも出発よ。」

俺たちは日暮れを待ってタクシーで会場に向かいことになっていた。
おれは、事務所の椅子の座りながら今日の作戦計画書を履修する。この計画書は杉山さんが書いたもので、作戦の計画が緻密に描かれている。眷属隊の動きは、事態が収束するまで、待機、、、。ですよねぇ。その後、その場所にいた人間の身元確認っと。

「それ、ロボ子が作った計画書でしょ。」

「え?ロボ子って?」

「杉山さん。だって、あの子ロボットみたいじゃない?規則、規則って。規則ロボットよ。」

「いや。俺は彼女みたいなタイプは必要だと思うぞ。高木さんを覗けば、自由奔放なノエル。無鉄砲なお前。お坊ちゃんの赤目。彼女がいなかったら、高木班長が精神的にやられてしまうと思う。うん。絶対にそうだ。」


「まぁ、それはそうね。必要悪ってやつだわね」

アヤメも意外にあっさり認める。必要悪ってのは違うと思うけど。

「でも、仕事以外の事は、一切話さないから、何考えてるかわからないのよね。」

「杉山さんの眷属の灰野もあんまり自分の事話さないんだよな。やっぱり、眷属と主って似てるタイプが多いよな。まぁ、俺はアヤメみたいにあと先考えず突っ込むなんて馬鹿なことはしな、い、。」

ビシッ。アヤメの掌底が背中にもろにはいった。

「痛ったぁ。何すんだよ。」

「タクシーが来たみたいだから、行きましょ。」

俺たちはタクシーで会場に向かった。

東洋グランドホテルSENDAI、その12階のバンケットルームでパーティーは行われる。
ホテル12階の所定の位置には既に一斉逮捕に向けての人員が配置されているはずだ。

東洋グランドホテルのフロントを素通りし、奥にあるエレベーターに乗り込む。
12階のエレベーターを降りた先にパーティーの受付がある。受付に招待状を出し会場に案内された。会場内には、すでに多くの人で溢れている。

後ろから誰かがぶつかってきた。
「すみません。お客様。」そう言われて振り返ると、ホテルの制服を着たノエルが笑っていた。

「ちょっとぉ、この制服見てよ、マジダサい。赤と黒って、夢の国のねずみかよ。マジさがるわ~。」
そんなことを小声で耳打ちしてくる。

ノエルがいるなら、他のメンバーもスタンバイしてるのだろう。

俺とアヤメは、うろうろと中を見て歩いた。
中にいるのが人間なのかヴァンパイアなのかは見た目では区別がつかない。でも、数人。今回の逮捕者リストに載っている人物がちらほら見えた。

突然、会場の照明が落とされ、正面のステージにスポットライトが当てられる。

「皆様、大変お待たせをいたしました。只今より有限会社コスモスグループ。新規入会幹部の紹介、売り上げ達成者の表彰を行いたいと思います、その後、幹部会員の皆様の慰労を兼ねましたパーティーとイベントを予定しております。」
女性の声でアナウンスがはじまる。

(はじまった。)
俺の役目はすべてが終わった後に始まる。大した仕事はない。でも手にじっとりと汗が噴き出してくる。今後の混乱にむけて身体がアドレナリンを放出しているのだろう。

「コスモスグループ代表、我妻聡あがつまさとしよりご挨拶がございます。」

我妻がヘッドセットタイプのマイクをつけてステージに現れる。

「みなさん。本日はコスモスグループのパーティーに多数足をお運びいただきありがとうございます。皆さんの頑張りでコスモスグループは、創業からたった2年でここまで大きくなりました。ここにいる皆さんに感謝して、本日はささやかなパーティーを開催いたしました。」

会場から大歓声と拍手が起こる。

「ありがとう。今回、新発売された、コスモスEXですが、コスモスAの3倍の有効成分を含んでおり。今まで以上の効果が報告されています。これから、コスモスグループは更なる健康食品の開発を進め、グローバルな企業展開を行っていきます!皆さん、この私に力をお貸しください!」

我妻がステージで深々と頭を下げる。
さらに大きな歓声と拍手が巻き起こった。
我妻はさらに続ける。

「これから、目標を達成し、新しくダイヤモンド会員になった皆様を紹介させていただきますが、その前に。皆さんに、ご紹介したい新人がいます。長内アヤさん。いらっしゃいますか?来てたら、このステージに上がってください。」

(なにぃ。そんなの予定に入ってないじゃんかよ。どうするんだアヤメ、、、。)

アヤメが人をかき分けてステージに進んだ。

「計画通りにはいかなくなりました。このまま様子を見ましょう。」
いつのまにか杉山さんが俺の後ろに来ていて、小声で耳打ちする。

アヤメがステージに上がると、会場から拍手が起こる。

「この美しい女性は、最近このコスモスグループに参加されたばかりの新人にも関わらず、たった数日で売り上げ目標と会員勧誘目標を達成した期待の新人です。」
我妻の腕が、アヤメの肩にまわされる。

(なれなれしいぞ、我妻!アヤメから離れろ!)

ステージでスポットライトを浴びたアヤメはとても輝いて見え、俺はしばらく見とれていた。

「ご紹介しましょう。ヴァンパイアポリスの刑部アヤメさんです。」

「ですよね、刑部さん。」

(まずい、潜入がばれてる。)

会場が一斉にざわつく。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

沢田くんはおしゃべり

ゆづ
青春
第13回ドリーム大賞奨励賞受賞✨ありがとうございました!! 【あらすじ】 空気を読む力が高まりすぎて、他人の心の声が聞こえるようになってしまった普通の女の子、佐藤景子。 友達から地味だのモブだの心の中で言いたい放題言われているのに言い返せない悔しさの日々の中、景子の唯一の癒しは隣の席の男子、沢田空の心の声だった。 【佐藤さん、マジ天使】(心の声) 無口でほとんどしゃべらない沢田くんの心の声が、まさかの愛と笑いを巻き起こす! めちゃコミ女性向け漫画原作賞の優秀作品にノミネートされました✨ エブリスタでコメディートレンドランキング年間1位(ただし完結作品に限るッ!) エブリスタ→https://estar.jp/novels/25774848

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...