眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

文字の大きさ
32 / 166

ヴァンパイアポリスの事件ファイル ⑥

しおりを挟む

結果を出し、ヴァンパイアポリスに凱旋すると事務所内が妙にざわついていた。

俺たちが戻ったのを認めた杉山さんからお声がかかる。

「追跡チームのその後の調査で、いろいろな事が分かりました。コスモスグループの蔵王工場において多数のヴァンパイア市民が監禁されているようです。その目的は、血液の搾取や不当な使役とおもわれ、ここで一日に約1万本のコスモスEXが製造されていることを考えると、市民たちの生命は危機にさらされており早急な救出が求められている状況です。それで、刑部さんの方はいかがでしたか?」

「いかがでしたかって、うまくやったに決まってるじゃない。今週末、コスモスグループのすべての幹部が集まるパーティーに招待された。これって、幹部連中を一網打尽にするチャンスでしょ。」

「それは素晴らしいです。それなら、その日、コスモスグループの幹部のパーティーと蔵王工場へ、同時に一斉突入を行い、コスモスグループを一気に解体しましょう。」

蔵王工場の突入は高木班長、赤目類の追跡チームと、20名のヴァンパイア部隊が行い、突入の作戦については高木班長に一任された。

また、捜査官20名が本社ビルに入り、証拠書類の押収も同時に行う。

残りのヴァンパイアチームおよび眷属は、パーティー突入班ということになる。
作戦を立てるのは、もちろん軍師の杉山さん。
でも彼女にとっては、コントロールが難しいアヤメとノエルがメンバーなのは頭が痛いだろう。

招待されている、アヤメと俺は、そのままパーティーに参加。杉山、ノエル、灰野、稲葉はホテルスタッフに扮しパーティーに潜入する。このメンバーのほかに10名のヴァンパイア部隊が応援に入る。

式次第のかかれた案内状を見ると、最初に我妻代表の挨拶があり、新しいダイアモンド会員の紹介と続き、乾杯。パーティーの流れになっている。このパーティーには最近、売り出し中のアイドル歌手がゲストとして呼ばれている。

「パーティーが始まってからでは、アイドルグループなどの部外者も出入りがあり、人の動きもあることから余計な混乱を招く恐れがあります。ですから、その前のここか、ここで作戦を開始するのが適切かと思われますが、皆さんはどう思いますか。」

杉山さんは、式次第の代表挨拶と新人の紹介を指さす。

「ノエルはどっちでもいいよぉ。パーティーに参加して散々楽しんでから作戦決行でもいいんじゃない。慎吾がSENDAI35のライブも見たいって言ってるし~。」

「結城さん、稲葉さん遊びに行くんじゃないんですよ。」

「俺、何にも言ってねぇっすよ。」

稲葉がとんだとばっちりを食う。
杉山さんがくぎを刺すがノエルには馬の耳に念仏と言った感じだった。

「はーい、質問。今回の作戦では、武器の携行および使用は許可されますか?」
アヤメが尋ねる。

「許可は出ていますが、持ち歩く場合は、目だないようにお願いします。また、武器の使用によって無関係の者に怪我などをさせぬよう使用に際しては最新の注意を払ってください。」

「そんなヘマしないわよ。」

「結城さんと、刑部さんには特にお願いします。命令を遵守し、規律を守って任務にあたること!」

たぶん、この二人には無理な相談だろう。
常に冷静な杉山さんにしては珍しく感情的になっているように見えた。

この二人を監督するの大変だよなぁ。俺は心から杉山さんに同情した。

結局、我妻代表の挨拶後に作戦決行という運びになった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇  

設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡ やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡ ――――― まただ、胸が締め付けられるような・・ そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ――――― ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。 絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、 遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、 わたしにだけ意地悪で・・なのに、 気がつけば、一番近くにいたYO。 幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい           ◇ ◇ ◇ ◇ 💛画像はAI生成画像 自作

処理中です...